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その走り方は「ドタドタドタ」という擬音がついているかのようにせわしなかった。
さらに過剰なまでに膨れ上がったアナボリックステロイド製ボディ。周回遅れの80年代みたいなヘアスタイル。体のあちこちに括りつけているのは、ファンシーな房掛けアクセサリー。
コーナーポストに登っては、まるでキングコングみたいに胸をどんどこ叩き、さらには意味もなく吠えながら、これまた無意味にロープをぶるんぶるん揺らしまくる。
ありとあらゆる要素が、およそカッコ良さとは対極にある間抜けなものばかりなのに、それを一緒くたに引っ括めると何故か馬鹿馬鹿しくも最高にカッコイイ入場シーンになっていたのは、勢いと強引のなせる力技だったのだろう。
"超合金戦士"アルティメット・ウォリアーの本領は、この入場シーン。後の試合はオマケみたいなものであった。

腰の入ってないパンチ。力強さのかけらもないクローズライン。迫力がまったく感じられないフライング・ショルダーアタック。唯一の見せ場はリフトアップスラム。フィニッシュは何故か背中へのジャンピング・ボディプレス。
これらの少ない引き出しをやりくりして、なんとか限界は三分。それ以上長引くとボロが出る。
だけどそんなレスラーとしての技量の拙さなんか、オレたちはまったく気にも留めなかった。
そのアッパーなテンションと根拠のまったく無い勢いが生み出す台風のようなグルーブに、頭を空っぽにして酔いしれた。
プロレスは時としてまるでつむじ風のような束の間のヒーローを生み出す。90年代はゴールドバーグ。そして80年代はアルティメット・ウォリアー。

超合金戦士のレスラー人生のハイライトは1990年。舞台はすべてのプロレスラーにとって高くそびえ立つ最高峰の頂であるレッスルマニア。
しかしいつもドタドタ騒ぐだけで試合を終えていたアルティメット・ウォリアーにとっては、この頂上はあまりにも高く険しいものだった。
天下のレッスルマニア。そのメインイベントを、いつものルーチンワークで終わらせるわけにはいかない。
しかも相手はプライドの高いハルク・ホーガン。さらにはベビーフェース同士の対決という難しいシチュエーションだ。
だけどプロレスの神様は、レスラー仲間の間ではおよそ評判が悪かったこの男の元にも、ちゃんと降りてきてくれた。
アルティメット・ウォリアーは、この一世一代の舞台に渾身の頑張りをみせ、彼にしてみればこれ以上はないくらい上出来の内容で長丁場を闘いぬき、そしてついにWWF世界ヘビー級のベルトと共にレスラー人生の中で最高の瞬間を手にしたのだった。

30年に渡る歴史を持つプロレス最大の祭典レッスルマニアのゲーム版アーカイブ、『WWE Legends of WrestleMania』。
そのメインモードは、歴史的試合を再現するを建前に、あらかじめ決められたブックの完遂を目指す、いささかケーフェイ気味な内容なのだが、その中にはもちろんこのアルティメット・ウォリアーの晴れ舞台も収録されている。
ファンの支持未だ厚い絶対王者ハルク・ホーガンからの王位継承。レスラーとしてはおよそ不器用だった超合金戦士が直面したこの難しい課題に、追悼の意も込めて改めてチャレンジしてみよう。
力比べで老いたホーガンを圧倒し、ホーガンにはない若さと勢いを印象づけながら、最後は完全フォール決着を目指すのだ。
リング中央でダブルノックダウンの状態から、紙一重でホーガンよりも先に起き上がりこちらのダメージがわずかに浅いことをアピールするアクションは、この試合のハイライト。是非とも逃さず成功しておきたいところだ。

レッスルマニア30周年大会の関連イベントに出演し、公の場で健在なところを見せたばかりなのに、それから数日も経たないうちに、超合金戦士はあっけなくこの世を去ってしまった。
その去り際は、まるで自らの入場シーンのごとく、つむじ風のようにあっという間だった。
女子中学生がデザインしたようなタッセルだらけのコスチュームに身を包み、落ち着きという言葉を知らないハイテンションぶりで花道を一瞬で駆け抜ける。
とてつもなくカッコ悪くて、そこが堪らなくカッコ良かった、最高に馬鹿馬鹿しいプロレスリングヒーロー、超合金戦士アルティメット・ウォリアーは、80年代と90年代の狭間に束の間狂い咲いた、プロレス界の一瞬の花であった。合掌。
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2014/04/10 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |漫画「グラップラー刃牙」でも少林寺拳法使いに瞬殺されていた人ですね。
wweにすっかり興味を無くした私も、この人なんか久し振りにレッスルマニア出るらしいよ、ぐらいの情報は耳に入っていました。が、まさかその後亡くなっていたとは…
特にやつれてるわけでもなく、ものすごく元気そうだったのに、その翌日に急死ということで、ちょっとびっくりしました。
ステロイドの影響なのか、この時代のレスラーは早世する人が、ちょっと多すぎますね。
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