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2013/02/01 (金) カテゴリー: XBOX 360

80年代のゲーセン。無駄にたむろして青春を浪費した思い出深い場所だが、しかしあれを経営する側に回ってみたいかと言われれば、「あんなアンパン臭いガキども相手の商売なんか、まっぴらごめんだよ!」としか答えようがない。
プレイステーションで出た経営SLG『できる!ゲームセンター』は、そのゲームセンター経営を、ゲームの中で体験できる作品だったが、これがまたタイトロープな自転車操業を数十年に渡って強いられる、夢も希望もないゲームだった。
実際にやってみると、まったく割に合わない。そんな実情からか、ゲーセン経営シムというのは、ありそうであんまりないジャンルであったが、まさかそれの米国版がXBOXインディーズゲームに登場するとは!

XBIGの『Arcadecraft』は、1980年を皮切りにゲームセンター経営をスタートさせ、80年代アーケードの流れを漠然と追いながら、ちゃりちゃりと日銭を稼いでゆくゲーム。
筐体を購入してこれを店内に配置し、店のデザインを変えたり、ジュース自販機やジュークボックスなんかを設置して、客からこつこつ小銭を回収する。
ゲームはリリースから時間が経つほど、次第に飽きられて人気が落ちる。
しかし80年代はアーケードゲームの一大成長期。革新的なゲームが次から次へと登場する夢のような時代だ。
このゲームの人気が落ちても、替わりになる新しいゲームはいくらでもある。問題はそれを買う金だ。なんでオレのゲーセンは、一番最初に導入した『ルナランダー』を、いつまで経っても延々と稼働させてなきゃなんないんでしょうか!?

『できる!ゲームセンター』も、こと経営に関しては相当シビアなゲームだったが、それでもあっちは、スタート直後のインベーダーフィーバーとか、格闘ゲームブームの到来とか、この商売をやっててよかったと思わせるウハウハな期間が、一応は存在した。
しかしこの『Arcadecraft』は、そういった半イベント風の確変が存在せず、さらに客の落とす小銭以外に収入源がまったくないから、いったんジリ貧に陥った経営を立て直すのは無理ゲーと化しているのだ。
一体誰が、何ヶ月経っても『インベーダー』と『アステロイド』と『ルナランダー』しかないゲーセンに、何度も足を運びたがるだろうか。
じゃあ新しいゲームを導入したら? それを買う金が無いんだよ! はい、リスタート、リスタート!

登場するゲームは基本的に架空のものだが、まあ一目見れば一発でその元ネタは分かるだろう。これらのゲームは、すべて元ネタと同じ時系列で市場に登場する。
メーカー名もやはり架空だが、こちらもゲームと照らし合わせれば、モデルとなった会社は一目瞭然だ。
客として来店するのは、ランダムに選ばれたフレンドのアバターたち。これなんかはちょっと面白い趣向だが、中には台パンかまして筐体をぶっ壊す悪質な客も居たりする。
これをやられると、本来はまったく落ち度のないフレンドに対する理不尽な怒りが沸き上がってくるので、ちょっと罪作りなフィーチャーかもしれない。XXXXXX、おい、てめえ! その筐体の修理に一体いくらかかると思ってやがんだ! ちゃんと弁償しろこらあ!

新作ゲームを売り込みに来る日本人や、ハイスコアに名前を刻みに来る有名ゲーマーの来店、さらには店のブレーカーが落ちたりなど、イベントもそれなりに散らばられていたり、ジュークボックスを設置すると360のHDから自前の音楽を流せるなど(お好みのマイ80年代ゲーセンBGM集をご用意ください)、気の利いたギミックもあるが、一番イカしてるのは、何たって筐体ごとにちゃりちゃりと音をたてながらコインを集めて回る、売上金回収システムだろう。『できる!ゲームセンター』に足りなかったのはこれだ。

しかしいつもは楽しいコイン回収の音色も、今のオレにはどんよりと重たく響いてくる。
月末の利子と運営経費の支払日。だが金庫の中にはもう一銭も残っておらず、仕方なく筐体から片っ端に小銭をかき集めて、なんとか今月の支払いだけでも凌ぎきろうとしているのだ。
今をどうにか乗り切っても、来月にはまた支払いの日がやってくる。そのときはもう筐体を売って金を作るしかない。
こうして月を追うごとに、筐体が一つ、また一つと消えていくオレのゲーセン風前の灯火。
このままでは緩慢な死を迎えるのみだ。だったら今のうちに何とか打てる手を打っておこう。時代は大型筐体だ!
残った僅かなスタンディング筐体を売っ払って、その金で『モナコGP』を購入。オレがガキの頃、さんざん金を巻きあげられたゲームだ。こいつのインカムが経営打開のきっかけになってくれるはずだ。いや、きっとなる!

薄暗い店内に、『モナコGP』一つだけがぽつんと置かれたゲーセン。
そんなシュールな場所に、はたして誰が好きこのんで足を運ぶであろうか。そしてカウンターの中に佇むオレのアバターは、この期に及んでなぜ微笑みを浮かべていられるのだろうか。
そして次の月末。利子支払いのためにこの『モナコGP』までもが売り払われ、何もかもがなくなりがらんどうになった店内で、オレのアバターは、なおも何かを達観したかのような微笑みと共に、延々と立ち続けているのであった。
ゲーセンなんてつくづく経営するもんじゃない。あそこはゲームをせずに何かを吸いながらたむろする場所だ。
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2013/02/01 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |Arcadecraft、さっきまでお試し版やってました。
シビア過ぎますね。せめて筐体でミニゲームできれば
良かったのに。ややしょんぼり。
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2013/02/02 (土) 20:03 No.384
序盤の経営を乗り切るのが、すごい壁なんですよね。
経営を安定させようとすると、あまりにも忙しいやり繰りを強いられるので、普通のタイクーン系経営シムの感覚で臨むと、ちょっとしんどいっすよね。
与一 |
2013/02/03 (日) 16:12 No.385
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