- コンビニムック【昭和プロレス名勝負列伝】 [2010/09/05]
- 【ニード・フォー・スピード アンダーカバー】 [2010/09/07]
- 【湾岸トライアル】湾岸シリーズの頂点 [2010/09/08]
- Vシネマ【Zero WOMAN Ⅱ ~警視庁0課の女~】 [2010/09/09]
- 【FUEL】ゆっくり急げ [2010/09/10]
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手元に"昭和プロレス名勝負列伝"というコンビニムックがある。
今から約2年前に出版された本で、別冊宝島のプロレス読本シリーズを再構成した内容。
書き手も井上義啓や杉作J太郎から、ターザン、ナガレトモミ、ヤスカクと、それこそピンからキリまでなのだが、ついこないだ読み返してみたら、やはり井上義啓元ファイト編集長が書かれた記事が、べらぼうに面白い。
この本、前半は昭和プロレスタイトルマッチBEST20、後半は昭和異種格闘技戦BEST20の二部構成なのだが、その後半で井上編集長が取りあげた試合が、なんとアントニオ猪木とキム・クロケイドのWWFマーシャルアーツ世界ヘビー級タイトルマッチなのだ。

猪木対クロケイド。後付けで猪木の一連の異種格闘技戦を観た俺にとっては、失笑しか湧いてこない試合である。
いや、当時リアルタイムで観た人たちだって同様だっただろう。
キム・クロケイド。カナダの現職警察官にして、全カナダカラテトーナメント優勝者という触れ込みのカラテマン。
本当の事しか描いていない傑作実録劇画"四角いジャングル"の中で、彼は華々しい登場を果たす。
カナダのプロレス試合会場。タイガー・ジェット・シンの控え室に居座る黒い胴着の男。
怒りのシンがサーベルの一撃を繰り出すと、黒い胴着の男は肘打ちと膝蹴りの複合技で、なんとこのサーベルをポキリとへし折ってしまう。
「そのクロケイド("四角いジャングル"中ではクロケード表記)という男のカラテは本物ですわい」
このエピソードを聞いた"格闘技の鬼"黒崎健時会長は、クロケイドの実力に確かなお墨付きを与える。
そんな実戦カラテの実力者が、アントニオ猪木に敢然と挑戦状を叩き付けた!

少年マガジン連載の劇画でそんな華々しいデビューを飾り、しかも黒崎先生にそんなセリフまで言わせて持ち上げた、このカナダの実戦カラテマン。
よほどの実力者を連れてこなければ、黒崎先生の顔を潰して大変なことになってしまう。ああ、しかし、新日本プロレスは、そんな黒崎先生や梶原一騎先生に対する配慮なんか微塵も払わず、このカナダ人空手家の中身の選定とブッキングを、カルガリー在住のミスター・ヒトに一任してしまうのであった。
後に長州力の異種格闘技戦の相手として、トム・マギーという香ばしい奴を連れてきたりしたミスター・ヒト。
「ミスター・ヒトの連れてくる奴は、どれも限りなく胡散臭いが、ミスター・ヒト自身はもっと胡散臭い」
そんな定説をプロレスファンに深く植え付けているヒトさんだが、そのルーツはこのクロケイドにあった。

