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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

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【Curse of the Pharaoh】命がけのマッチ3パズル

   ↑  2019/09/21 (土)  カテゴリー: Android
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またしばらく更新ご無沙汰していましたが、ええと、ぶっちゃけ入院してました。
早い話が開腹手術を受けていたんですけど、無事に成功して数日前に退院して、いまはなんとか『Borderlands 3』にうつつを抜かせています。
言ったろ、ボダラン3を遊ぶまでは絶対死なねえって!

まぁ一口に入院だ手術だと言っても人間年を取れば辛抱がきかなくなってきますから、若い頃に比べればその辛さは二乗三乗されてくるわけですよ。
手術の間は全身麻酔かかってるからキツいもなにもないんですけど、問題はその後。
目が覚めたら病室のベッドの上で、点滴やら導尿の管やら足を縛り付けるなんだかワケのわかんないもの(後にこれはエコノミー症候群予防のための空気ポンプとそのチューブだと判明)でがんじがらめ、身動きひとつとれない。

それでも夕方のうちは、まだ麻酔が残ってるのか、少しうつらうつらできたんですけど、日が落ちてきた頃になると麻酔が覚めた反動で逆に目が異様に冴えてくるようになってきました。
飯も食えない、水も飲めない、それどころか身動きできない。その中で意識だけめちゃくちゃ冴えているってのは、そりゃもう皆さんが想像する以上に辛いもんですよ。

折しも夕食タイム。配膳ワゴンが「♪ぴんぴろぴんぴろぴんぴろりん」と、人の神経を逆なでする間抜けな音を立てながら廊下を行き来します。
そしてオレの前を当然のごとくスルーして同室の入院患者のもとに配られる夕食のお盆。
前日に食べたときには(なんだこのしょぼい飯は!)と内心で毒づいていた病院食ですが、いまのオレにはそれが満漢全席よりも豪華な膳に見えます。
いや、飯とは言わない。せめてお茶の一杯でも。口ん中がカラカラで唇もボロボロなんですよ。
心の中とは言え、ショボいとかマズいとか文句言って正直スマンかった。オレはもう今後二度とありがたい食事に対してケチをつけるようなことはしません!

そんな誓いでそれなりに盛り上がった夕食タイムも、「♪ぴんぴろぴんぴろぴんぴろりん」と遠ざかっていく配膳ワゴンと共に瞬く間に過ぎ去り、再び静寂が訪れる病棟。
見上げるのはなんの代わり映えもない天井。カーテンのレールにフックがいくつ付いているか数えてみたりもしたけれど、それも暇つぶしの作業としては明らかに限界がある。
消灯前に点滴のチェックに来た看護師さんに、できる限りの哀れっぽい声で「いつになったら動けるようになるんですかねえ」と尋ねてみると、朗らかな声で「すぐですよ」
「え、すぐ!?」
「ええ、明日の先生の回診のあと、おしっこの管と足は外せます」
「回診って何時頃なんですか!?」
「明日の10時過ぎくらいですね」
……ってことはあと15時間後。それをすぐとは言わねえ!
いや、消灯で寝て朝起きて、それからならすぐなんだろうけど、いまのオレはあまりにも目が冴えすぎていて、クロン・グレイシーにチョークスリーパーかけられても意識を失いそうもねえ!

夜9時、消灯時間。常夜灯がほのかに光る中でなんとか眠ろうと様々なチャレンジを試みた。
ヒツジも数えた。ヤギも数えた。アフリカイボイノシシも数えた。どの動物もことごとく役たたずだった。
ただ時が早く過ぎるのを悶々と祈っていても、消灯からおそらくまだ30分も経っていない。
もうなんもやることがない。寝返りすらうてない中で口の中の渇きと傷口の痛さが刻一刻と辛くなってゆくだけだ。飯の食いたさでそれなりに気が紛れていた夕食タイムが懐かしい。
気を紛らわす? そう、世の中にはそれに特化した素敵なガジェットがあったではないか。
その名はスマートフォン。ああ、しくじった! 手術室に連れて行かれる前に、あらかじめ枕の下にでもスマホを置いとくべきだった!

なまじスマホに心をときめかしてしまったばかりに、アレさえあればTwitterもできるのに、Webも見れるのに、YouTubeで動画見たりSpotifyで音楽聴いたりもできるのに、マリーンズスターカードのデイリーボーナスも受け取れるのにと、一層悶々とするハメになってしまった。
(スマホ、スマホ、スマホ、スマホ)と心の中で念じてみても、時が早く過ぎ去るわけではない。
同室の中で一番遅く就寝する人が枕元の灯りを消したようだ。ってことはまだ11時。宵の口もいいところだ。これから夜はひたすら長い。
ここまでよく頑張った。でももう肉体的にも精神的にも限界だ。

オレは決意した。なんとしてでも回診までの残り約10時間を潰すための道具、スマホを手に入れる。
スマホは確かサイドテーブルの二段目の引き出しに入れてあったはずだ。
ずるずると少しずつサイドテーブルに一番近い場所にまで身体を移動させる。足元のチューブが伸びてぎゅいぎゅいと悲鳴をあげ切ったばかりの傷口がズキズキ痛むが、そんなもんに構ってはいられない。
ベッドの格子の間から手を伸ばす。引き出しに手がかかった。窪みに人差し指をかけ、なんとかそれを開ける。

ここまではなんとか上手くいった。しかし引き出しの中で手の届かないところにスマホがあったら、そこでオレの企ては頓挫だ。
もうこれ以上身体は動かせない。いったん希望を見出してしまっただけに、手に入らなかった時のダメージはめちゃくちゃ重そうだ。
引き出しの中を精一杯に伸ばした指先で探る。スマホの手触りはない。やっぱりダメなのか。そう心が崩れ落ちそうになったとき、指の先端が紐状のなにかに触れた。
これは、……スマホのネックストラップだ!

しかし今は辛うじて指先がストラップの太い紐の端っこにかかるだけ。
手術を担当した外科医以上の細心さで、オレは撫でるようにストラップをミリ単位で手繰り寄せていった。
ここで指先がツルッと滑ってストラップが手の届かない場所に移動してしまえば、すべては水の泡と化す。
慎重に、慎重に。紐の手触りが少しずつ確かなものになっていく。そしてついに人差し指の第一関節にストラップが引っかかるようになった。
こっからいっきに! ずるっずるっずるっとストラップを引っ張る。その先には釣り上げた魚のように力なく回転する文明の利器スマホが。やった、ついにやった! これで朝まで気を紛らわすことができる!

やっとのことで手に入れたスマホで最初に開いたのはTwitter。
深夜のTwitter、そこは眠れないもの、昼夜を取っ違えた人たち、社会不適合者の吹き溜まり。しかし今のオレにとっては冬の大地の焚き火みたいな、とてつもなく暖かい空間だ。
好きだったアイドルグループの解散報告。うっそ、もうよりによってこんなタイミングで。
ボダラン3やってます報告。ふざけんな、このオレを差し置いて!
病みました報告。うんオレもそう! ガチで病みこじらせて今ここにいる!
あ、推しが久しぶりに自撮り画像あげている。おーれーのーきなこ!

……Twitterで潰せる時間にもさすがに限界はあった。
それでも数時間は経過しているのだが、まだ朝は遠い。
さすがに音を出すわけにはいかないので、ヘッドホンがない現状ではSpotifyやYouTubeは無理そうだ。
他になんかないか。そうだ、ゲーム!

とは言っても日常スマホでゲームをやる習慣がないオレだ。いまホーム画面にアイコンが踊るのは『Ingress』くらいのもの。入院の身動きできない体にこれほど向かないゲームも他にはないだろう。
ならばと開いたのはAndroidのPlayストア。
音も特に出す必要もなく、なんの前フリもなしに手軽に遊べるゲーム。ありふれたスリーマッチパズル!
検索窓に「マッチ3パズル」と打ち込み、出てきたアプリを適当にダウンロードする。
『Curse of the Pharaoh』。こんな事態にでもならなければ、一生遊ぶことのなかったようなゲームだろう。
しかし今のオレにとってはボーダーランズやフォールアウトを遥かに凌ぐ神ゲーであることは間違いない。
なんだかよくわからないブロックをスライドさせて、並べて揃えて連鎖連鎖連鎖。うわあい、楽しい楽しい楽しい!
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そうやってブロックを消す作業に没頭していたオレが、ふと我に返っったとき、目に入ったのはスマホの上部に輝くバッテリー表示だった。
残り10%を切っている。朝はまだまだ遠いのに、これではとても持ちそうにもない!
コンセントは手の届く範囲にあるが、肝心の充電ケーブルは遥か向こうのロッカーの中。いくらなんでもそこまで取りに行くのはさすがにムリだ。

さすがに詰んだのか……。いや、そう言えばモバイルバッテリーをサイドテーブルに入れたはずだ。確か上から三番目の引き出し!
チューブとか点滴とか完全にシカトして、ベッドから半分ずり落ちるような態勢になれば、なんとか手が届くかもしれない。
オレは意を決してベッドについた両手に力を入れた。
縫い合わせたばかりの下腹部の切開部分に激痛が走る。命とモバイルバッテリーの天秤。そんな考えもよぎったが、いいや、世の中には命を懸けるくらいでなければ手に入らないモノもあるのだ。
果たしてこの『Curse of the Pharaoh』が命を懸けるのに相応しいゲームなのか? そんな疑念を打ち払って、オレは上体を可能な限りこれでもかと伸ばすのであった。

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2019/09/21 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |