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2015/03/09 (月) カテゴリー: XBOX 360

どんなジャンルでも、ひとつの勢力の寡占状態があまりに長く続くと、それに対抗できるオポジションを望む声が上がってくる。
WWEの一極支配が続くアメリカのプロレス界において、TNA(トータルノンストップアクション)という新興団体が次第に勢力を伸ばしていったのも、そんな対抗団体待望論が背景にあった。
着々と力をつけていったTNAは、トップレスラーたちにとってもWWEの他に選択できるもう一つの受け皿となり、カート・アングルやダッドリーズ、クリスチャンといった、"ビンスの元からケツをまくった"大物たちが続々と参戦するに至って、TNAはアメリカ第二のプロレス団体の地位を固め、トップを独走するWWEにとってもいよいよ侮れない勢力になる。

目にも新しい六角形のリング、Xディヴィジョンという新概念、そしてAJ・スタイルズやアレックス・シェリー、クリストファー・ダニエルズらフレッシュな人材。
様々なアイデアを駆使してWWEの後ろ姿に迫る日の出のTNAが、メディア展開の一環としてビデオゲームに乗り出すのも当然の流れだ。
そしてタッグを組んだ相手はMidway。もっともこの時期のMidwayの内情は、かなりの崖っぷち状態。TNAとしては結果的にパートナー選びに思い切りしくじった形となったのだが……。
とにもかくにも、暗雲漂うMidwayから無事リリースされたのが、TNAの中継番組名をそのまま頂いた『TNA iMPACT!』(2008年作)。
元WWEチャンピオンのカート・アングル、元WCWチャンピオンのスティング、そして譜代のサモア・ジョーと、それぞれに名を轟かせたスーパースターを並べたボックスアートからは、WWEのプロレスゲームに負けないメジャー感が漂ってくるではないか。

WWEとTNAの関係のように、既に怪物ソフトとして君臨するTHQの『WWE SmackDown! vs. Raw』を急追せんと、『TNA iMPACT!』も様々な新機軸を打ち出している。
六角形のリングを利したロープワークからの柔軟な攻防と、豊富な返し技のシチュエーション。休むことなくリング上を駆けまわり、飛んで飛ばれて技を返し返されるノンストップのハイスパートレスリング。
もっさりした『WWE SmackDown! vs. Raw』とは一味違う、Xディヴィジョンマッチを彷彿とさせるスピード感が、この『TMA iMPACT!』の最大の特徴だ。

ストーリーモードもなかなかに魅力的。
主人公はTNAの頂点に立ったマスクマン。しかしそれを妬んだLAX(ホミサイドとヘルナンデスのラテンアメリカ系極悪コンビ)に会場外で闇討ちに遭いリタイヤを余儀なくされてしまう。
やがてマスクを脱ぎ捨て別人として、ニワトリがリングサイドをうろつくメキシコのドサ会場から始ま、再起と復讐の物語。
LAXを始め、ケビン・ナッシュやエリック・ヤングらTNAの面々が、本人自ら声の出演を果たしてリング上でバックステージで、このブラッド、スウェット&ティアーズのすえた香り漂いまくる濃厚なストーリーをサポートする。

しかし、これら魅力的なファクターの一方で、この『TNA iMPACT!』はプロレスゲームとしてあまりにも手落ちな部分も多かったりする。
まず技の数、バリエーションが圧倒的に少なすぎる。
対戦するレスラーの使う技が合わせ鏡の様に全く同じなんて、まるでアクレイム時代のWWFゲームを思い出させる光景が続発する。
バリエーション不足は通常技のみに留まらない。使える凶器はパイプ椅子一種類のみ。しかもそのパイプ椅子は場外の定位置にしか置かれていない。タッグマッチでのツープラトン攻撃なんかも出来やしない。
グラウンド技も乏しい。うつ伏せ状態の相手にはサブミッションを仕掛けられないのだ。じゃあどうやってアンクルホールドを出せと!? (カート・アングルの立場なし! )これらなんかもまるでアクレイムWWF時代のプロレスゲームに逆戻りしたかのよう。

WWEのディーバ部門(女子部)にあたるノックアウツ部門も未フィーチャー。そんな殺生な。ああ、ゲイル・キムをこの手で操作してみたかったのに!
そしてもっとも致命的なのが、クリエイトモードの擁護しようのない貧弱さ。『WWE SmackDown! vs. Raw』のクリエイトモードが、年を追うごとに強化されるのを実感していた時期だっただけに、このおざなりなエディット機能には相当失望させられた。
このように目新しく魅力的な部分と、あまりにも至らない部分が互いに極端に足を引っ張り合って、結果として平凡な評価に落ち着いてしまったビデオゲーム版トータルノンストップアクション。
見どころもそれなりに多かったから、次作では欠点を克服して大化けするのではないかという期待も、翌年にMidwayが倒産して淡い夢と消えたのであった。

最後にいくつか余談を。
このゲームは日本でもお馴染みのカレーマンが追加コンテンツとして販売されていたのだが、配信間もない頃のこのDLCには、カレーマンで試合を開始すると、正体の人が素顔で入場してくる愉快な不具合が存在していた。
これに遭遇したときは、「おおい、今日はマスク被って出る日だとあいつにキチンと教えとけ!」と、大いに笑わせてもらった。
日本会場を埋め尽くす、「合計ノンストップアクション」、「世界中プロレス」、「危険地帯ロイヤルマッチ」などのフリーダムな日本語もポイントが高い。
そしてこの手のゲームではお馴染みの隠しレスラー。その中に混じってちゃっかりと登場するボクサーは、『Ready 2 Rumble Boxing』のメインキャラクター、あのアフロ・サンダーだ。
<国内未発売>
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