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2016/04/02 (土) カテゴリー: セガサターン

業界関係者。それは声優オタやアイドルオタにとって、複雑な思いを抱かせる対象だ。
見返りのない情念を注ぎ込む自分たちを尻目に崇拝対象の身内ヅラする憎いヤツラ。
しかし仕事という名目で、なんの憚りもなしに声優さんに必要以上に接近できる、そのスタンスは羨ましくもある。
ラジオディレクターや音響監督など、業界関係者は90年代後半の声優ゲーム乱立期において、プレイヤーが居座る便利なポジションとして、しばしば重宝されてきた。
そんな業界関係者の列に新たに加わってきたのが、第三次声優ブームの波に乗って次々と創刊した声優専門誌の編集者だ。
個々の作品に縛られず、幅広くニュートラルに声優とのコンタクトが望める、なかなかにおいしいポジションである。

1997年発売の『マイ・ドリーム オンエアが待てなくて』は、その声優専門誌編集者をプレイヤー主人公に据えたゲーム。
8人のみずみずしい声優の卵に取材を重ねて彼女たちの成長と躍進を見守り、ついでにちょっぴり親密になってしまおうという、我々が憧れる理想の業界関係者像を煮こごりにしたような設定である。
青田買いは声優オタやアイドルオタが漂流の末に行きつく終着の浜辺みたいな行為だが、それに加えて、どの娘を誌面でプッシュするかの言わば生殺与奪権をも握ったポジションだ。
悪魔に魂の3つや4つもまとめ売りしてでも手に入れたいところである。

そんな恵まれた立場のプレイヤーにゲーム開始早々与えられるもう一つの特権がキャラクターのキャスティング。
8人のメインヒロインには、それぞれ3人の声優が割り当てられていて、その中から誰をキャストに選ぶかは、すべてプレイヤーに任せられているのだ。
このゲームの企画がもう一歩踏み込んだものであったのなら、ここでそれぞれのヒロイン役に実際の新人声優たちを大挙登用して青田買いの二乗を目論むところだが、しかしこの『マイ・ドリーム』はそこに当時すでに中堅~ベテランの域に達している声優さんたちをチョイスして、詰めの甘さを露わしてしまっているのであった。

玉川紗己子、TARAKO、折笠愛、日高のり子、田中真弓、松井菜桜子、松本梨香等々。いかに役者の仕事が虚構を演じることだといえど、声優の卵に重ね合わせるにはずいぶんと無理のあるメンツである。
松井菜桜子さんにうっかりな口を利こうもんなら、廊下の隅に呼び出されて業界の仁義を1時間くらいみっちり叩きこまされそうではないか。

脚本を担当するなど本作の企画に大きく関わっているのが、現役声優の西村朋紘と辻谷耕史のコンビ。
ところどころに見え隠れする妙に生々しい業界臭は、この2人に拠るところが大きいのだろうが、その一方で妙に取り繕った業界描写や、ギャルゲーに必須な邪さの不足、そしてキャストも含めたみずみずしさの欠如など、本作のウィークポイントも、やはり既に中堅~ベテランの域に踏み込んでいた2人のすれた立場に原因の一端があるのだろうか。
業界のベテランが演じる声優の卵に内心恐縮しながらも、あくまでも業界の先輩ヅラしてもっともらしくお付き合い。
声優が声優という役柄を演じることの演技技術的な部分を超越した難しさを、嫌というほど教えてくれるゲームである。
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(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2476.html
2016/04/02 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |今井ひづるさんの絵は好きでしたけどね〜。まだ若かったから楽しめたけど、今遊んだらやっぱ物足りなさがあるでしょうねw
lain |
2016/04/07 (木) 00:45 No.1213
業界ゲームの色が強すぎて、ギャルゲーとしては淡泊すぎる色合いになってしまったのが、ちょっと物足りないところだったのかもしれませんね。
与一 |
2016/04/07 (木) 17:57 No.1215
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