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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

【EVERBLUE】海中、それは苦しい

   ↑  2014/08/10 (日)  カテゴリー: PS2
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うだるような真夏。こんな日は、青い海にどぶんと飛び込んで、綺麗なお魚さんたちと涼しげに戯れていたい。
猛暑の真っ只中で、誰もがぼんやりと憧れるステキなシチュエーションだが、そんな無邪気な想いを「海をナメんじゃねえぞ、こらあ!」と一喝するのは、蒸し暑い部屋の中で何故かPS2のコントローラーを握りしめているオレだ。
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水中、それは苦しい。なんかそんな名前のバンドもあったような気もするが、とにかく息が続かなくなると、それはのっぴきならない事態だ。
だったら浮かび上がって、思うぞんぶん肺に息を吸い込むがいいと呑気に言う人もいるだろうが、あいにくとここは大した心構えもなくうっかり入り込んじゃった沈没船の中。右も左も分からない。
いや、右も左もなんとなくは分かるが、陸の上のそれとは明らかに勝手が違う。ましてやただでさえ狭苦しい船の間取り。どっちに行けば出口かなんて簡単に分かるわけないだろう。進んだ先がどん詰まりだったら、その分の酸素はムダになっちゃうんだし!
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『Wizardry』は証明した。主観視点はダンジョンとしごく相性がいいことを。
そして『EVERBLUE』は証明した。海の中は主観視点と恐ろしく相性がいいことと、『Wizardry』のフォーマットをアレンジするには、これ以上はないくらい最適の場所であることを。
絵画のように鮮やかな背景と簡素なシステムで構成された地上と、時には涼しげで心地よく、時には恐怖を感じさせるほど息苦しい海中パート。
純朴な人々が集う地中海の港町で一息をついては、一見穏やかだけど静かな死と隣合わせな水の中に潜り、海底や沈没船に眠る遺物を拾い上げては、また地上に戻る繰り返し。
緊張と緩和の反復を後支えするのは、シンプルだけど太くしっかりとしたストーリーライン。
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その海洋冒険の障害となるのは、人智を超えたクリーチャーでも、謎の国際組織の暗躍でもない。
息が続くかどうか。酸素がまだ残ってるうちに海面に戻れるかどうか。ごく当たり前のダイビングの道理が、このゲームにおいてはプレイヤーの前に立ちふさがるもっとも手強い敵となる。
あ、そうそう、それから欲も密かな難敵だ。頑張って潜った沈船の奥深く。そこに眠る高くさばけそうなお宝の山を前にして、ダイバーは限界積載量と残りの酸素量を天秤にかけて、つい持てるだけの海中遺物をぎりぎりいっぱい持ちだそうとするギャンブルに走ってしまうことだろう。
そしてギャンブルは時に失敗するのがギャンブルたる所以。沈船からの脱出にちょっと手間取ってしまえば、待っているのは静かな静かな世界での静かな静かな死だ。
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アリカが黄金期のPS2に送り出した、この一人称視点のダイビングアドベンチャーは、斬新な切り口に基づいたダンジョンRPGの再解釈。
そして美しさも穏やかさも冷酷無情さも死の危険も、すべで静かに内包した海の姿を、ありのままにゲームに落とし込んだ至高の海洋ゲーム、エバーブルー。
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軸となるエレメントソナーによる探索システムに、シンプルな展開に彩りを施す写真撮影や収集物コレクション。
今では当たり前になったが、当時の国産ゲームではほとんど類を見なかった、左スティック移動右スティック視点のインターフェース。そしてその操作が生み出す、いかにも水の中を漂っていると錯視させるかのような、絶妙な浮遊感。
あらゆる要素、あらゆるシステムが見事なまでに調和して完成された、PS2カルチャーを代表する傑作中の傑作。
海中、それは苦しい。だけど海中、そこは心地よい。
太陽が狂ったように照りつける外の様子をよそに、いつまでもこの静寂の海の中に潜っていたくなる。
PS2本体ごといつまでも手元に置いておきたいと感じさせてくれる、エバーグリーン(不朽)な一作なのだ。

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2014/08/10 | Comment (3) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


無駄に広いローマの海やらソナーシステムやら非常に完成度が高かったですね。今考えてみると広い海中にダンジョンが点在し、更にランダムにアイテムが埋まっているとかオープンワールドのはしりとも言えるような気がします。
このレビューを読んで思いましたが、確かにWizardryからの落とし込みとも考えられるような要素もちらほら感じられます。鑑定ショップとか、お悩み掲示板とか。最後のダンジョンはWizダンジョンのオマージュと考えられなくもないですね。
1も好きだったのですがシステム面の詰めの甘さのお陰でしっかり詰んだ状態になってしまって(泳ぐスピードが2倍になるアイテムを間違って売ってしまい最終ダンジョンがクリア不能になった。)泣く泣く最初からやり直した覚えがあります。
2はストーリーの熱さやソナーシステムを継承しつつも更に完成度を高めて良い出来のナンバリングタイトルでした。
残念ながらWiiのFOREVERはやってないのですが、友人がやっているのを見てコントローラとの親和性が非常に高そうで面白そうだなと思いました。

あと、海中アドベンチャーと言うとAQUANAUT'S HOLIDAYも忘れてはなりませんぞ。

 |  2014/08/10 (日) 20:24 No.872


広くてて目印が少ない海に対して、また目標のヒントが「島から北」とか「ずっと西」とか、とにかく大雑把なのが往生しますよね。
2は魚の種類もグッと増えて、海中環境ソフトとしてもスケールをあっぷした、ホント理想的な続編でした。
深海でリュウグウノツカイと遭遇したときには、思わずびっくりして腰を抜かしそうになった記憶があります。

与一 |  2014/08/12 (火) 17:13 No.873


目標物が全然見つからず、何遍も東と西を行ったり来たりしたり、しまいにはローラー作戦だとか言ってちょっとずつ座標をずらしながらソナーをピコンピコン言わせてましたわー

2で何が嬉しいかって、水族館が作れるようになったのと船のマップに部屋や通路が表示されるようになったことですねー。
1では宝の地図を頼りに曲がりくねった通路をせっせか泳いでいって、やっとマーカーの位置に辿り着いたと思うと宝は壁の向こうの部屋だったりして、赤色の酸素ゲージとともに絶望した思い出が何回も、、、
ま、それも含めて面白いんですが

 |  2014/08/12 (火) 21:47 No.874

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