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いわゆる実話怪談ものが書店の一角を賑わせる日本は、世界でもまれに見るホラーアンソロジー大国だ。
そのジャパニーズ実話怪談もルーツを辿れば「伽婢子」や「耳袋」など江戸時代の文学にまで遡れるわけだが、さらにそれらに影響を与えたものとして、百物語に代表される口述伝承の怪談アンソロジーを忘れてはならない。
参加者が持ち回りで怪異譚を披露しては蝋燭の炎を消し、百話すべて語られるとその場に物の怪が現れるという例のアレである。

百物語もその起源は遥か中世にまで及ぶらしいが、脈々と伝えられてきたその形式が、話の内容にその時代時代のトレンドはあるにせよ、百本の蝋燭を始めとする基本的なスタイルをほぼそのまま保たれてきた。
稲川淳二に「新耳袋」など現代の実話怪談は、みなこの百物語の末裔みたいものだが、それが頼みもしないのに伝統的な形式に忠実なままゲーム機にやって来た。
時は稲川怪談が定番の商品になっていた1990年代、最初に発売された『百物語 ~ほんとにあった怖い話~』はPCエンジンより。
そして次世代機で演出から何からパワーアップした続編がこの1997年発売のセガサターンソフト『古伝降霊術 百物語 ~ほんとにあった怖い話~』だ。

百物語にはハッタリというか勿体ぶった雰囲気作りが必須であるが、このソフトもその点は抜かりがない。
まずパケ裏に書かれているのは「注意 遊び半分でこのソフトをプレイしないでください」の一文。
果たして遊び半分以外にこれをプレイする動機があるのだろうか?と首をひねりたくもなるが、しかしここは忠告を素直に受け取って気を引き締めるのが正解だろう。

ソフトを起動させるといきなり出てくるのが、いかなる心霊現象が起こってもハドソンは一切責任を負わないからこれにサインしろの旨が記された警告文。
この後に続く誓約書にチェックを強いられるのだが、ぶっちゃけ最近のゲームによくある、長々スクロールさせられる誰も読まない長文の中に、とんでもない一文が紛れ込んでる使用許諾書の方が、よっぽど怖いような気もするが、まぁそれは置いといて。

百物語本編が始まるまでの
曰く、自然界の力に守ってもらうために、その場に水やら土やらを用意しろ。そして御札をソフトのケースに貼り付けて云々……。
御札!? そんな物があったかと探してみしてみたら、取扱説明書の最初のページに切り取り線の文字と共に「悪霊退散御札」の文字が。
もちろんペラペラでテカテカのコート紙に印刷されただけのシロモノである。とても霊験のかけらも望めそうもない。
こんなとってつけたような自称御札に霊障からの身の安全を託してホントに大丈夫なんだろうか?

そしてようやく始まる百物語は、分岐のないサウンドノベル形式の怪談をメインに、実写ムービーが挿入されるタイプ、稲川淳二の語り、簡易3Dアドベンチャー、文字が反転されていちいち鏡で読まなければならないパート、サターンの内蔵時計の時刻によって変化するモードなど、なにしろ百話ちょっとあるからバリエーションだけはとても豊富だ。
しかしこのソフトは「新耳袋」の登場により実話怪談のクオリティがとてつもなく跳ね上がる以前の発売。
肝心の怪談各話がベタで通俗的というか、脚色不足で素材をそのまんま出しているものがほとんどで、器に比べてとたんにトーンダウンしてしまうのだが、まぁそれも百物語的と言ってしまえばそうなのかもしれない。
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2020/12/18 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |実話系から翻訳系、奇妙な味まで百花繚乱で本当にありがたい!9年ぶりに復活した異形コレクションは素晴らしかった。竹書房の異色作家短編集も装丁、内容共に高水準だし。諸星先生の新作も怪奇色が強く読み応えありました。パンデミックの現実が一番ホラーですが、物語の力で乗りきれますように!
狭義のホラーに留まらない内容や幅広い作者のセレクションなど、異形セレクションは忘れちゃならい和製ホラーアンソロジーの最高峰ですね。
短編アンソロジーとはちょっと違いますが、怪と幽もホラーのオードブル的なムックで大好きです。
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