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2021/03/07 (日) カテゴリー: PS2

90年代の次世代CD-ROM機戦争。
ソニーのプレイステーションとセガサターンは明暗を分けましたが、ゲームにあまり縁のなかった層への訴求力に格段の差があったことが、その大きな要因ではなかったでしょうか。
ビデオゲームの保守本流と言っていいセガに対して、プレステを擁するSCEの強みはゲームの世界に対して新参者であったことでした。

畑違いの業界からやって来たSMEがもたらした新風は、古手のゲーオタを時として鼻持ちならなく感じさせることもありましたが、しかしそれは確実にエンドユーザーの裾野を拡げ、そして増えたパイはプレイステーションが総取りする結果に終わりました。
やがてプレステが業界の覇者となり良くもも悪くも保守の立場となった時点で、このプレイステーション本来の先鋭的な部分は必要とされなくなったのかもしれません。
PS2の時代に入っても『リモココロン』や『くまうた』『チェキッティービー』など、そのテイストを感じさせるゲームはそれなりに登場していましたが、しかしそれはかつてのようにプレイステーションを先頭で引っ張るような存在ではなくなっていました。

この『worldimagesoundplay』は、プレステの革新性を担っていたSMEが発売したPS2用ソフト。
パッケージに大きく記された「TOMATO」の文字が、正式なソフトタイトル名を混乱させますが、これは音楽ユニットUnderwolrdのメンバーも所属するイギリスのグラフィックデザイングループの名前。
本作はこのTOMATOが制作した、インタラクティブアートとでも呼ぶべきような作品です。

マニュアルに記されているのはクレジットと必要最小限の操作解説のみ。
ソフトを起動させても、ゲームありがちな導入やチュートリアルの類は一切ありません。
「とにかく触って感じろ」と言わんばかりのコンテンツが4つ静かにあるばかりです。
画像の断片に触れるとそれに応じたポエトリーリーディングが始まる、上下と左右にそれぞれスクロールする詩をシンクロさせる、奇声をあげる人々を組み合わせてサンプリングミュージックを作り上げると、それらはいずれもゲームの狭義から大きく外れたものばかり。

ゲーム的なカタルシスとはおよそ対極なこれらのコンテンツは、どことなくハンドスピナーをだらだら弄っているときの感覚に似通っており、そういった意味ではデジタル版フィジットトイなんて言えるかもしれません。
いずれにせよコテコテのゲーム雑誌よりもStudio Voiceの誌面に載っているのが相応しいようなソフトです。

ただすでに国民機として王道を歩んでいたPS2には、こういう尖ったソフトをあえて押し出す必要性は既になく、当時のSCEとSMEの微妙な関係性も影響したのでしょうか、このゲームハードに闖入したデジタルアート作品は、ほとんど世に知られないまま埋もれてしまいました。
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(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2990.html
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