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【Telling Lies】テリングライズ

   ↑  2022/09/22 (木)  カテゴリー: XBOX Series X|S
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『Her Story』は衝撃的なゲームだった。
実写ムービーはCGと違って撮影した内容を自在に制御したり変化をつけられない欠点を抱えている。
そうしたハンディキャップからか近年の実写ゲーム(FMV)は、ムービーを準映画的なクオリティに高める一方で、ゲーム性の部分は選択肢による分岐に留める割り切った仕様が主流になっていた。
そんな傾向の中で『Her Story』は、実写ムービーのハンディを逆手に取って、プレイヤーの側から能動的にムービーの断片を収集させそれを再構成させる、新しいインタラクティブなストーリテリングの形を提示したのであった。
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その斬新な試みをまとめ上げるために『Her Story』はかなりコンパクトな体裁に収まっていたが、作者のサム・バーロウは次作であるこの『Telling Lies』で、同じコンセプトのさらなるスケールアップに挑んできた。
1990年代を舞台とした『Her Story』は、取調室の証拠ビデオ映像という前提の粗いムービーであったが、『Telling Lies』のそれは誰もがスマホで鮮明なムービーを撮れる時代のパーソナルな動画。
ムービー内の人物が重要参考人だけに留まっていた『Her Story』に対し、本作は複数人の主要人物にまつわる動画が並立する構造となっている。
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『Telling Lies』はそうしたシチュエーションの複雑化を破綻なく成立させることに成功している。
開始早々放り出されるのは起点となる一本の動画の前。
なんの状況説明もないまま勝手に進行するムービーに戸惑いながらも、手探り手探り断片的なワードを検索。
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その結果で回収された新たな動画からの検索を重ねて、時系列もシチュエーションもバラバラなムービーの視聴を重ねるうちに話の筋書きが段々と繋がってゆく。
五里霧中から徐々に霧が晴れていくようなこの過程のゾクゾクする面白さは、しっかりと『Her Story』譲りだ。
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一方で『Her Story』のさらなる発展化としてボリュームアップしたゲームの規模が、実は大きなマイナスの要因となってしまった。
閲覧する動画は長いもので3分超えと尺が伸びてしまい、さらには人に鑑賞させることを前提としていない(という建前の)未編集の記録映像ばかり。
ハッキリ言って目を皿のようにして観るにはいささか辛い冗長なムービーなのだが、どこにキーワードや物語の鍵が転がっているのか分からず、すっ飛ばすわけにもいかないので、自然とプレイは画面を漫然と眺める間延びしたものになってしまう。
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基本的に動画を観るだけってのは『Her Story』でも顕著だった特性だが、『Her Story』の場合は一つ一つのムービーがタイトな尺だったから、この辺はさほど気にならなかった。
そしてストーリーの核に魅力が乏しく、嘘つき故に感情移入を拒み、全員を冷めた目で見てしまう登場人物の造形も相まって、話の流れがある程度見えてきてしまってからは、事実を再構築する過程にスリルもあまり感じられなくなってしまう。
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意欲作ではあるものの、サム・バーロウ式ストーリテリングのマイナスの部分(これは本来『Her Story』にも内在していたものだ)が顕になってしまった感もある『Telling Lies』。
しかし今回チャレンジした自身の作法のスケールアップ化を足がかりに、彼の次回作はさらなる進化と発展をしっかりと遂げるのであった。

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