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【Fight Night Round 4】イーストンの暗殺者

   ↑  2010/10/01 (金)  カテゴリー: XBOX 360
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絶対的な王朝を作り上げ、民から深く敬慕された王から王位を禅譲される。これは果たして幸福なことだろうか?
前王の築き上げた栄光は今もなお輝き続け、人々はなおも前王の姿を今の世に求め続ける。そんなムードの中で自らのキャリアを築き上げなければならない。そんな望まれぬ次王には、先代にひけをとらない実力はあるにせよ、前の王のような絶対的なカリスマや、人を惹きつける天性の明るさは微塵も無い。
先王とのギャップに悩みつつも、その自らの実力により、民の誰もが望まない安定した治世はつつがなく続く。
そんな長い長い安定政権の間に、常に先王との比較に晒され続けた彼の苦悩はいかばかりのことだったのだろう。
モハメド・アリが去った後のプロボクシングヘビー級に君臨し、実に7年間に渡ってタイトルを守り続け、ロッキー・マルシアノに次ぐ48連勝という記録を残しながらも、人々の記憶にはさっぱり残らなかった悲運のチャンピオン。それが”イーストンの暗殺者”ラリー・ホームズだ。
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先王のスパーリングパートナーを長く務め、”先王に土をつけた男”ケン・ノートンを下して王位に就いたホームズは、王の継承者たらんと涙ぐましいほどの努力を重ねた。
アリのファイトスタイルを装い、時には先王を真似て試合の前や後に慣れないビッグマウスを飛ばしたりもした。
しかしそのボクシングスタイルは、”アリのコピー”呼ばわりされるに留まり、言葉足らずのビッグマウスは、アリのようなウィットやユーモアに決定的に欠け、単なる悪口雑言に終わってしまった。
何よりもホームズには、その佇まいに明るさや華というものが決定的に欠如していた。全身から華やかさを振りまいていた先王アリとは、およそ対照的なほどに。
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だけど、いくら暗かろうが、華が無かろうが、ホームズはその実力に関しては、紛う事なき超一級品であった。
オポジションであるWBAの世界ヘビー級王座が、テート、ウィーバー、ドークス、コーツィー、ペイジ、タッブスといった、王と呼ぶにはイマイチな連中の間で目まぐるしく推移するのをよそに、WBC王者のホームズは、その絶対的な強さで王位を守り続けた。
もはや統一戦などやらずとも、ヘビー級の真の王はホームズであることは、誰の目にも明らかだった。
そのホームズの絶対的な王朝、それは今時の言葉で言えば、"KY"の連続でもあった。
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”白人の星”ジェリー・クーニーが挑んできたときは、まるでクーニーの戦闘力を徐々にすり潰すのようなファイトでこれを退け、白人ヘビー級王者誕生の瞬間を見届けようと集まった観客たちを、失望の淵に叩き込んだ。
マービス・フレージャーを1ラウンドで粉砕した試合では、会場を包んだ親子二代に渡る戴冠への期待をも、早々と打ち砕いてしまった。
1980年には、何を考えたのか”先王”モハメド・アリが気まぐれなカムバックを果たし、ホームズの前に立ち塞がった。
試合前のパフォーマンスだけは健在だったアリだが、ホームズは電光石火の左ジャブだけでこの先王を翻弄し、最後は戦意喪失に追い込んだ。
もちろんこの結果に誰も喜ばなかったのは言うまでもない。
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”強くて、暗くて、華が無くて、つまんない奴”。
そんな不名誉な評判と共にホームズは勝利を積み重ね続け、7年間にわたって頂点に君臨し続けた。それはとてつもない偉業だ。
その一瞬の全盛時に、途轍もない強さを発揮するボクサーは星の数ほど居る。しかしホームズのように、その強さを7年にもわたって維持し続けた男は、他にはそういやしない。
俺が世界ヘビー級史上最強の王者にラリー・ホームズの名を推す最大の理由はそれだ。
Fight Night Round 4 のパッケージを飾るのは、アリとタイソン、ヘビー級の二大巨頭。
しかし、その二人の間の時代に絶対的なチャンピオンで在り続けたホームズは、パッケージに出るどころか、デフォルトでゲームのロースターに名を連ねていない有様だ。
ホームズをゲームに登場させるには、ボクサーシェアからダウンロードしてくるか、自分の手でクリエイトしなければならない。
本作に限らず、ラリー・ホームズの登場するボクシングゲームは、あまり記憶にない(メガドラのグレイテスト・ヘビーウェイツくらいのものだろうか?)。
いくら華がないとは言え、一時代を築いた歴史に残るチャンピオンに対し、なんて仕打ちなのだろう。どこまでも不憫な王者だ。
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連続防衛記録を積み重ねてきた(その間にIBFとの統一王者になったり、WBC王座を闘わずして剥奪されるなど、色々とややこしい経緯もあったのだが)ホームズを、その王位から引き摺り下ろしたのは、一階級下からやって来た元五輪金メダリスト、マイケル・スピンクス。
しかしこの試合はかなりいびつな内容だった。グローブの先でちょこちょことホームズの体を触っては、ひたすら逃げ回るスピンクス。
ヒット&アウェイならぬ、タッチ&アウェイとでも言うべき姑息な戦法。そして不当とも思える判定。
その様は、俺にはまるで不人気な王を廃位させんが為に、臣下が画策した陰謀劇のように見えた。
当たり前のように勝ち続け、人気がないまま長きに渡って安定したホームズの王朝は、こうして呆気なく、釈然としない終わりを迎えたのだった。
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