劇画と同じ黒い胴着に身を包んだクロケイドであったが、その佇まいからは実戦武道家のオーラは微塵も感じさせない、劇画のイメージとはおよそほど遠い野郎であった。
時折繰り出すサイドキックは足が上がらず(このへっぽこな蹴りを「距離を測ってるんですよ」とフォローする、山本小鉄さんのストロング解説!)、その肘打ちは足を大きくマットに踏み出して音を立てるプロレス風のエルボー。
おまけに嬉々として自分から場外乱闘に走り、猪木の攻撃を喰らえばしっかりと受け身をとる。
どっからどう見ても単なるプロレスラー。しかも日本では全く顔が知られていなかったから、要はカナダの相当なローカルの三流レスラーに、無理矢理胴着を着せて日本に連れてきただけのことなのだ。
後に大仁田厚がFMWで乱発して、我々をさんざん微笑ませてくれた手法なのだが、しかしそれをこの生真面目な昭和プロレスファンたち。しかも猪木と極真カラテの対決が風雲急を告げるこの時期に用いるとは、新日本プロレスも相当いい度胸している。
そんな凡戦以前の問題の、猪木本人ですら忘れたいくらいの迷勝負。しかしストロングスタイルの見巧者である井上編集長の、この試合を見る目は違った。
キーワードは、編集長お得意の”殺し”である。当日のクロケイドの佇まいからは、確かに”殺し”は感じられなかった。しかし、本当にクロケイド自身に”殺し”は無かったのか!?
我々がもしそう問われたら「……ありませんよ」と冷静な顔をして答えるところだが、しかし井上編集長がこの質問をぶつけた相手は、本当の事は何にも分からない我々のようなボンクラシュマークではない。
当日、この試合を裁いた日本正武館の鈴木正文館長に直接ぶつけたのだ。クロケイドはこの試合前に、正武館で鈴木館長自らの教えを受けたという経緯があったのだ。
「館長、クロケイドに”殺し”はありましたか?」
その問いに、笹川良一先生の腹心として数々の修羅場を潜り抜け、その合間に映画にも出演し、スクリーンというあちらの土俵にも拘わらず、あの千葉ちゃんすらも倒した剛の者、鈴木館長は明快に答える。
「ありましたよ」
!?
「ただしクロケイドが修羅場を潜ってきたのは、彼が10代から20代にかけての話。今は家庭のある身ですから、彼が”殺し”の片鱗を見せなかったのは当然です。だけど私は彼が本当に喧嘩をさせたら怖い男だと見抜きましたよ」
ここで「正武館が関わった興行の試合だから、リップサービスが入っただけなんじゃないですか?」などと指摘してはいけない。
虚と実が見事に入り交じったストロングスタイルのやり取り。プロレスや武道、格闘技界が、まだ底の見えない底なし沼だった頃を渡りきってきた人たちは、今の干上がった枯れ地のようなプロレス・格闘技界しか知らない我々とは、やはりレベルが違う。
こんな一見凡戦以前の迷勝負ですら、彼らの手にかかると底の見えない試合になってしまうのだ。

試合前、リングの上に立ち並ぶ猪木、クロケイド、ヒト、鈴木館長、サブレフェリーの遠藤幸吉、そしてコミッショナーの二階堂進代議士。
このこってりとした面子を見るだけで胸焼けしそうだ。リング上で笹川良一の腹心と、田中角栄の参謀が肩を並べているのだ。この頃の新日本プロレスが、いかに底なし沼であったかの証明のようなメンバーではないか。
あ、それと、この試合のラスト。猪木のギロチンドロップを喰らってぴくぴくするクロケイドの痙攣っぷりは、ジャンボ鶴田、テリー・ファンクと並ぶ”プロレス三大痙攣”に入るほどの、味わい深いぴくぴくだと思います。
"四角いジャングル"作画担当の中城健さんも、このぴくぴくは結構お気に入りだったんじゃないでしょうか。心なしか絵にも力が入っているようです。
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2010/09/05 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
無表情で男どもを蹴っ飛ばしまくるスレンダーなキリングマシーン。
『ダイ・ハード4.0』(まあこの映画自体は、実に惨憺たるデキだったけど。何しろこの映画って脚本が酷いよ!)でそんなイメージを完全に確立し、いよいよ大ブレイクかと思いきや、その次なる出演作に卓球版燃えドラ『燃えよ!ピンポン』をチョイスしたマギーQ。
細身な女アサシンのイメージがこびりついてしまうことを避けたのかもしれないが、それにしたって、よりによってダン・フォグラー(『ファンボーイズ』のあのむさいデブだ)とロマンスに陥る役を選ぶのは、いくらなんでも極端すぎないか。まぁ『燃えよ!ピンポン』面白かったけどさぁ……。
そんな彼女の最新作は、あの『ニキータ』のTVドラマ版リメイク。……結局は無表情な女アサシン役からは、逃れられない運命なのね。

