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ミステリ アドベンチャーゲーム
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2017/09/11 (月) カテゴリー: XBOX ONE

"親愛なるポワロ殿 さてご感想はいかがかな? 一回戦はわたしの勝ちのようだね。アンドーヴァーのあの事件、あれはなかなか鮮やかな手並みだったろう?
しかし、お楽しみはこれからだ。今度はベクスヒル=オン=ザ=シーにご注目ありたい。日付けは今月二十五日。
いやまったく、おたがいわくわくさせられるじゃないか! ではまたー ABC"
<アガサ・クリスティ-ABC殺人事件(深町眞理子訳・創元推理文庫版>

名探偵エルキュール・ポワロの下へ届いたABCを名乗る人物からの不敵な挑戦状。
そして頭文字Aの土地で頭文字Aの人物が殺害され、傍らにはAのページが開かれたABC鉄道ガイドが。
第二の予告状に続いて頭文字Bの土地で発見される頭文字Bの女性の他殺体。
被害者AとBには接点はない。これは果たしてABCの順番にABCの人間を無差別に殺してゆく快楽殺人者の犯行なのか。
やがてポワロの下にはCを警告する新たな犯人からの手紙が舞い込むのであった。

ミステリの女王アガサ・クリスティの代表作「ABC殺人事件」。評論家やファンの多くがクリスティの最高傑作に推す作品だ。
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズと並んでゲーム化されることの多いクリスティ作品だが、短編が主体のドイル=ホームズと違ってクリスティは長編がメインの作家。
新作のシナリオや原作へのアレンジを交えてオリジナリティを出すことが可能なホームスゲームと違い、一般に広く知れ渡った長編のゲーム化を義務付けられるクリスティゲームは、作り手にとってはなかなか厄介なシロモノだ。

なにせストーリーに大きく手を加えることができない。
「オリエント急行の殺人」の犯人が原作と違っていたら、みんな怒るだろう。
何よりドイルはそういうこと割りと気にしなさそうだが、クリスティはめちゃくちゃうるさそうだ。
彼女のところにポワロの美少女化ゲームなんて企画を持ち込んだら、三日三晩屋敷に留め置かれて延々お説教を食らうことだろう。

そんなわけでこの『Agatha Christie - The ABC Murders』も、過去の「ABC殺人事件」ゲーム化作品同様に、原作のダイジェスト進行に終始する内容となってしまうのだった。
海外コミック調の比較的あっさりとしたビジュアルが特徴といえば特徴だが、それに比例するかのようにゲームのメインシステムもかなり淡白なポイント&クリック様式。

探索できるポイントそのものがまず少なめで、アプローチに対する反応もあっさりしたもの。
例え事件の本筋に関係ないものであっても、それに対してポワロのいちいち底意地の悪い答えが長々と返ってくれば、こちらもクリスティ世界に身を投じている気分になれるのだが、いかんせん本作のポワロはちょっとばかり常識人で性格もそれほどひねくれていない。

要所要所で挟まれる"灰色の脳細胞の出番"も単なるメモ帳整理の域を出ず、推理ADVらしさを実感させるまでには至らず。
ニンテンドーDSでリリースされたフロム・ソフトウェアの金田一耕助シリーズは、やはりネタ割れが広く知れ渡っている原作を、力の入ったビジュアルと手の込んだ演出で、結末を知っている者をも再体験に誘っていたが、残念ながら本作はそういった方面にはまるで労力を注いでいないのであった。
<国内ストア未発売>
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