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【薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク】月下の青春群像劇

   ↑  2016/04/05 (火)  カテゴリー: PCゲーム
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木原敏江の代表作に「摩利と新吾」という大河長編がある。戦前の全寮制男子校を舞台にした青春ドラマでオレのフェイバリットコミックの一つだ。
がさつで薄汚いだけの現実のそれとは違って、見目麗しい美形が青春を謳歌する想像と妄想の世界の男子寮は常に美しい。
やはり昭和初期の旧制高校を舞台にした『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』の寮もそうだ。
眉目秀麗で文武に優れた若者たちが学ぶエリート校。そこは教師はもちろんのこと、小間使いすらも超美形ときている。
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月の下の陵辱劇。襲われたのはそのちょっとワケありの生い立ちを持つ小間使い。
そして小間使い、日向要が慕う生物教師のもとに、陵辱の現場を収めた写真が届けられる。
脅迫とも嫌がらせともつかない謎の差出人は、果たして陵辱犯とイコールなのか。要の犯人探しには、やがて学校の中でも際立つ美形たちが絡みだし、それぞれに葛藤やコンプレックスを抱えたドラマを織りなすのであった。
愛好者それぞれの極めてパーソナルな嗜好に左右されるボーイズラブゲームは、他のジャンルのように万人が認める名作というものが、なかなか生まれにくい土壌がある。
その中にあって『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』はBLゲームでは珍しい、傑作の共通認識が高い作品だ。
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シチュエーション、キャラクター、シナリオ、すべてが高水準でまとめ上げられたこのゲームの中で一層際立っているのは、主要キャラクターを受け攻めリバーシブルに自由に掛けあわせて進行させ、それでいて破綻らしい破綻がまったくない、カップリングという行為そのものを根幹に据えたそのゲームシステムだ。
ニヒルで奔放な名家のぼんぼんに寡黙で朴訥な剣道の猛者。小生意気な赤毛の潔癖症と、その従属のような気の弱いおかっぱ頭の下級生コンビ、そして学校の近くに居を構えるハーフの猟奇探偵作家。
受け、攻め、それぞれに違った適性を持つような面々だが、しかしゲームを進めてキャラクターたちの隠された一面や心の闇が明らかになってくると、もう表面的なイメージによるカップリングでは物足りなくなってくるだろう。
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ただしそれぞれのキャラクターには、やはり厳然とした攻め体質、受け体質が存在する。
基本受け体質のキャラを攻め側に回す為には、組み合わせポイントと呼ばれる数値を莫大に消費しなければならない。
また一日ごとに割り振られる組み合わせポイントには上限があるので、受けキャラを攻め側に回すカップリングを作ると、その日に成立できるカップリングの数が激減してしまうデメリットもある。
この受け攻め逆転カップリングの数を重ねていくと、受けキャラの攻めポイントが少しずつ上昇し、攻めキャラの攻めポイントがやはり少しずつ減少する。
そして二人の攻めポイントの数値が逆転すると立場も逆転。そして無骨やニヒルの思わぬ一面、思わぬ痴態が次第に露わになっていくのだ。
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カップリングによりキャラクターごとにそれぞれ出現するシナリオは、さらに受け攻めの反転と純愛陵辱のルート分岐により、さらに多岐に広がる。
多感な時期は若者にモザイクのように絡み合った多面な心の奥底をもたらす。そしてそれはもっとも親密な人との関係の信頼や不信や葛藤によって、内壁を打ち破って露わになったりする。
別のカップリング、別のシナリオによって浮かび上がる、キャラクターたちの隠された一面と来るべき未来の姿。
月明かりと薔薇の花に囲まれた耽美な学園で繰り広げられるのは、実は王道の青春群像劇。
後にPS2やPSPへの移植も果たした、エバーグリーンの名作である。

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2016/04/05 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


摩利と新吾

あの二人は互いに運命の人で、魂の片割れ同士のおみきどっくりでありながら、体を重ねる事はなく、女性との間に子供もいるというとが作品に深みを与えています。そしてあの最期・・・。自分が乙女ゲーを楽しめないのはヒロインに自己投影出来ないからです。目の前で知らない女、感情移入出来ない女がもて続けるのを延々と見せられる苦痛ときたら!ラノベでも主人公が男性の作品が好きです。

奈良の亀母 |  2016/04/06 (水) 14:06 No.1212


震災から大戦と、一同が畳みかけるように時代の激動に翻弄されてゆく終盤は、今でも涙なくして読めません。
乙女ゲームはむしろ男の方が、コスプレ的な感覚でその立場を無責任に楽しめちゃったりするかもしれませんね。

与一 |  2016/04/07 (木) 17:54 No.1214

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