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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

映画【猛獣大脱走】

   ↑  2015/07/26 (日)  カテゴリー: 映画・DVD
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ライオンにトラにクマにゾウ。元は野生の動物たちだ。
いったん機嫌を損ねれば、ヤクザを怒らせるよりも洒落にならない事態になるのは必定。
いざとなれば、か弱い人間を簡単に屠ってしまえる恐ろしい生き物たちを、動物園でアイスクリーム片手で呑気に観ていられるのは、そこに檻や塀という間を隔てる物体が存在しているからだ。
舞台はハイテクで管理された動物園。しかしその最先端の安全対策も、「大変だ、電源が落ちたら檻の電子ロックが全部開いちゃった!」なんて想像を絶する理由であっさり水の泡と化す。
かくして外界に放たれるのは汚染された水を飲んで凶暴化してしまった動物軍団。
前菜とばかりに動物園の職員たちを美味しくいただいたあとは、門をぶち破って夜の街へと繰り出すのであった。
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『カランバ』に『食人族』、モータースポーツドキュメンタリーの皮を被った事故シーン見世物映画『ポールポジション』など、人の好奇心や悪趣味につけこんで狂い咲いていた80年代のイタリア映画。
その源流を辿れば行き着くのは『世界残酷物語』で知られる、かのグァルティエロ・ヤコペッティ。
そしてこの『猛獣大脱走』を監督したフランコ・プロスペリは案の定ヤコペッティ人脈の人間。
編集担当のマリオ・モッラも、やはりヤコペッティ経由で、あの悪名高き『グレートハンティング 地上最後の残酷』を作った張本人たちの片割れだったりする。
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そんな香ばしい連中のこだわりはガチの生動物。
序盤、カーセックスに勤しむカップルを食い散らすドブネズミの群れに始まり、街を闊歩するゾウにチーター、トラにライオンと、すべてがホンモノ。
生ドブネズミの群れの中で悶絶しなければならない役者も大変だが、そのまま駆除の名目で火炎放射器でガチ焼かれるネズミたちもいい災難である。

夜の街中をゾウやチーターが徘徊する絵ヅラもいい味出しているが、惜しむらくはみんなしつけや調教が行き届いるのか整然と行動するばかりで、狂った動物が暴虐の限りを尽くしている雰囲気とは、およそほど遠かったりする落差だ。
狂える猛獣の役を与えられながらも、持って生まれた性格の素直さがそれを邪魔する動物をフォローするのが、ヤコペッティ映画や『グレートハンティング』で培った匠の編集技術。
実際には動物とじゃれあっているような様子も、彼らの針小棒大なテクニックにかかれば、たちまち残酷シーンの一丁上がりとなる。
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おとなしい動物を相手に、人間どもは自力で被害を拡大して、なんとかパニック映画の体裁を作ることに必死だ。
チーターの追跡から逃げるクルマは、その勢いで多重事故を引き起こし、滑走路に侵入したゾウにパニクった旅客機は、発電所に突っ込んで街中を大停電に陥れる。
そんなマッチポンプの努力を積み重ねても、狂気のかけらもないきょとんとした眼差しの動物たちの前にはすべてが水の泡。
騒動は一晩かからずに収束の兆しを見せ、DVDパッケージにも使われている怪獣映画もかくやな当時のポスター画を真に受けて劇場に足を運んだ者たちを、スクリーンの前で無表情にさせるのであった。
冒頭の引用句に衝撃のオチ、「社会の歪みは、より純真な生き物たちを狂わせる」なんてもっともらしいテーマを盛り込んでいるが、ここら辺の取り繕いもヤコペッティ以来脈々と続く連中のしょうもない伝統である。

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2015/07/26 | Comment (3) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


タイトーには360XBLAでルナークを出して欲しかった…

アーケードやメガドライブで出ていた動物愛護ベルトスクロールアクション「ルナーク(タイトー)」の真逆って感じでしょうか…即ち、プレイヤーが助けた動物に襲われる敵の気分が味わえる作品、なのかも…

おくてい |  2015/07/27 (月) 22:50 [ 編集 ] No.1089


目にあにまる暴走

どんな駄作であっても、社会批判だの風刺だのいう免罪符がそれなりに有効に働いてしまうのが、観客の辛い所ですよねw
あ、でもそれを利用していかがわしいものを堂々と観てる自分も居るんだなあww

性サターン |  2015/07/27 (月) 22:51 No.1090


>おくていさん

それがもう襲われても当然の悪党どころか、そこらの主婦は襲うわ、盲導犬は主人を噛み殺すわとエクストリームな騒ぎで。
それを主人公の獣医は麻酔弾打ち込んで、「ほらおとなしくなった。根は優しい子ですよ」。
そいつもう人肉の味覚えてるんですけど!


>性サターンさん

「とりあえず盛り込んでおけば、良識ある人間の文句も多少は和らぐだろう」って割りきりっぷりが、なんとも潔いですよねえw

与一 |  2015/07/28 (火) 23:44 No.1091

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