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経営シム

90年代の終わりから2000年代初めにかけてPCゲーム界隈で活況を呈し、多くの作品を生み出したジャンルにサンドボックス型の経営シミュレーションがある。
ちまちまと細かいキャラが蠢く箱庭の中に建物やオブジェクトを配置して管理する。
大元をたどれば『Sim City』に行き着くのだろうが、その後継のほとんどは、遊園地や病院、学校など、さらに細分化された空間を題材にしていた。
"なんとかタイクーン"ってのは、これら箱庭経営シムのメーカーを超えた冠号みたいなもんである。
しかしこの一時は大いに栄えたジャンルも、ゼロ年代も半ばを前にアッという間に凋落してしまった。

画面の中の細かいをオブジェクトを管理するこれらのゲームは、ハクスラ系RPG同様にパソコンの高解像度モニターの上でしか立脚しえないジャンルであった。
そしてそれはプレイヤーの目とモニターが極めて近い関係に位置することでも成り立っている。
しかしそんなPCゲームならではのアドバンテージも、テレビの性能向上の前に効力を失うこととなる。
ちまちました細かいキャラクターを表示することなどおぼつかなかったコンポジット接続のブラウン管テレビは過去のもの。
映像表現力を大幅に向上させたテレビは、ゲームのジャンルにおいてもPCとコンソール機の統合を促すのであった。

そうなってしまうと、マウスを片手にPCモニターに顔をくっつけるようにしてプレイしていたジャンルが凋落するのは、もはや必然のことだったのだろう。
かって様々なシリーズを世に送り出してきた箱庭経営シムも、コンソール機にアジャストできたごく一部を除いて、今では見る影もない。
ジャンルそのものが決して消滅したわけではない。それらは現在モバイルゲーム界隈に順応して、実はかなりの盛況ぶりだったりもするのだが、しかしハクスラRPG同様、過去にこのジャンルを愛していた者にとっては、現在のその姿はやはり別物に映っていることだろう。

『Prison Tycoon』は、そんないにしえの箱庭経営シムの一つ。都合4作が出た人気シリーズの初代だ。
カリフォルニアの海岸、南部の砂漠、そしてイーストコーストの島、いずれかの敷地を選んで、何も無い更地に獄舎や監視塔やレクリエーション施設や作業場などを建設し、そこに集められた囚人たちを管理監督し、彼らが更生して社会復帰する手助けをする。
囚人を迎えるのに最低限必要なのは獄舎。それさえ整えれば、その土地ならではの交通機関に輸送されて、オレンジの囚人服に身を包んだ服役囚たちがやって来る。
「アルカトラズの脱出」のパトリック・マクグーハン演ずる所長を見習って、せいぜい囚人どもに舐められないようにしたいものだ。
「よし!貴様ら、死体袋に入って出所したくなかったら、せいぜい従順な子羊に徹する事だな。囚人は生かさず殺さずが当刑務所のスローガンだ。しかと心得よ!」

そんな所長訓示などお構い無しに雑居房で多発するケンカ。方方で騒ぎを起こしてきた奴らを一箇所に集めて、何かが起こらないほうがどうかしている。
とは言えこれを放っておくわけにもいかない。
マウスクリックで囚人をピンセットよろしくつまみあげ、ケンカ相手と離れた場所でリリース。
だけど囚人のムードステータスが常に"ムカつき"状態を維持したままなので、問題の根本的解決には全くならない。他の囚人と顔を付き合わせれば、またケンカが勃発するだけだ。
この刑務所は、まだ雑居房の獄舎が二棟あるだけの貧弱な設備。当然収監されてくる連中も、揃いも揃ってケチな軽犯罪者ばかりななのだが、その比較的扱い易いはずのチンピラたちでさえ、こうも血の気が多いとは。
貴様ら何をそんなに怒っているんだ? いったい何が不満なんだ!?

……すまん、そう言えば食堂をまだ作ってなかった。もう一週間も飲まず食わずだったのか。そんだけ腹が減ればそりゃ気も立ってくるだろう。ホントすまん。
食堂を作ってなんとか連中をなだめ、看守も増員してある程度の治安も保っていると、刑務所運営もなんとか軌道に乗ってくる。
バスコートやジムなどのレクレーション施設、作業場や監視カメラ、飴から鞭まで様々な施設建築を繰り返し、やがて整ってくるのはさらなる重犯罪者のお出迎え準備。
監視塔は一段と高くそびえ、周囲はコンクリートの高い塀。懲罰房に隔離房もしっかり完備。そしてとどめは電気イス室。もうテッド・バンディだろうが、ヘンリー・ルーカスだろうが、しっかりおもてなししてやる。

刑期を終えて出所する奴、囚人同士のケンカで命を落とす奴、電気椅子でこんがり狐色になる奴、そんな刑務所を去っていく連中よりも、収監されてくる数の方が圧倒的に多い始末。これが犯罪大国アメリカの現実だ。
そのうちこの刑務所も、現実のそれと同じく過密状態になりそうだが、それでもこんな砂漠のど真ん中、ひと気が無くて寂しいよりはよっぽどいいじゃないか。
ちまちましたモブキャラがそこかしこにびっしり蠢いていてこその箱庭経営シム。たとえそいつらが絶対お友だちになりたくないような連中であってもだ。
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2016/02/01 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |ム所映画は数々あれど花輪和一先生の刑務所の中みたいな作品は海外にもあるんでしょうか?アルカトラズからの脱出やショーシャンクの空にのように、最後に残された尊厳を守るために命懸けで脱獄するのは名作揃い。パピヨンとかも。それがビューだよビューとか願いまーす、懲罰房が軽やかで良い感じだとか微塵も暗さが無いんだもの。シャバより楽しそうなんだもの。
「オレはあの地獄のようなアメリカ刑務所社会を生き抜いた!」みたいな本は多いですけど、”刑務所の中”みたいに、なんかあったときはあそこに入っちゃうのもいいかもいんないなーと思わせるようなものは、さすがに見当たらないっすねえw
脱獄もののゲームもけっこう多いですね。機会があれば取り上げてみたいです。
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