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2021/01/04 (月) カテゴリー: XBOX ONE

「牛が出てくるゲームは良ゲー」なんてフレーズを随分前から見かけるようになって、それがまた丑年なもんだからあちこちで再燃しているが、もちろんそうと限ったわけはなくて、中には「お前、これを遊んでからそのセリフをもう一回言ってみろ!」なんてゲームも当然あったりする。
オレは基本的に「クソゲー」「神ゲー」みたいな言葉を使うのが好きではないんだけど、この自称闘牛シミュレーター『Toro』は、「このクソゲーを作ったやつ、ただちにオレに5ドル返せ!」と、脊髄反射のセリフを吐かせた一作だ。

牛と人が対峙するスペイン伝統の闘牛も、最近ではかなり肩身の狭い存在になっていて、実際に禁止される地方も相次いでいるようだが、まあぶっちゃけあまり趣味の良い見世物ではないことだけは間違いない。
そんな伝統と倫理の間で揺れる闘牛士が、今のプレイヤーの仮りそめの姿だ。
どんな競技にも階級というものはある。闘牛士といえば刺繍で彩られた美しい衣装が思い浮かぶが、キャリアモードを歩み始めたばかりのプレイヤーはまだ質素な姿。牛と向かい合うフィールドも石垣で囲われただけの練習場みたいな場所だ。

しかし場所に関わらず対峙する相手が気の荒い牛である事実に変わりはない。
そんな危険な動物を前に布切れ一枚手にあくまで優雅に立つ闘牛士。ナイフのように鋭利な角と共に突進してくる500キロ超の巨体。
これをひらりと躱すのはタイミング良いボタン入力だ。適当な間合いでコマンド表通り左トリガー+Xボタン×2。
しかしボタンを押したにも関わらずオレの闘牛士はぴくりとも反応しない。
そこに容赦なく突っ込む牛。大変だ、血生臭い大惨事だ!

……なんてことは一切なく、牛に突っかけられた闘牛士はラグドール挙動でぐにゃりと崩れ落ちたあとは、しばらくしてまた何ごともなかったように無気力に立ち上がるのであった。
さらに突っ込む牛。ぴくりとも反応しないボタン入力。ぐにゃり。さらに突っ込む牛。ぴくりとも反応しないボタン入力。ぐにゃり。さらに突っ込む牛。ぴくりとも反応しないボタン入力。ぐにゃり。×6。
せめて闘牛士に体力ゲージみたいなものがあって、それがなくなればゲームオーバーになる仕様であったら、オレもこの不毛な繰り返しにケリをつけることができるのだが、それさえ望めないとは闘牛とはなんと無慈悲な競技なのだろうか。

なにしろ入力指示の表示はおろか、モーションや予備動作の類が一切無いのだから、牛を躱す技の入力タイミングを掴むことが一苦労どころの騒ぎではない。
こうして危険と隣り合わせの緊張感なんかカケラもない、諸行無常すら感じさせるカポーテを無駄に繰り返した後は、派手な銛を打ち込んで牛を弱らすパート、そしてクライマックスとなる牛に剣でトドメを差すテルシオ・デ・ムエルテと、一応闘牛のルーチンはなぞってはいるのだが、やることと言えばただの作業と化したQTE。

各々の動作やクライマックスでさえも、特別のアクションや演出の類はこれっぽっちも用意されておらず、一通りのイベントを終えたあとの無力感といったらハンパではない。
先のステージに進むたびに華美な衣装やより大きな会場がアンロックされるのだが、その程度の進捗では焼け石に水もいいとこである。
プレイしているうちに自分がどんどん無表情になっていくのが鏡を見ずとも手にとるように分かる、まるで動物愛護団体が闘牛の無益さを訴えるために作ったかのようなゲームだ。
幸いなことにXboxの国内ストアでは未発売だが、Playstation storeでは『TORO ‐牛との戦い‐』というやる気のない邦題でダウンロード版が販売中である。
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