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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

映画【グレートハンティング 地上最後の残酷】

   ↑  2013/02/15 (金)  カテゴリー: 映画・DVD
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もし、今のご時世に、「人がライオンに食われましたよ!」などとはしゃぎまくるCMをゴールデンタイムに投下したら、それはもう大問題になるであろう。
そんなことが大手を振るってまかり通っていた70年代というのは、なんとおおらかな時代であったのだろうか。
モンド映画の祖、ヤコペッティがネタ切れに陥り、そのまま映画界の第一線から退いたのと入れ替わるように登場したアントニオ・クリマーティ&マリオ・モッラ。
そのポスト・ヤコペッティコンビが最初に悪名を轟かせた映画が、この「人がライオンに食われる瞬間」を売りにした、「グレートハンティング 地上最後の残酷」である。
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その手口は師とも言えるヤコペッティとまったく同一。
虚実入り交じった映像に、もっともらしい社会批判や文明批評を装ったナレーションを被せて、ドキュメンタリー映画としての体裁だけは整えているが、その実は客の好奇心や悪趣味につけこんだ下世話な見せ物という、考えようによっちゃ映画の鑑みたいな作品だ。
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この映画の(一応の)テーマは"人類と狩猟"。
パタゴニアの原野で鹿を狩るハンターに始まり、アボリジニの狩りの様子やエスキモーの生活風景などを、ラブ&ピースを標榜する文明社会ヒッピーたちの集会(景気よく脱いでエロ部門を兼任)と対比させ、「どちらが人間の本来の姿だろうか」なんて勿体ぶったナレーションが挿入される。
もちろんこれを観に来た連中は、どいつもこいつも「人がライオンに食われる瞬間」を期待して集まった、ご高尚な人間ばっかだから、そんなもっともらしいテーマなんか知ったこっちゃない。
彼らを飽きさせないために、オードブルとばかりに提供されるのは、どっかの部族が「大地と交わる」と称して地面に穴を掘り、そこにみんなでイチモツを突っ込んで腰をへこへこさせるシュールな映像。
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そして第一のメインディッシュとして、いよいよ皆さんお待ちかねライオンさんの登場だ。
アンゴラの国立公園で現場に居合わせた一般人が、たまたま撮影したという触れ込みのフィルム。
8ミリカメラを片手に車から降りて、お食事中のライオンに接近してしまった粗忽なお父さんが、別のライオンに背後から襲われ、車の中で泣きわめく嫁さんや子供たちの前で、そのまま美味しく食べられてしまったという、なかなかヘビーな映像なのだが、まあこれは後にあちこちから指摘されているように、よくできてはいるけれど限りなくフィクション臭いシロモノである。
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素人撮影とはとても思えないショットの安定ぶり、不自然なカット割り、そして食われている間の、いかにもマネキン臭い不自然な様子など、いかがわしいところを指摘していけば、それこそきりがないのだが、それを今さら指摘するのも野暮かもしれない。
この疑惑のノンフィクションぶりは、第二のメインディッシュである、傭兵たちの原住民狩りに於いても、いかんなく発揮されている。
森に火を放ち、あぶり出したインディオたちに容赦なく銃撃を加える傭兵たち。捕まったインディオは、抑えつけられ、生きたままおのれの陰茎を切り落とされて、それをおのれの口に突っ込まれるセルフ尺八の後、首を切り落とされる。
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このシークエンスも、あちこちからさんざん指摘されているように、これまたよくできてはいるけど、実に胡散臭い。特に際立つのは、カメラの不自然な見切れだ。
そんな山っ気たっぷりな下世話のオンパレードを、最後の最後で、野生の狼と人間のふれあいなんてハートフルなパートで締めくくろうってんだから、タチの悪さもひとしお。
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この映画のヒットに味を占めたクリマーティ&モーラは、後に人間の腕がジープに引っ張られてちぎれるシーンを売りにした「残酷を超えた驚愕ドキュメント・カランバ」を製作。
これまた日本では盛大にテレビスポットが打たれ、さらには当時人気絶頂だったプロレスラーのザ・グレート・カブキが、後楽園ホールの前でこの腕ちぎられパフォーマンスにチャレンジするという、悪ノリにもほどがあるプロモーションが展開されたのだった。

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2013/02/15 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


私はあの黒人部族のガイアSEXが、この映画で一番印象に残ったシーンでしたね。
「ポエジーやなぁ~。まさしくヒューマンネイチャーやでぇ~」って感動してました。
「カランバ」は観たこと無いんですけど、ジープで腕千切りって聞くと「ヒッチャー」って映画のトラウマなシーンを思い出します。
ちなみに私がヤコペッティの映画で一番好きなのは「Addio Zio Tom」です。

性サターン |  2013/02/20 (水) 07:05 No.388


あの大地SEX、妙な神々しさがあるんですよねw
カランバは、僕は一応観たことあるはずなんですけど、腕千切りも含めて、どんな内容だかさっぱり覚えてないです。
予告の段階で、もう消費され尽くしちゃったような映画だったのかなあ。

与一 |  2013/02/20 (水) 18:54 No.390

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