傑作モスト・ウォンテッドで頂点を極めたものの、その後、カーボン、プロストリートと、方向性が定まらず迷走を続けたニード・フォー・スピードが、原点回帰を目指したこのアンダーカバーのメインキャストが、そのマギーQ。
走り屋世界に潜入する囮捜査官という設定は、NFSシリーズに大きな影響を与えた映画『ワイルドスピード』の一作目そのままだ。
マギーQは、潜入捜査官であるプレイヤーに指示を与える上司という設定。

公道レースゲームと実写ムービーの融合と言えば、走りに応じて実写のグラドルたちが靡いてくれる湾岸デッドヒートが、嫌が応にも頭に思い浮かんでしまうが、その流れでこのゲームが、良い走りを見せるとマギーQが「なかなかやるじゃないか。これはご褒美だよ、この豚!」と、プレイヤーを蹴っ飛ばしてくれるゲームだと期待してはいけない。
もっとも、こちらに蹴りを入れはしないものの、ゲーム中では、マギーQから始終怒られっぱなしになるので、M属性の方の欲求は、ある程度叶えてはくれるのだが。

だけどこのマギーQが登場するムービー部分と、ゲーム部分の整合性が全く無いのが、このゲームの最大の欠点。
何よりプレイヤーのポジション、任務、状況というのが、ムービー内で全く説明不足なので、マギーQが一方的に不機嫌に喋りまくるムービーを受け身で眺めた後、自分の置かれた立場を全く理解できないまま、ただ目の前のレースやチェイスミッションを訳も分からずこなすだけという、一向に盛り上がらない流れになってしまうのだ。
何で俺、公道レースなんかやってるの? 何で俺、自動車窃盗団の片棒担いだり、そして連中とハイウェイでチェイスしたりしてるの? 何で俺、刑事なのにパトカーに追い回されているの? それよりも何よりも、何でマギーQは、こんなに終始不機嫌なの? 例え俺が意味不明なミッションを成功させようが、愛想笑いの一つも見せやしねえ。
まぁ終始不機嫌無表情なのは、マギーQだからと言われればそれまでなんだけどさあ。

自動車窃盗団に潜入した囮捜査官として、時には警官たちに追いかけ回され、そして時には窃盗団のメンバーたちを追いかけ回す。
ただモスト・ウォンテッドに原点回帰するだけではなく、今度は新たにこちらが相手を追う要素を付け加えて新たな地平を開こうとしたんだろうけど、この窃盗団を追うミッションが、相手の耐久度が無駄に高く、常にぐだぐだな展開となるのだから、そのたびに嫌になってしまう。
何より、走り屋としての自分のポジションとゲーム世界が明確にリンクして、プレイにメリハリを与えていたモスト・ウォンテッドと違って、囮捜査官という黒でも白でもない曖昧なポジションが、ゲームの設定やストーリーに対する感情移入を大きく阻むのだ。
刑事であるにも拘わらず、何の葛藤もなくパトカーを潰しまわり、そして潜入捜査官ものにありがちな、犯罪者たちに対する奇妙な心移りといったような描写も全く無い。

このアンダーカバーの実写ムービーパートで繰り広げられていることは、プレイヤーとは全く関係ない地平で行われている出来事にしか思えないのだ。
ムービーパートがそのようにゲームを牽引する力に欠けていると、プレイヤーはただ何の盛り上がりもないまま、漫然と各ミッションをこなすだけに終わってしまう。
オープンワールドレースゲームとしての基本部分は、モスト・ウォンテッドの流れを受け継いで良く仕上がっている。
つまり、例え漫然とでもそれなり遊べちゃう内容だし、B級レースゲームとして割り切ってしまえば、何となく納得できてしまうレベルではある。
だけどニード・フォー・スピードの看板てのは、70点くらいのデキで満足してしまうような安っぽいものではないと思うんだけどなあ。
そんな訳で、結局は迷走から抜け出せなかったNFSシリーズ。このシリーズが光明を再び見いだすには、次作のシフトを待たなければならなかった。
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2010/09/07 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
湾岸デッドヒート、同リアルアレンジと続いたパック・イン・ソフト湾岸シリーズの第三弾は、プラットフォームをプレイステーションに移しての登場。
湾岸デッドヒートの無名グラドルたちが、リアルアレンジではそこそ名の通ったグラドルたちに代わるなど、シリーズを重ねるごとに徐々にグレードアップするこのシリーズだが、本作では出演キャストがさらにパワーアップ。
加藤あい、小沢なつき、長谷川京子、嘉門洋子、児島玲子と、この面子で遅い時間帯のテレビドラマが一本作れちゃうくらいの、この色物シリーズには似つかわしくないほどの豪華メンバーです。

