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なってみたい地位、というとVIP的な立場が思い浮かぶが、冷静に考えればあれはマトモに努めようとすればとんでもない責任がついて回るから、おいそれと就きたいものではない。
王様になりたいってのは漠然とした夢としては充分ありだが、そこからさらに突き詰めていくと、安定した大国で、側近たちによる政治体制がきちんと整っていて、国に大きな問題がなく、ついでに後宮で側室いっぱい囲えるなどと、条件を二重にも三重にも付けることになってしまう。
それ以前も問題として国王ってのは基本的に世襲のものだから、国によっては引かされることが必至な貧乏くじみたいなもんかもしれない。

中世風の設定の小国ダヴァーンの国王も、そんな貧乏くじの一つだ。
財政のやり繰りもままならない貧しい国。そして常に外敵の驚異に晒されている。
脳天気な王様ものであれば華やかであるはずの城も、どこか重苦しいムードに包まれている。
そして国王となったプレイヤーがいきなり案内されるのは、捕まった逃亡兵のもと。
本来なら「逃げ出したくなる気持ち、すっげえよく分かるわ。人間として当たり前の感情だよ!」と心を寄せたいところだが、そんな呑気なことは言ってられない。迫られるのは牢獄にぶち込むか処断するかの選択。
見せしめ(嫌な言葉だ)のために国王自ら剣で血祭りに。こうまでして引き締めていかないと、こんな国すぐに吹っ飛んじゃうし!

そんな国王も家庭人だ。愛する王妃と三人の娘がいる。
全員娘! しかも一番上は年頃も年頃。男親にとってはただでさえ、どう接してもどう距離を置いても失敗する難しい時期。ぶっちゃけ国家の運営以上の難題だ。
普通の家庭の娘ですらそうなのに、彼女たちのさらなる立場はプリンセス。ぶっちゃけると政略結婚の弾である。
そして長女はその立場を充分に認識し悲観している。そんな娘との関係、そもそもうまくいくわけがない。

誰もが憧れているはずの玉座は、実のところマイルドな電気椅子みたいなものだ。
ここに腰を下ろしている限り、いろんな立場の人間が入れ代わり立ち代わり様々な陳情を投げかけてくる。
しかしいちいちマトモに受け取っていては大変なことになる。なにせ国の財政は城の雨漏りを直す費用すら工面できなくらい逼迫しているのだ。
横に控える宰相は常に冷静で相談役としては実に頼りになる男だ。
だけど彼が考えるのはあくまでこの国のかたちのことだけ。一人の人間としての国王の支えにはまるでなってくれない。

体の良い無心を繰り返す陳情をどうにか捌いて玉座から腰を上げれば、今度は家庭の問題が待っている。
って言ったってうちはただの家じゃない。王家。
愛する娘に対して「力のある近国の庇護を受けたいから、ちょっとあのあんぽんたんのとこに嫁いでくんない?」なんて申し渡さなきゃなんない。
そりゃオレだって娘が好きな男を連れてきたらそれと一緒にさせてあげたいよ!(ただし堅い職業限定)
だけどな、パパは父親である以前に国王なんだよ!

心を閉ざす長女、逼迫する国の財政、蛮族の脅威、陰謀まみれの外交。玉座に就いている限り、問題はひっきりなしに訪れてくる。
誰もが皆「Your Grace(陛下)」と一応は敬ってはくれるが、その本心は揃って怪しいものだ。
簡素なドットビジュアルをバックに、タイトな会話とそれに対する選択で進行する貧乏小国運営ゲーム。
常に気の重い選択を強いられるゲームなのだけど、それでも惹きつけられるのは、王位と一人の人間として自分との間で板挟みになる国王の憂鬱がハンパではなく身に沁みるからだろう。
Xbox Series最適化ソフト。Xbox国内ストアで販売中だが、現在のところ日本語には未対応。
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2021/01/08 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |王様が1日の大半を過ごす玉座は、マッサージ機能付きの北欧家具みたいにセンスの良い物が望ましいのに博物館とかに展示してあるヤツは拷問具かっていうくらい座り心地悪そう。「氷と炎の歌」の玉座ときた日にゃ千本の剣が材料で触れると斬れて流血って、罰ゲームか!王様って義務ばかりでしんどすぎます。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いお願いします。
あの座りづらそうな仕様は長く席につかせないための暗喩かなんかですかね?
映画の王様がみんな変な座り方をしてるのも、あの造りでは仕方無しにああなっているのかと妙に納得させられます。
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