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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

【火吹山の魔法使い】The Warlock of Firetop Mountain

   ↑  2020/05/28 (木)  カテゴリー: Switch
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その昔、RPGを一人でどうやって遊ぶのかは、ガキだったオレにとって大きな難問だった。
家庭用ゲーム機のRPGがこれだけ氾濫している現在からすると、ワケのわからないことを言ってるように思えるかもしれないが、当時はコンピュータRPGなどブルジョワの子どもでなければ手が触れられない存在だったのだ。
『ウィザードリー』や『ザ・ブラックオニキス』の名はぼんやりと伝え聞いていたが、パーソナルコンピュータなど高嶺の花で、それらのタイトルも遠い世界のことのように響いていたオレの前に、ゲームブックと呼ばれる新機軸のブツは忽然と登場したのであった。
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今はなき社会思想社の現代教養文庫から出た「火吹山の魔法使い」という一冊。
それはソロでRPGをプレイする命題を一気に解決してくれるだけでなく、お小遣いの範囲内でどうにかなる、経済的な問題もクリアしてくれる福音の書だった。
本以外に用意するのは紙とえんぴつとサイコロ。まずキャラクターを製作したら分岐に応じてページを進め、時にはサイコロによる戦闘や各種判定でステータス値を上下させつつエンディングを目指す。
ゲームブックと呼ばれるカジュアルなこの形態は、たちまちのうちに一大ブームとなり、ファイティング・ファンタジーと名付けられた「火吹山の魔法使い」以降の一連のシリーズの他に様々な類似本が濫造された。
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中には「力道山のアメリカ遠征」なんていう、誰に向けたんだか分からないような珍作までもどさくさに紛れて登場したくらい、ゲームブックの沸騰ぶりは凄まじいものがあった。
それがわずかな間で跡形もなく終息してしまったのは粗製濫造が目に余ったのもあるが、何より家庭用ゲーム機の普及と共に『ドラゴンクエスト』などのコンピュータRPGやアドベンチャーゲームが広まったことにより、存在価値があっという間に薄れてしまったのが大きな一因だろう。
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しかし結果的にビデオゲームに討ち滅ぼされたとはいえ、その体験は決してビデオゲームに代替させられるもぼではなかった。なんだかんだ言いながらオレにとてゲームブックは、やはり読書文化のものだったからだ。
時と場所と姿勢を選ばず片手に収まった文庫本をめくって踏み出す冒険。
どこか人を突き放しているんだけど、大仰なユーモアも交えた翻訳文体。
すえた匂いのする地下道とか悪臭漂う洞窟とか、冷静に振り返ってみれば長居したくない汚いとこばっかだったシチュエーション。
そしてページの合間を彩った、これぞ西洋ファンタジーと思わせるラス・ニコルソンの密度の濃いイラストレーション。
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「火吹山の魔法使い」をあくまで原作に留めたゲーム化作品ならともかく、そんな読書体験そのものをビデオゲームのフィールドで再現しようとするのは、なかなかの難事業だ。
ニンテンドーSWITCH版『火吹山の魔法使い』は、その再現にチャレンジした意欲作。
ゲームの中心を司るのは古びた羊皮紙に綴られたテキスト文。かつて紙のページをめくった指先は送りのAボタンとスクロールの右スティックに添えられる。
そして踏み出す冒険は懐かしのゲームブック版「火吹山の魔法使い」に忠実の物語。
悪の魔法使いが険しい山の中に作り上げた迷宮に蠢くのは、汚らしいオークに汚らしいトロールに汚らしいスライムに汚らしい冒険者の成れの果て。
頼りになるのは再読の繰り返しによる冒険知識の蓄積、そしてステータスパラメータとサイコロの出目だけだ。
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ビデオゲーム版ならではのビジュアル要素はTRPGのフィギュア風自キャラとフローチャートの代わりとなる迷宮の立体フロアマップ。
そしてゲームブックと大きく違える部分は、フィギュアがマス目で区切られたエリアでぶつかり合う戦闘パート。
もっともこれは原作ゲームブックが導入したくともできなかったテーブルトークRPG風の戦闘を盛り込んだもので、原作の雰囲気を大きく逸脱することはない。
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それともう一つ盛り込まれた要素は、各々のステータスとバックグラウンドを持った規定のプレイヤーキャラたち。
初期段階では4人、ゲーム中に入手できる魂で最終的に16人の中から選択できる冒険者、それぞれによってテキスト文や冒険中の選択が変わってくるので、再プレイ(再読)時も新鮮な気分で臨める。
そしてテキストに差し挟まれるイラストは、嬉しいことに原作同様ラス・ニコルソンの手によるもの。
原作ゲームブックに対する徹底的なこだわりは、逆にゲームブックを知らない世代にどれだけリーチするのか不安になってもくるが、とにかくこれこそがオレたちの世代が最初に踏み出したRPGの冒険なのだ。


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2020/05/28 | Comment (3) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


社会思想社のカドフェルシリーズ全部復刊希望。

ゲームブックの文庫本はブックオフでも昔ほど見かけなくなりました。一時は新刊書店でも棚を埋め尽くす量だったのに。翻訳者の浅羽莢子先生に、もっと長生きして頂きたかった。ジョナサン・キャロルにタニス・リーにスーザン・クーパー。好きな作家さんばかり。もう一人の立役者、安田均先生はボードゲーム界で活躍しておられるのに。

奈良の亀母 |  2020/05/28 (木) 19:34 No.1487


再レスすみません。

カドフェルシリーズ光文社文庫で21巻出ていたんですね。現代教養文庫も旺文社文庫も福武文庫も消えてしまって。

奈良の亀母 |  2020/05/28 (木) 21:55 No.1488


旺文社、福武、現代教養、それとサンリオあたりは文庫コーナーの隅が定位置だったり、小さい本屋だと置いてないとこも多かったりして、そのマイナー感がこじらせた思春期にはなんとも惹かれるものがありましたね。
光文社版のカドフェルも、もう絶版か品切れになってそうですね。

管理人 |  2020/05/30 (土) 17:13 No.1489

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