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ゾンビ

怪しげな館に迷い込む、ショッピングモールで孤立、島に漂着、今まで様々なゾンビクライシスの現場に身を置いてきた。
それなりに経験も積み重ねてきた。だけどパンツ一丁の身体で放り出されるのは初めてだ。
何か羽織るものでもといきたいところだが、それ以前にやることは山ほどある。
喉が渇くから飲料水も確保しなけりゃなんないし、腹が減るから食料の調達も必要だ。
いや、それよりも何よりもまず火! 肉を焼く、水を煮沸、これがなくては話にならない。
そのためには道具の入手こそが喫緊の課題だ。素手で木をぶち折って、手頃な石を拾って、……文明の利器、石斧が出来上がりましたあ! ああ、なんかスゲえ既視感!!

だけどこっちはあんなコロコロコミックに攻略記事が載るような呑気な世界じゃない。
ゾンビと謎の病原菌にすべてを支配された死と絶望の大地だ。
『7 Days to Die』。余命1ヶ月の花嫁どころではない。オレに残されたわずかな猶予には、愛もささやかな幸せもない。ただひたすら生命を繋ぐだけだ。
目の前に広がっているのは荒廃の世界。とりあえず目の前にある廃車を漁ってなにがしかの素材を手に入れなければ。

近づいた廃セダンの向こうには大きな影が佇んでいた。熊さんだ。唸り声を上げてオレを睨んでる。
相手がゾンビでない以上、多少の話し合いの余地はあるんじゃないか。
そう思いながら固まるオレに熊さんは容赦なく襲い掛かってきた。
余命1ヶ月の花嫁どころではない。余命2分だったオレの主人公。まだゾンビの影すら見ちゃいないのに……。

リスポーンしたのはさっきと別の場所だった。
改めて石斧と石スコップを作り直し、それを手にふらふらと彷徨い始める。
やがて目の前に現れたのはガソリンスタンドの廃墟。頑丈そうな建物だ。やった、今日はとりあえずあそこで一夜を明かそう。
だが得てして人が生前集まるような場所は、ゾンビになっても賑わうものだ。そりゃそうだ、オレがゾンビになったら真っ先に近所のイオンモールに行くもん。
小走りに駆け寄ったオレの足音を聞きつけたのか、GSの中から陰からわらわらとゾンビが出てくる。
すいません、失礼しました! なんでもありません、お騒がせしました!

息を切らしながら全力ダッシュで山の方に逃げるオレ。
やっぱり人里はダメだ。こういう普段人が寄り付かない場所のほうがよっぽど安全かもしれない。……まあ熊は出そうだけどな。でもゾンビより熊のほうがあきらかに絶対数が少ない!
とにかくここで一夜を過ごせる安息の場所を作らなければ。
穴だ。斜面に穴をほって入り口を土ブロックで塞ぎ、そこで息を潜めよう。

石スコップを振るいガシガシと穴を拡げていく。グズグズしていると日が落ちてしまう。飯だの水だのは、また明日考えよう。
この程度の深さじゃまだ安心できない。もっと深く、もっと広い穴を。掘って掘って掘りまくって。
どどどどどどどっ。上から崩れてきた土砂に押し潰され、オレは早くも二度目の死を迎えた。
「どうせ死ぬんだったら、潔くゾンビに殺された方がいいかもしれないなあ……」
そんなことをぼんやりと考えながら……。

今度のリスポーン先の近くには、運良く周囲にゾンビの姿がない小屋があった。
もう日が暮れる。今晩はここで夜を明かそう。
ドアを木材ブロックで塞ぎ、室内に灯っていた明かりを消し、小屋の隅にうずくまってオレは息を殺した。
窓の外がどんどん暗くなる。やがて小屋の外から何かがうろつく気配がしてくる。
壁一枚隔てた向こうから、「うー、うー」と人であったものの呻き声が響いてくる。
耳をふさぎながら、オレはただひたすらデジタル時計が進むさまを、祈りながら凝視するのであった。

何万分と続くかのような生きた心地もしない時間。それにひたすら耐えていると、やがて窓からぼんやりと薄日が差し込んできた。
外を彷徨っていた絶望の気配も今はない。外に出ると地平線には登りゆく朝日。
現実でもゲームの中でも何度となく朝日の登る瞬間に立ち会ったが、これほど神々しく生の重みを実感できる太陽は他にはない。
オレはなんとか1日を生き延びたのだ(いや、なんか2回ほど死んだような気もするが……)。
涙が出そうなほどの安堵感に包まれたのも束の間、カラカラに乾いた喉とペコペコの腹。空っぽのインベントリに手のつけようのない大地を確認すると、オレは朝日の下、再び深い深い絶望感に囚われるのであった。
<国内ストア未配信>
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2017/11/28 | Comment (4) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |いつも楽しく拝見させていただいています。ひさしぶりにホラーものと思いましたが、死亡理由はホラーじゃない気も。こちらのネタで好きなのが、ゲーム版恐怖新聞なのですが、まさか恐怖新聞の配達人がゾンビ界に迷い込んでるのが、このプレイだとか、などとなんにも関係ないのに妄想したり。また面白い記事おまちしています
恐怖新聞、そういえば久しくやってないですねえ。
近年ウェットな和系心霊ゲームが、スマホゲー界隈に散逸しちゃってなかなか的が絞りづらいのもあるかもしれません。
なんか掘り出してみてみますね。
ずーっと気になってて購入はしてないのですが、まだ結構バグはあるのでしょうか?まあバグなんてどのゲームもあるので仕方ないですけど。
正直言うとかなり遊びづらいゲームです。
基本的にはマインクラフトそのまんまのボクセルドットクラフトなんですが、ハンパにリアルなビジュアルと常時薄暗い画面で、素材やブロックがものすごく判別しづらい&距離感が掴めないで、難度の高さと相まってストレスはかなり溜まりますね。
ガチなサバイバル感覚など独特の魅力も多いだけに、評価はかなり分かれるゲームだと思います。
極端なバグは当初よりは減ってるでしょうが、やはりこういったゲームですから軽微なバグはついて回りますね。
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