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2015/09/24 (木) カテゴリー: XBOX 360

ゲームの表現力が進化するスピードには、常に目をみはらされるものがある。
最近そのスピードが少しゆるやかになってきたとはいえ、それでも『Forza6』みたいなゲームを前にすると、「ここまで来たか」という驚きが素直に出てこようというものだ。
その一方で、どういうわけだか進化をまったく拒否しているようなジャンルもある。
ハンティングを題材にしたゲームは、昔からアメリカで根強い人気を持っているが、かってはガンシューティングなどの形態をとっていた狩猟ゲームが、よりそのテーマと親和性の高いファーストパーソンシューターに、その主軸を移してゆくのは、ごくごく自然なことであった。

狩猟ゲームにとっての、これ以上はないくらい理想的な表現形態FPSを手にして、同ジャンルがたちまち花盛りになるのは2000年以降のこと。
各社が揃って様々な作品を市場に送り出し、堅実なセールスを記録するが、しかしそれはテーマ故にまったく日本に波及することはなく、海外ゲームに異文化体験の香りを求めるごく一部の物好きだけが、断片的にそれらを体験するに留まっていた。
その中で日本でそれなりに名が知られていたのが、サイバーフロントが国内版を発売していた『Deer Hunter』シリーズ。
狩猟ゲームでも比較的シミュレーション寄りの作品で、そのシビアで淡々としたゲーム性は、これまたごくごく一部の物好きの支持を、本国のような文化基盤がないこの国でも得たのだった。

その『Deer Hunter』シリーズと並ぶ狩猟ゲームのメジャーブランドが、アメリカの大手アウトドアグッズチェーン、カベラスの名を冠した一連の作品である。
アクティビジョンがパブリッシャーになってからは、コンソールゲーム機での展開を積極化させ、『Deer Hunter』や『Hunting Unlimited』などの老舗シリーズが失速するのを尻目に、安定した地位を確保する。
今や日本でも、狩猟ゲームといえばこのカベラスのゲームをイメージする人がほとんどだろう。
伝統の鹿狩り『Deer Hunt』シリーズに、超人猛獣狩り『Dangerous Hunts』シリーズ、狩猟に釣りをミックスさせた『Outdoor Adventures』シリーズなど、ブランドの下に、さらに様々なシリーズを展開させているカベラスゲーム。
しかしその実態は、同系の作品と較べてもおよそ大雑把な造りの、粗製濫造と断じても過言ではないスチャラカゲームのオンパレードなのであった。

やはりアクティビジョンが発売している『Duck Dynasty』も、このカベラスゲームの流れを汲むものであるが、カベラスの初期の作品と近作や『Duck Dynasty』を比較してみると、とりあえずの見た目以外は進化らしい進化がほとんどないことに驚かされるだろう。
いくら保守的なカルチャーを題材にしたゲームとはいえ、この周りが百歩進む間に半歩進んだり進まなかったりする頑なな守旧っぷりはタダ事ではない。
いやそれならまだしも、このブランドは進むどころか数歩後退なんてマネを、時々平気でやらかす。
ゲームがもっともドラスティックに変化していった初代XboxからXbox 360の移行期に登場した『Cabela's Trophy Bucks』などは、その代表例みたいなものであろう。

ゲームが始まるやいなや、何の前触れもなくポツンと置かれるアーカンソーの荒野。それに戸惑うプレイヤーの前を、「ボクを撃ってみてよー」とばかりにわざとらしく横切る鹿。
ぱーん! ばったり倒れて姿が掻き消える鹿。「おめでとう、ステージクリアだ!」。
こんなガンシューティングを通り越してカーニバルの射的に退化したような雑極まりないショートステージが、うんざりするくらい延々と続くだけ。
その無為な行いを無感動のまま終えたオレは、パッケージに映る無垢な鹿の瞳が、こんなゲームを買おうとしているこちらを哀れんでいたことにようやく気づくのであった。
心躍らない企画を持ってこられた開発会社のみならず、統括してるパブリッシャーすらも、やる気がほとんどないまま惰性で仕事をこなしているんじゃないか。
カベラスの進化がまったくない一連のゲームから伺えるのは、「まぁこんなのでも出せばそれなりに売れるしー」なんて向上心皆無の台所事情だったりするのだ。
<日本版未発売>
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