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2016/03/10 (木) カテゴリー: XBOX 360

操作やゲームシステム、設定や世界観への慣れと習熟は、未知なるもの、異型のもの、不慣れな事象に対する恐怖を減衰させてしまう。ホラー系のシリーズゲームが抱える宿痾だ。
『バイオハザード』に『サイレントヒル』、数多のシリーズが作を重ねるごとに、恐怖感の喪失という問題にぶち当たってきた。
ましてや主人公が変わらないのであればなおさらだ。
XBLAでリリースされた『Alan Wake's American Nightmare』は、2010年のホラー大作『Alan Wake』のスピンアウト的続編。
当然その主人公も、前作と同じく職業作家アラン・ウェイクさんだ。

冒頭、唐突に始まる闇に獲りこまれた者たちとの戦闘。
闇の者は光を恐れる。懐中電灯の光で闇の衣を引き剥がして攻撃。そんな流れも前作をプレイした人間なら、もはや恐怖を伴わないルーチンワークとなっているかもしれない。
それを知ってか知らずか、アランさんはこの降って湧いたシチュエーションを、「ああ、またこれね」と、開き直って受け入れるのであった。
だってどうせ諸悪の根源は、またオレが綴った原稿っぽいし。ああ、もう創作者に心休まる時なんてないってえの。

傍迷惑な創作者さまのエゴと妄言、そこから生まれるダーケストジャーニーに付き合わされる新たな舞台はアリゾナの片田舎。
そして今回、アランさんの前に立ち塞がるのは、闇の使者ミスター・スクラッチ。ひっかき傷の憎い奴。
姿かたちもアランさんと瓜二つなこいつは、要はアランさんのもう一つの人格みたいなものだ。
前作でアランさんの鼻持ちならないヤッピーぶりを、さんざん目の当たりにしているこちらからすれば、このミスター・スクラッチのサイコパスな振る舞いも、ちっとも不思議じゃない。
アラン、もう一人のお前だ。自己責任できっちりけりを付けろ。今回も全くプレイヤーから同情されないアランさんだが、それは自業自得ってやつだ。

戦闘パートのマンネリ化を、アラン自ら「これはお約束みたいなもんだから」と開き直って受け流す。
それにモダン・ホラーとしての『Alan Wake』の真骨頂は、その物語構成にある。
じれったいテンポで展開した前作から一変、今度のそれはハイスパートの螺旋構造だ。
モーテル、油井、観測所、ドライブインシアター。ループする舞台で何度も出会うこととなる、お馴染みの人物にてお馴染みの死体。何度も何度もお騒がせしてすいませんね、また鍵を貰って行きますね。あ、それから成仏してください。
手順だってループする。バッテリーを装着して、バルブを回して、CDをかける。この流れは頭に叩き込んでおいて損はない。
なんでこんな回りくどいことを、毎回いちいちやらなきゃならないかって? 原稿に書いてあるからだよ! あ、それから忘れちゃいけない。CDをかけたら、後は全速力で走れ!

循環する時系列にアランさんも他の登場人物も、みんな妙に物分りが早い。そのうち状況説明だって省かれるし手順だってショートカットされる。
ご都合主義? 小説世界の中でその指摘は、カラスに「お前は黒い!」って言っているようなものだ。
創作者アラン・ウェイクは万能の神。この世界はアランさんのご都合次第でどうにでもなる。
そして起承転、起承転で延々と続く時間に結をつけるために、懐中電灯片手にアランさんは螺旋の中をぐるぐると巡る。
そしてこの慣れと習熟を逆手に取った不思議な螺旋の物語に終止符を打ったとしても、アランさんに心休まる日は来ない。
「ナイトスプリングス」は一話完結の連続ドラマ。今回のことがまるでなかったかのように、次にはまた新しい悪夢の世界に投げ込まれるのかもしれないのだから。
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