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2010/11/07 (日) カテゴリー: XBOX 360

月明かりがやけに綺麗な夜だ。だけど俺が置かれた今の状況は、そんなに美しいもんじゃない。
縛られて身動きがとれないまま、傍らで自分の墓穴を掘る音だけが響いてくるってのは、あまりぞっとしない話だ。
夢にまで見たニューベガスの煌びやかなネオンサインをこの目で拝めたのも、ほんの一瞬のうちだけだった。
悪趣味なチェックのジャケットを着た、ポマードで髪をべったりと撫でつけた男が何やら言いながら俺に銃を向けてくる。
ああ、俺はここで死ぬのか。そんな覚悟の片隅で、俺は「ニューベガスってカタカナで書いたら、なんかそこらの冴えないパチンコ屋みたいだな」と、どうでもいいことをぼんやりと考えていた。

待ちに待ったFalloutの新作は、前作3の超巨大MODというか、或いは超巨大追加シナリオと言うべきか、少なくとも見た目は前作と何一つ変わらない、言わばGTA3にとってのバイスシティ的なポジションの作品だった。。
とにかく操作システムも、手応えも、インターフェースも、全てがFallout3と一緒。違うのは主人公と、舞台となる世界くらいのもの。
だけどそんなことは、マイナスの要因には全くならない。あのFallout3をそのまま受け継いだゲームだ。それが面白くなかろう筈がない。
かつてバイスシティを喜んで受け入れたように、俺はこの非ナンバリングの外伝タイトルを、諸手を挙げて歓迎しよう。
極端な話、Falloutに関しては、延々とこの手の"3のMOD"的なポジションの作品を出し続けていって貰っても構わないくらいだ。受け手が食傷しない限り、Fallout3は永遠に色褪せることがない。

脳天に鉛玉を喰らった俺だが、どうやらベガスを支配する悪運の女神は、俺の命を救ってくれたようだ。
いや、彼女の本音を垣間見れば、それは「どうせ死ぬんなら、ここで有り金落としてから死ね!」ということなのだろう。
博打場の女神は、僅かながらも金を持ってる奴には、それなりに優しくしてくれる。そして無一文の奴に対しては、とことん無情だ。
命を救ってくれた医者の家でキャラメイク。ここで俺の中の野郎は、ステータス配分でラックを低めに振るという失態を冒しやがった。
あのな、このゲームの舞台は博打場だろ! そこに運のないキャラで挑んで一体どうしようってんだ、このすっとこどっこいが! 今さら気付いても後の祭りなんだよ!

3やオビリビオンにあった、長い長いプロローグを経て、溜めに溜めてからぽんと広大な世界に放り出すというパターンを踏まなかったのは、ちょっぴり残念だ。
オブリビオンの、地下道を抜けて広い世界に躍り出たときの、あの素晴らしき高揚。そしてFallout3の、Vaultを抜け出して荒廃した世界に躍り出たときの、あの素晴らしき絶望。
それと比べると、このニューベガスの「ようこそ、この世界へ!」の瞬間は、ちょっと素っ気ない。
そして目の前に広がるのは、あの絶望に満ち溢れたキャピタルウェイストランドと違って、文化的で人の営みがある世界だった。
人々は農耕や酪農を営み、そしてキャピタルウェイストランドの終末世界からは想像もつかないような、ちゃんとした体裁の雑貨店や酒場が存在する。
そして何よりの驚きは、放射能に汚染されていない綺麗な水が飲めることだ。開始早々トイレに溜まった汚水をすすっていたキャピタルウェイストランドとは、何という違いだろう。

そんな環境だと、人の心も豊かになるのだろう。
最初に俺を助けてくれた医者も、この町の用心棒的存在のサニー・スマイルズとか言う女も、そして俺を墓穴から引っ張り出してくれたヴィクターと言う妙なロボットさえも、みんな親切心に溢れたお節介な連中だ。
人を言葉の理解できるモルモットくらいにしか考えていない、メガトンの理系女とはエラい違いだ。
レイダーをぶち殺して廃墟のマットレスを奪うしかなかった、キャピタルウェイストランドの宿無し状態と違って、この町ではいきなり暖かいベッドも無料で確保できる。
もっとも朝目覚めたら、隣にあのイージーピートとか言うクソジジイが一緒に寝ていやがったが。道理で臭えと思った、このベッド!

しばらくはこの人情溢れる町に腰を据えて、あちこちをちまちまと探索していくつもりだ。
そして俺は今、あるジレンマに苛まれている。
Fallout3は頭から尻尾までたっぷりと楽しめるゲームだが、その中でも篦棒に面白い瞬間は、やはり開幕間もない頃の、右も左も全く分からない、出会うもの全てが新鮮な頃だった。それはこのニューベガスでも、やはり同様のことだろう。
新しい生き物、新しい風俗、新しい土地。目にするあらゆるものが真新しく鮮烈に感じるこの期間。
しかし、新たな世界で一つずつ歩みを進める度に、世界に対する知識を覚える度に、この鮮烈な感動は少しずつ失われていくのだ。
それはとても寂しいことではあるけれど、だがそんな喪失感も、一方ではそれはそれでちょっぴり楽しく感じたりするから厄介だ。

とにかく先を急ぐ必要はない。
コヨーテや、エリマキトカゲみたいな妙な生き物を狩り、そして遠目にラッドスコルピオンを確認しては、踵を返して慌てて逃げ出す。そんな生活をしばらく続けてみよう。
なぁに、慌てなくとも、カジノも、復讐の相手も逃げやしない。ただし、あのチェックのジャケット野郎に遭遇したら、即座にその脳天を叩き割ってやる程度に、鈍器殴打のスキルだけはきっちり磨いておくから、覚悟はきちんとしておけよ、くそったれのポマード頭め!
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