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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

映画【北国の帝王】

   ↑  2009/03/06 (金)  カテゴリー: 映画・DVD
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「今までに観た映画の中からベスト10を挙げよ」と問われても、その日の気分によりランクインする作品とか順位とかは結構入れ替わってくる(でも『ストリート・オブ・ファイヤー』『ジャコ萬と鉄』『スカーフェイス』『ウェディングシンガー』あたりは、必ずランクインするかな)。
だけど「ベスト1は?」と問われるのなら話は別だ。オレの答えは決まっている。それはロバート・アルドリッチの『北国の帝王』だ。
以前、知人にこの映画の内容を尋ねられて「浮浪者のおっさんと車掌のおっさんが無賃乗車の是非を巡って延々死闘を繰り広げるお話」と説明したら、「そんな話が娯楽映画として成立するわきゃないでしょ」などと全く信じて貰えなかったのだが、成立しちゃったもんは仕方がないではないか。
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出てくるのはムサい浮浪者とムサい鉄道員ばかり。女っ気なんか全く無いこの大傑作が、遂に日本で初DVD化。
いくらなんでも遅すぎやしないかとも思うけど、ここは素直に発売に踏み切ってくれたことに感謝するしかないだろう。
なにせこの国内版DVDには、小林清志と富田耕生による最高の吹き替えが収録されているのだ。
日曜の昼間に家でごろごろしていた当時中学生のオレは、この吹き替え版のテレビ放映で魂をがつんとぶん殴られたのだ。
リー・マーヴィンの面構えと小林清志の声という、これ以上はないくらい男っ臭い組み合わせに、「この青二才が!」と思い切りケツを蹴り上げられたのだ。
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この映画でキース・キャラダイン演じるシガレットは、我々の代理人。
思い上がり甚だしく、身の程知らず。小理屈ばかりが達者で薄っぺらな若造。
リー・マーヴィン演じる浮浪者の帝王、A・ナンバーワンと、アーネスト・ボーグナイン演じる冷酷非道な車掌、シャックの争いに割って入ろうとするが、元よりそれだけの器量なんぞありゃしない。
認められる機会をことごとく自分の手によって潰し、最後の最後でA・ナンバーワンに一発喰らわされお説教を頂戴する。
「自惚れるんじゃねえ、くそったれ小僧が!おめえは見込みのある小僧だと思っていたが、爪の垢ほども人の心が分からねえ奴だ!おめえはいびつな人間なんだ。口先だけ達者でも、心はカラだ!おめえは北国の帝王にはなれんのだ!」
中学生のオイラをがつんと打ちのめしたこのお説教は、あれから年を重ねた今のオレにも痛いほどよく響く。
この映画の中のA・ナンバーワンとシャックからすれば、オレなんてまだまだケツの青い若僧でしかない。
そして上を向いてこの国のA・ナンバーワンやシャックと同い年の連中を見渡してみても、目に付くのはシガレットがそのまま成長せず大人になったような奴らばかりだ。
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この映画で最高の一瞬は、ラストの列車上での死闘の末、深傷を負い丸腰になったにも関わらず、動かない体を奮い立たせ、闘志を失わないぎらついた目(あのボーグナインのギョロ目でだ)で、斧を振りかぶるA・ナンバーワンを睨みつけるシャックの姿に尽きる。
並みの悪役なら泣いて許しを請うシチュエーションで、そんな男の矜持を見せつけるシャックの姿は、その成り行きを列車の屋根にしがみついて傍観するしかないシガレットの姿と相まって、いっそう輝いている。
「殺せるものなら殺してみやがれ」そんなシャックの気迫に押されて、A・ナンバーワンは斧を握り直し、そしてシャックを列車から突き落とすに留める。あの勝負に決してシャックは負けてはいない。
そして上っ面の事象しか眺めず、A・ナンバーワンの表面的な勝利に無邪気に喜ぶ青二才シガレットに、いよいよA・ナンバーワンの怒りが爆発する。「おめえには人の心が分からねえ!」と。
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「星は俺のために輝き、大統領だって俺には一目置く。俺は行きたいところに行けるんだ。ニューヨークの大金持ちでも、俺ほど自由じゃねえ。」
中盤、A・ナンバーワンがきる、最高の啖呵にして最高のはったり。
ああ、オレもこんなはったりが似合うおっさんになりてえ。だけどA・ナンバーワンからすれば、オレがそんな夢を抱くことすら「百年早いんだ。この薄っぺらな若僧」なんだろうけどな。
何度でも何度でも見返して、何度でも何度でもケツを蹴り上げられたい。やはりオレにとって最高の映画は、この『北国の帝王』ただ一つだ。

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2009/03/06 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

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