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2019/10/01 (火) カテゴリー: XBOX ONE

荒んだ刑務所を出てきた先は、さらに荒みきった背徳の街だった。
いい年こいてニューヨーク・ヤンキースのキャップを被った潰しの効かない男について回る現実なんてのは、常にこんなもんだ。
ジョン・ロックハートがここに舞い戻ってきたワケは、自分をハメてムショに送り込んだ黒幕を探すため。
情報屋、売人、用心棒、チンピラ、悪徳警官、闇社会の実力者、そして彼らに食い物にされる女たち。
それに対峙するジョンの武器は、潰しの効かない男に唯一残された暴力のみ。

そんなノワールなストーリーが綴られる形式はデジタルコミック。
薄暗いグレーをベースにしたビジュアルは、陽が上らないソドムの街の荒みきって八方塞がりな空気を嫌というほど伝えてくれる。
そのデジコミをブリッジしてゲームとしての体裁を整えているのはマッチ3パズル。
適当なお話をマッチ3パズルで繋げてアドベンチャーゲームと名乗るスタイルは、モバイルゲームを中心に氾濫しているが、このノワールな物語の下では、パズルの見てくれもちょっとばかり荒くれている。

パズルブロックに彩られているのは、拳にメリケンサック、ブーツに割れた瓶。
そう、パズルはジョンが話を進めるためになくてはならなくなる手段、暴力の代行だ。
他のマッチ3パズルのように、きらびやかなブロックや気持ちよくなる連鎖なんてのは存在しない。むしろカタルシスが著しく乏しい、マッチ3パズルとしては根本的に何かが欠けているようなシロモノだが、これもハードボイルドな世界の現実だと無理やり納得する他はない。

ストーリーの分岐も気持ち付いている程度。
そしてボリュームもほとんどダイジェストの規模とあっては、こちらも魅力を感じるのは退廃的なコミックのビジュアルくらいしかないのだが、まさかそこにとんでもないトラップが潜んでいた。
コールガールやストリッパーが当たり前のように出てくるこのゲーム。ビジュアルコミックのコマの中にも、彼女たちのトップレスの描写がさも当然とばかりに登場する。
ここで誘惑に駆られてついうっかりスクリーンショットのボタンを押してしまったからさあ大変。
しばらくしてマイクロソフトからの通知がピコンと飛び込んできた。
「急になんだろ?」と訝しがりながら開いてみると、そこにあったのは"Xboxアカウントの使用停止措置"という物騒な文面。

身に覚えのないことにしばらく戸惑ったが、いま自分がスクショして勝手にフィードにアップロードされた画像にその原因があることにようやく気がついた。
いやいやいやいや、あんたらのレーティング下で販売されているゲームのスクショを撮っただけじゃん!?
そう抗弁しようにも「性的な描写のスクリーンショットを作成しましたよね!? 真っ当な人はそもそもこんなとこでスクショなんか撮ろうとしませんよ、このスケベ野郎!」という社会的には通りのいい指摘の前には、もう見苦しい言い訳でしかないだろう。
かくしてマイXboxアカウントは「エロ画像撮った不届き者」の傷つきとなってしまい、オレは「いくらノワールなゲームだからって、こんな生活安全課のおとり捜査みたいなマネしなくたっていいじゃん!」と、ただ天を仰ぐしかなかったのだった。
(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2846.html
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2019/10/08 (火) カテゴリー: PS1

タレントゲーム。
RPGやADV、アクションといった、ゲームの内容に応じたジャンル分けではない。
とにかく冠となるタレントの名前におんぶだっこした不思議な括りのゲーム群のことだ。
コンテンツを手にとってもらうために重要な要素となるタレントの知名度は、その企画の立ち上げの時点から大切なポイントになってくるはずだ。
かつてのタレントゲームのほとんどは、ビートたけし、明石家さんま、中山美穂など、世間一般へその名前が浸透した芸能人たちが連なっていた。

