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ホラー
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2021/05/19 (水) カテゴリー: Switch

ディズニーランドのように膨大なリソースを投入しているところは、その綻びをなかなか見せたりはしないが、テーマパークはやはり生ある人工物だ。
老朽化であったり財務事情であったり理由は様々だが、長く営業を重ねれば自然とその姿が色褪せてゆくのは避けられない。
あれだけキラキラ輝いて見えた遊園地を大人になって再訪すると、錆の浮いた施設や剥き出しになった配管、生活が垣間見えてしまう従業員など、幼い頃は見えなかった陰の部分を改めて強く認識してしまったりする。

それでも老老ながらもまだ現役な遊園地は幸せな方だ。
多摩テック、向ヶ丘遊園、小山ゆうえんち、行川アイランド、ユネスコ村、もう幾つのテーマパークの終焉を目にしてきただろうか。
閉園するパークの常として、その末期はいずれも往時の姿と比べると寂しい限りであった。

ここアトランティックアイランドパークも、そんな盛衰を極めた遊園地のひとつ。
1970年代に華々しく開業したものの、事故や事件が相次いで今では開園休業状態。
アトラクションは錆が浮き、園内の殺風景な砂利道は雑草が生い茂る。およそ子供たちの楽しさが溢れた世界とは程遠い景色だ。
プレイヤーはロレインという名の一人の女性となって、息子の姿を探すためにこの夢や希望のカケラもない場所を彷徨うこととなる。

ウォーキングシミュレータってのは、元々は揶揄を含んだ表現だったはずだけど、いつの間にやら一つのジャンルを指し示す言葉として定着してきている。
それに倣えばこの『The Park』は紛うことなきウォーキングシミュレータ。戦闘などのアクション性はおろか、パズルや謎解き的な要素も一切ない。
一人称視点で人っ子一人いないパークの中を歩き回っては、散発的にイベントに遭遇したり、メモや新聞記事などのアーカイブに触れたりする。

その過程で次第に顕になってゆくのがロレインが置かれた境遇。
朽ち果てた遊園地という容れ物の割には、『The Park』はお化け屋敷的なショッカー演出には意外と乏しい。
そして不可解な死亡事故や精神に変調をきたしたマスコットキャラ従業員による殺人事件など、パークを取り巻く様々なフォークロアもあくまで外堀のような存在。
このゲームで恐怖やいたたまれなさの根源となるのは、経済的に困窮したシングルマザーの孤立と絶望という生々しく身に迫るものだ。

その恐怖はどこか茫洋としていたパーク屋外行脚から一転、後半のお化け屋敷を経て加速する。
新たな伴侶と家族、それを得たときは誰もが開業したてのパークのように明るい未来を夢見ている。
しかし誰しもがディズニーランドのように恒久的にその希望を維持できるわけではないのだ。
総プレイタイム2時間弱。ゲーム性やリプレイ性の乏しさから人によって好き嫌いが大きく分かれるジャンルだが、その2時間ちょっとの中にあるのは、その人の人生経験によってはとてつもなく胸が詰まらずにはいられない"いたたまれなさ"のインタラクティブ体験だ。
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