【アルバム倶楽部 胸キュン セントポーリア女学院】

♪ 清き学舎 仰ぎつつ 共に学びし 我らの心 海より深く 結ばれむ ああ セントポーリア女学院　＜私立セントポーリア女学院校歌＞
セントポーリア女学院。なんとなく歌舞伎町や道玄坂辺りにある店名みたいな響きですが、こう見えても創立100年を迎える私学の名門だそうです。

プレイヤーに降って湧いた仕事は、この学院の創立100年祭記念アルバムを制作すること。
赤いリボンにクリーム色のニットブラウス、チェックのスカートに純白のソックス。王道の制服に身を包んだ生徒たちの中から、さらに選りすぐりの6名と、彼女たちとそれほど年齢は変わらなさそうなのに、ちょっぴり老け顔だったために先生役に回されてしまったと思しき1名を、びしばしと撮影しまくって、自分だけの女子校アルバムを作り上げるのです。

90年代中頃に、局地的に盛り上がった不思議なジャンル、疑似カメラマンゲーム。
最近では『フォトカノ』という、このジャンルの系譜を引く作品も登場しましたが、『バーチャルカメラマン』や『バーチャフォトスタジオ』、『Penthouse Interactive: Virtual Photo Shoot』に代表されるように、この当時の疑似カメラマンゲームは、実写が基本でした。
そして『アルバム倶楽部 胸キュン セントポーリア女学院』は、その実写系疑似カメラマンゲームの、最後の超大作とも言えるような作品です。
ただし、他の疑似カメラマンゲームと違い、この『セントポーリア女学院』は、18歳以上推奨止まり。
これの制作元であるソシエッタ代官山が頼りにしていたサターンのX指定は、残念なことに、このゲームが出る前年に廃止されてしまったのでした。

ソシエッタ代官山は、それにもめげずに、『王様げーむ』のような表現のギリギリをつくタイトルを出したりもしましたが、『セントポーリア女学院』に限っては、そこら辺はかなりマイルドな表現に留まっています。
とは言え、世のコス好きに対する配慮は万全です。
校内は教室、体育館、グラウンド、プール、寮などのブロックに分かれ、捕捉した場所に応じて生徒たちは、制服やブルマ、スク水などのコスチュームを身に纏ってくれるのです。
さらにこの女学院は、海岸に隣接したゴージャスな立地環境。まるで南の島みたいな海岸で拝めるのは、もちろんビキニ姿。

しかし生徒たちは、無条件で写真を撮らせてくれるわけではありません。
その条件とは、あっち向いてホイのガチ勝負。ソシエッタ代官山にじゃんけんと言えば、サターン版の『THE野球拳スペシャル ～今夜は12回戦～』では、そのイカサマ全開な鬼畜難易度じゃんけんが非難囂々でしたが、本作ではそんなあからさまなインチキはありません。

それどころか、この手のゲームにありがちなテンポの悪さとは無縁で、ストレスを全く感じることなしに、さくさくとあっち向いてホイ勝負を進められるのは、このメーカーらしからぬユーザーフレンドリーぶりだと言えるでしょう。
もっとも、このあっち向いてホイ3本勝負は完全真剣勝負。プレイヤーに対する救済措置などは一切無いので、せいぜいあっち向いてホイの実力を磨いて臨むことです。

登場する7人の女の子で、比較的名の知られた存在なのは、同じサターンの『湾岸デッドヒート＋リアルアレンジ』にも出演している川崎（橋本）愛でしょうか。
眼鏡っ子を演じる岸本由香里は、ゲーム出身のアイドル井上麻美と一緒にClickというユニットを組んでいたこともありました。
この中で唯一、現在でも芸能界現役なのは、ポニーテール娘役の森下純菜。この人はゲーム関連では、実写推理ADV『天城紫苑』にも登場してましたっけね。

ソシエッタ代官山は、今でこそ普通のエロゲーメーカーになってしまっているようですけど、この時期はアダルト系ゲーム云々以前に、そのゲーム業界臭の希薄さが、一番の個性でした。
そんなゲーム業界、ゲーオタの手垢にまみれていない会社が作り上げた夢の花園『セントポーリア女学院」。
今のゲーム制作の土壌からは、間違っても出てこなさそうな、このオヤジっ臭さすら感じられる一連のテイストは、今となってはとても貴重なものかもしれません。