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2015/06/08 (月) カテゴリー: セガサターン

80年代のガールズバンド、コンセントピックスに"顔"というタイトルの代表曲がある。
「顔が嫌い、あんたの顔が嫌いなだけ、ごめんね君はとてもいい人、だけど顔が嫌いなの」なんて身も蓋もない歌詞を、ゴミ箱をぶちまけるようなボーカルでまくしたてるインパクトの強い曲で、このサビのフレーズが未だに耳にこびりついて離れない同世代の人もいたりするんじゃないだろうか。
で、話は唐突に変わるが、かつてセガにメガCDという陽炎のように儚いハードがあった。
そのわずかなソフトラインナップには、印象に残る奇抜なゲームが多々あったが、その中でも忘れられない一本が、バーチャルシネマと銘打った3Dアドベンチャーゲーム『夢見館の物語』だ。

かつては人間であった蝶たちが住まう不思議な館。そこに迷い込んだ幼い妹を兄が探す一人称視点のADVで、当時PCゲーム界隈で一世を風靡していたインタラクティブムービーの様式を、初めて家庭用ゲーム機に持ち込んだ意欲作であった。
ただ3DCGを展開するには、やはりメガCDはちょっとばかり力不足。PCゲームのインタラクティブムービーと比べると画質は粗く動きもがたつき、おまけに音質もこもり気味と、一見さんざんなビジュアルのゲームに仕上がったのだが、しかしこれが全部良い方に転がってしまうのだから、世の中わからない。
靄がかかったような不鮮明で粗いビジュアルは、まるで幻灯機が織りなす世界のような効果をケガの功名的にもたらしていたのだ。

その神秘の館が再び姿を現す。今度は最新鋭機のセガサターンで。
人であることを捨てた蝶たちの儚い物語に酔いしれた人々は、大いなる期待と共にこの続編を迎えた。
そして「ワンチャイコネクションの次はこれ……、サターンのADVってマジやばくねえか!?」と、大きな失望を表明することとなったのだった。
メガCDとは比較にならないセガサターンのパワーにより、あの幻の館の姿はよりいっそう鮮明に。
ああ、しかしそれは薄暗い灯りの下で蠢く夜のお姉さんたちが、白昼の太陽の下に姿を現すような行いであった。
よりくっきりはっきりと映し出されたグラフィックからは、皮肉なことに前作に充満していたあの掴みどころのない神秘性がすっかりと失われ、格段にクリアになった音質も、『夢見館の物語』の夢の中の会話のようなおぼろげな感覚をまったく喪失する効果しか及ぼしていない。

そして何よりも最大のアレなポイントは"顔"の存在だ。
『夢見館の物語』の頼りなげに宙を舞う蝶から一転、『真説夢見館』では館の住人たちは生首の姿となって我々の前に登場する。
「非力なメガCDと違って、サターンでは人の顔をCGでここまで表現できるようになりました!」
そうアピールしたい気持ちは分からなくもないが、しかしそれははっきり言って大きなお世話だ。
アバウトな口パクで喋る顔のビジュアルは、現し世と幻の狭間に漂う世捨て人たちを、俗世間と変わりない世界の住人へと引きずり下ろし、前作で育まれた幻想的な館のイメージは、メチャクチャにぶち壊されてしまっていたのだった。
宙に浮かぶ顔を目の当たりにしたとき、つい忘れかけていたコンセントピックスのあの曲のことを思い出し、あのバンドのヴォーカルのように顔をブサイクに歪めながら、「顔が嫌い顔が嫌い、あんたの顔が嫌いなだけ」と思わず口に出して歌ってしまった、そんなオレの前途多難なセガサターン元年であった。
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2015/06/08 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |咎首さらし
あらためてパッケージを眺めてみると…
なんてJirai-syuu…でしょうか
明らかに前作のほうが永久イライト…
見た目も中身も悪けりゃあ、そら嫌われますわ。
性サターン |
2015/06/09 (火) 14:55 No.1069
ワンチャイにしろこれにしろ、サターン初期のセガ製ADVのパッケージって、何も考えずに1分で作ったようなデザインばっかですよね。
与一 |
2015/06/10 (水) 18:29 No.1070
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