その当たり前の傾向がおかしな雰囲気になってきたのは、ゲームがカートリッジからCD-ROMへと移行した頃のことだ。
動画と音声、この2つを新たに手にすることによって、さらに進化するはずだったタレントゲームは、なぜかそこで誰もが知るタレントの名前ありきのジャンルから、とりあえず手っ取り早く名前を使えるタレントでゲームを安くでっち上げるジャンルへと変貌をきたしてしまったのだった。
それの急先鋒となったのがグラドルゲームという一群だ。
写真集やイメージビデオなんかとタイアップした画像や動画とパズルゲームあたりを組み合わせて一丁上がり。
今となってはマニアやゲーム史家からは黙殺されているけれど、それでも当時は枯れ木も山の賑わいとなったし、坂木優子やシェイプUPガールズや金沢文子が好きだったオレとしては、「おおいに存在意義があったよ!」と声を大にしたいところだ。

ここにその手のタレントゲームがひとつ。
冠となるのは松田純。90年代後半からゼロ年代初頭にかけて、グラビアを足がかりにバラエティ番組や映画・ドラマなどで活躍したタレント。
軸足が広すぎて代表的な仕事を絞りづらいのが、このタイプのグラドル~バラドルの宿命ではあるが、WOWOW初のオリジナルドラマとなった三池崇史監督作のアウトローコギャル物語「天然少女 萬」を挙げておきたい。
その松田純がゲーム界に敢然と殴り込み。
しかし『ブラックジャック VS 松田純』という、果たして松田純とブラックジャックで対決をするのか、あるいは松田純がブラックジャック・マリガン(あるいはブラックジャック・ランザ)と戦うのかもはっきりとしないタイトルに、早くも90年代後期タレントゲーム特有のざっくりとした企画が伺えてしまうのであった。

パッケージに映るのは紛うことなきバニーガール姿の松田純。
しかし裏返してみると、そこには"TV・グラビアで大人気の松田純と清水としみつ氏のグラフィックがドッキング"なんて禍々しくも無邪気な一文が踊り、早くもこちらは「いや、そういうドッキング望んでないから!」と声を荒げることになるのだった。
いやホント、マジで松田純以外には用はねえから! ぶっちゃけブラックジャックすら要らねえから!
錯乱しながらゲームをスタートしてみると、そこにいるのは松田純を自称する清水としみつによる二次元絵。
清水氏は90年代のオタク界隈と非常に親和性の高かった漫画家だが、それと松田純が本来食い合わせがいいはずもなく、こちらは自称松田純の清水絵が事務所を通さずに連絡先を教えてくれるラッキーな展開も素直に喜べず、「いつになったら本物の松田純が出てくるんだろう?」と、ただただ不安になるばかりだ。

そして延々と続くブラックジャック勝負。
しかし五段階の難易度に応じた本格的ブラックジャックの触れ込みも、このゲームを買ったほとんどの人間の目的が決してブラックジャックではない事実には如何ともし難い。
地味なブラックジャックをこつこつとプレイして、細々と貯めたゲーム内通貨で購入したプレゼントを貢ぐ先は自称松田純の二次元絵。
それでも一応二次元絵に合わせたセリフでは松田純本人がボイスを担当しているのだが、「声の出演・松田純」は、こちらが松田純に望む芸能仕事の最下位に位置することは言うまでもない。
純ちゃんのバニーガール姿に目がくらんでゲームを購入した先にあったのは、ただただ社会の不条理だけである。

清水としみつ絵を使ったブラックジャックゲームに、ポニーキャニオン~扶桑社ラインで流用できた松田純写真集からのお下がり画像をパッケージとマニュアルだけに申し訳程度のっけて一丁上がり。
さすがにこれだけではと罪の意識が芽生えたのだろうか、オプションに設けられたのは"純ちゃんのマッサージ"という項目。
そう、Xbox360のインディーズゲームで氾濫した、コントローラの振動を使ったマッサージ機能の先駆者的な機能ではあるが、しかしデュアルショックの振動を肩に押し当ててみても、こっちは松田純どころか久夛良木さんに無理やり肩を揉まれている気分にしかならない。
死んだ目で松田純の出てこないブラックジャックをひたすらプレイしながら、「坂木優子やシェイプUPガールズのゲーム、あれはあれでそれなりに良心的だったんだな」と認識を新たにさせる、そんなグラドルゲームの底の底なのであった。
この記事に含まれるtag : タレントゲー
(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2847.html
2019/10/08 | Comment (1) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |