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2018/12/07 (金) カテゴリー: XBOX ONE

レーシングシムとかオープンワールド系とか色々あるが、とにかく車がメインのゲームに望むものは何か?
限りなく実車に近い挙動、いいねえー。テール・トゥー・ノーズのバトルが続くバランスの優れたレースモード、悪くないよ。旧車からハイエンドスーパーカーまで、めくるめく名車を網羅、最高じゃん。いささかオールドスクールな作法だけど、ボロ車に武装載っけて世紀末の荒野を暴れまくる、大好物だよ、それ。
だけど心の底から一番望んでいるのは、実はそれらじゃない。
大地を貫きどこまでも続く一本道。そこをクラフトワークの"ヨーロッパ特急"かなんかをBGMにひたすら走り続け、やがてうつらうつらと居眠り運転を始め、そのうちコントローラを抱えたまま寝落ちしてしまう。
みんなには理解してもらえないかもしれないが、オレの夢見る理想の車ゲームだ。

『Forza Horizon』は車ゲームとして完璧に近いポテンシャルを備えた名作だが、それに一つだけ大きな不満を述べるとしたら、それはタイトルに反して地平線が出てこないことだ。
『FH』シリーズのマップサイズは、郊外のマイルドヤンキーの行動範囲に極めて酷似している。
それはオープンワールドの車ゲームとしては、ある意味適正なサイズなのかもしれないが、やっぱり車ってのは日常の範囲を逸脱してどっか遠くに行くための道具でもあるじゃないか。

街は連続して存在しているわけじゃない。だだっ広い荒野に時々ぽつんぽつんと点在し、それが辛うじて道路によって繋がれている。
ダラスからひたすら南へ南へピックアップトラックを走らせる。
特にゲーム内での確たる目的や義務があるわけではない。ただなんとなくメキシコとの国境を目指しているだけだ。
右も左も地平線の景色の中で、やがてフロントガラスの向こうにぼんやりと浮かび上がってくる彼方の街。
ゲーム内マップで名前を確認する。ニューブラウンフェルズ。車を路肩に停めて今度はGoogleでこれから足を踏み入れる街の概要を調べる。毎年ソーセージ祭りが催されるドイツ系移民によって作られた街。
そのまま街に車を乗り入れると、中心部にはさっきGoogleマップで見た東屋が漠然と再現されている。

『The Crew』のマップは必ずしも北米大陸を忠実にトレースしているわけではない。州区分や大都市はともかく、細かい街の位置関係なんかは、マップのダウンサイズの関係上いびつにデフォルメされている。
それでもおおむねアメリカだ。広い広いアメリカだ。
『Forza Horizon』はその土地で開催されるフェスティバルにワンシーズン(4ではついに四季通じてになったが)だけ身を置く立場。『Test Drive Unlimited』はオアフ島という限定された地域に移住する立場。

ならば『The Crew』の立場は旅人だ。
前作の無印『The Crew』では「ワイルド・スピード」みたいなカーサスペンス、そしてこの『The Crew 2』では自意識モンスターたちによるSNS狂想曲というメインストーリー兼ゲームの導線は存在するが、ぶっちゃけそんなもん気が向いたときに義理で付き合うだけのものでしかない。
この広い北米大陸を自由気ままにさすらうジャーニー。それがこのゲームにおけるオレの唯一無二の目的だ。

そんなオレのジャーニーマン気分に水をぶっかけるのが、今作からのコンティニュー時に問答無用にマイアミにある自宅に戻されるとんでもない仕様。
あのな、オレはシアトルで旅を中断したらまたシアトルから、ビッグサーで旅を終えたら再びビッグサーから旅を再開したいんだ。
セレブリティ感満載の自宅なんか要らないんで、頼むからそこらのモーテルかガソリンスタンドで途中経過をセーブさせてくれっつうの。「地獄のモーテル」の舞台みたいな胡散臭いところでも構わないから!
前作からそのまま引き継がれた、楽しさをまったく見出すことのできないレースイベントを含め、どうもこのシリーズの開発は1作めで好評だったところ、不評だったところをまったく理解できていない節があり、そんなところはどことなく『Test Drive Unlimited 2』をデジャブさせたりもする。

でもなんだかんだ言いながら『TDU2』をけっこう楽しんでいたように、オレはこの『The Crew 2』にも入れ込んでいる。
洗練されたゲームじゃない。ぶっちゃけデキの良いゲームじゃない。魅力あふれる素材に悪趣味なソースをぶっかけまくったようなゲーム。レビュー的に表現すると『The Crew 2』はそんな一言で終わってしまう。
だがこの素材は最高なんだ。オレは上にふんだんにかけられた悪趣味なソースを選り分けて、ひたすら素材を貪り続ける。
明日は南部を離れてベガスを経由して北西部を目指そうか。何ものにも囚われずただただ車を走らせ続ける。これ以上の快楽がこの世に他にあるだろうか?
(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2795.html
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2018/12/29 (土) カテゴリー: XBOX ONE

ニューヨークとワシントンの次に覚えたアメリカの都市名。それはアマリロだった。
テキサス州の北にぴょこっと飛び出したところにある街。普通に暮らしている日本人なら、まず縁がない場所だろうが、プロレス雑誌を貪るように読んでいたガキにとっては特別な響きを持つ地名なのだ。
アマリロ。そこは人懐っこく陽気なテキサンばかりが暮らす街。
そして街外れにはファンク一家の牧場があり、愛馬にまたがったテリー・ファンクが底抜けの笑顔と共に出迎えてくれる。
牧場の脇ではテッド・デビアスとディック・スレーターが忙しそうに干し草を積み下ろしし、家の中ではジャンボ鶴田とスタン・ハンセンが日本から送られてきたインスタントラーメンを仲良く分けあっているのだ。
ファンタジーなんかではない。それは間違いなくアマリロの現実の風景だ。ゴングや週刊ファイトが今まで嘘をついたことがあっただろうか。

小学生の頃のオレは妙にアメリカの地名に詳しいガキだった。
ミネアポリス、ダラス、セントルイス、カンザスシティ、デトロイト、メンフィス、サンアントニオ。小学校で習うはずもないアメリカの都市名をすらすらと諳んじることができた。
もちろんそれらについての知識が偏りに偏っていることは言うまでもない。
ミネアポリスの帝王はバーン・ガニアでダラスを仕切っているのは"鉄の爪"フリッツ・フォン・エリック。メンフィスは流血を厭わない荒っぽい風土でセントルイスは世界最高峰のプロレス組織の総本山。それ以外のことはまったく知らないが、なんの不都合があるだろうか。

『The Crew 2』はプロレスゲームだ。
なんてことを言うと「何を言ってるんだお前は」などとツッコミが入りそうだが、プロレス者にとっては何もリングの中の事象だけがプロレスではない。
マサ斎藤、ザ・グレート・カブキ、ミスター・サクラダ(ケンドー・ナガサキ)といったアメリカを根城としていたレスラー。
彼らのインタビューや自伝などで頻繁に出てくるのが、アメリカにおける移動の過酷さやそのよもやま話。
次の会場がある都市までの長い長い道のりを、試合後の疲れた身体で自らハンドルを握り踏破する。
時には(あるいはしょっちゅう)酒やXXXをかっ喰らいながら運転したり、戯れに道端の標識やサボテンめがけてピストルを乱射したり、そんな狼藉で長時間移動の気を紛らわせながら次の街まで辿り着く。そこで待っているのは真新しい観客と見飽きた対戦相手。
『The Crew 2』はそんな一匹狼レスラーたちのライフスタイルをなぞることができるゲームでもあるのだ。これがプロレスゲームでなくてなんだと言うのであろうか。

「フロリダは景気が良いし移動も楽だぜ」
マサさんはそう言って鍾馗さまのような表情を崩し笑っていたが、ぶっちゃけそんなことはない。マイアミからジャクソンビルまで、あるいはタンパまで、車を走らせればそれなりの時間はかかる。
今日の目的地はタンパ。
この地区における有力な興行地の一つだが、プロレス的にはもっと重要な意味を持つ街だ。
ここは"プロレスの神様"カール・ゴッチが終の棲家を構えた街。郊外の一軒家で、人を平気で食い殺しそうな猛犬と共ににこやかな顔のゴッチさんの姿を、プロレス雑誌のグラビアで見たことのある人は多いだろう。

タンパの街外れにそれっぽい一軒家を探して外からゴッチさんに黙礼し、次にアクセルを踏み込んで向かうのはテキサス州ダラス。
WWF(現WWE)の全米侵攻前、アメリカンプロレスにまだテリトリー制が辛うじて残っていた頃。エリックランドの異名を持つこの街はエリック兄弟やフリーバーズ、カブキにジャイアント・キマラといったドル箱レスラーたちが一堂に会する黄金テリトリーだった。
「ダラスは稼げる」
カブキさんの一言を当てにしてのテリトリー移動だ。もちろんタンパからダラスまで長い移動になることだろう。

ダラスでうまく行かなかったら、ジェリー・ローラーがスーパースターとして君臨するテネシー、AWAエリア、セントラルステーツ地区。
オレの脳内で1980年代後半で時を止めたアメリカには、まだまだ無数のプロレスローカルエリアが息づいている。
移動距離は長いが道は必ずどこにでも繋がっている。
『The Crew 2』。それは古き良きテリトリー制の残るアメリカンプロレスを巡礼するジャーニーゲームでもあるのだ。
この記事に含まれるtag : レーシング オープンワールド プロレス
(記事編集) https://bonkura360.blog.fc2.com/blog-entry-2797.html
2018/12/29 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |