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2021/04/30 (金) カテゴリー: 映画・DVD

ピカチュウやソニックを始めとして、今でこそゲームを原作とした映画は傑作良作佳作に事欠かなくなっているが、これが90年代はそりゃあヒドいものだった。
コントローラを握ったこともないようなプロデューサーが雑に版権を買い上げて、仕事と名が付けばなんでもやるような監督に放り投げて誰も得しないような映画が一本でき上がる。
『スーパーマリオブラザーズ』のような、本来なら大切に扱われてしかるようなタイトルでさえも、デニス・ホッパーのクッパ大王に着地してしまうのだから、もう何をか言わんやである。

この頃の国内外のゲーム原作映画でそれなりに良かったのは「ときめきメモリアル」だが、まぁあれは原作とは全然関係ないような普通の青春映画だし、ときメモのキーワードに釣られて劇場に足を運んだ人間にとっては、あんな眩しい等身大の青春物語は嫌がらせ以外の何ものでもなかったであろう。
とにかく映画会社のオフィスでふんぞり返っているようなプロデューサーに任せたらロクなことはない。だったら自分でどうにかしちゃおう。
そんなある意味間違っていない考えに至ったのは、スペースコンバットゲームの金字塔『Wing Commander』を創り上げたゲームクリエイター、クリス・ロバーツだ。

ロバーツは1968年の生まれ。この世代のゲーム業界人は映画をクリエイティブの原体験にしている場合が多く、また当時のゲームというジャンルの世間的評価の低さと相まって、映画に対するコンプレックスを隠せない人も結構いたりする。
クリス・ロバーツも正にそんなタイプの人であった。

ウィングコマンダーシリーズは第3作の『Wing Commander Ⅲ: Heart of the Tiger』から、マーク・ハミルをキャストに迎えて映画顔負けの実写ムービーパートを盛り込むようになったのだが、それを監修しているうちに「やっぱりオレは映画を撮るべき人間なのだ」という自我が芽生えてしまったのであろうか。
1996年の『Wing Commander IV: The Price of Freedom』でゲームとしてのシリーズに一旦区切りをつけると、彼は自らウィングコマンダーの映画化に敢然と打って出たのであった。
メガホンを握るのは? もちろんクリス・ロバーツその人である。

しかしゲームのカットシーンと2時間弱の劇映画は、やはり勝手が違った。
オリジナルの設定をベースに、タイガークロウに新たに赴任してきたルーキーパイロットが活躍するストーリーは、原作ゲームのファンには取っ付きのよいものかもしれないが、劇場に足を運ぶ観客の大半を占めるウィングコマンダーを知らない人たちにとっては明らかにパンチ不足。
山場に欠け良く言えば平坦、悪く言えばただダラダラとしている物語展開に、見どころが決定的に不足しているSFXシーンと、事前に多くの人が予想したとおり、スター・ウォーズもどきのB級SF映画に落ち着いてしまったのであった。

フレディ・プリンゼ・ジュニアやリチャード・ディレインなど、イマイチ華に乏しい主役級のキャスティングも、映画界にさまよい込んだばかりなクリス・ロバーツの限界を物語っている感がある。
原作ゲームと同様母艦となる空母タイガークロウの艦長役を「名探偵ポワロ」のデヴィッド・スーシェが務めているのが、唯一目を引く配役であろうか。

興行的にも批評的にも惨憺たる結果に終わった映画版「ウィング・コマンダー」であったが、この作品を足がかりにクリス・ロバーツは映画界に軸足を移し、制作会社を立ち上げて以後はプロデューサーとして数本の映画に関わることになる。
日本でのDVDソフト化も、まだソフトの大半がジュエルケースでリリースされていた市場勃興期に一度だけ為されたのみ。
この国内版ソフト、ゲーム版『ウィングコマンダー』のことを詳細に解説したデジタルパンフレットが収録されていることが、数少ないポイントであろうか。
(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-3009.html
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