しかも、リアルアレンジの時みたいな、やっつけ仕事のスタジオ撮影実写映像ではなく、きちんとロケをした、ストーリー性を持つドラマムービー。
この本格的実写ドラマが、シリーズ恒例である公道コースでのレースパートの間に挟み込まれ、プレイヤーの走りを盛り上げてくれるのです。
このムービーパートを監督したのはサトウトシキ。
かつて、瀬々敬久、佐藤寿保、佐野和宏と並んでピンク四天王と称され、ポルノの枠を超えたピンク映画を数々送り出し、現在ではミニシアター系の一般作なども手がける監督さんです。

そんなサトウ監督の手による、5人のヒロインを綴った5つのオムニバスストーリー。
旧友の妹、メカニック、レースクイーンなど、走り屋である主人公に関わる立場は様々ですが、公道レースからサーキットレースにステップアップして行く主人公を見守り、案じ、励ましていくという流れは基本的に同じ。
とにかくこのムービーパートが、このままVシネマにできるんじゃないかというくらい、本格的なもの。
サトウトシキの職人的な技量もあって、その絵作りの確かさは、そこらのテレビドラマなんかの比じゃありません。

そんな豪華キャストによる本格的ドラマムービー。
グラドルたちがスタジオの中で、おざなりな褒め言葉を投げかけるだけに終わっていたリアルアレンジからは、大きく進化した内容ではあるのですが、しかしこの湾岸シリーズには、ムービーパートの進化に対して、肝心のレースゲームパートがちっとも進歩しないという、もう一つの大きな特徴もあるのです。

初代湾岸デッドヒートのレースゲーム部分は、当時でも相当に酷評された筈なんですが、そんなことには一切目をつむり、手を加えるそぶりなどこれっぽっちもみせないという、ある意味開き直りとも言える潔さ。
いや、それどころか、デバイスがプレステのコントローラーに代わった(アナログモードには未対応)この湾岸トライアルは、湾岸デッドヒート以上にレースパートのデキが悪くなっているかもしれません。

しかもデッドヒートやリアルアレンジの、おざなりなグラドル実写ムービーならまだしも、間に挿入されるのがこの本格的な実写ドラマだと、そのレースゲーム部分のへっぽこっぷりが余計に際立つハメに。

実写パートの大胆な進化と、全く進歩しないレースパート。今後もその路線を究めていくかと期待されたこの湾岸シリーズでしたが、残念なことに、サターンに舞台を戻した次作湾岸トライアルLOVEでは、なんと実写ムービーを捨てて二次元萌え方面に路線変更するという、時流に媚びた堕落っぷりを晒すことになってしまったのでした。
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2010/09/08 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
日曜朝9時と言えば、子供たちや大きなお友達がメイン視聴者層の、言わば”朝のプライムタイム”とも言える時間帯。
フジテレビでは”ドリーム9”の名称の元に、今ではアニメ作品を放映する時間帯になっていますが、それ以前のこの時間帯では、東映不思議コメディーシリーズと呼ばれる実写ドラマを放映する枠でした。
『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』『美少女仮面ポワトリン』『有言実行三姉妹シュシュトリアン』なんてタイトルが並ぶこのシリーズの中で、良い意味でも悪い意味でも名の知られている作品が、1989年に放映された『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』。
人気を得たにも拘わらず、当初の予定にも満たない僅か半年間の放映で打ち切られてしまった悲運の番組です。

その打ち切りの理由は、主演のアイドル小沢なつきが、撮影をほっぽり出してマネージャーと駆け落ちまがいの失踪をしてしまったという前代未聞なもの。
番組はただちに打ち切られ、設定をそのまま受け継いだ新番組『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(主演は島崎和歌子)が急遽制作されるという、ばたばたした事態になったのでした。
これからの飛躍を嘱望されていた小沢なつきでしたが、こんな騒ぎを起こしては、もちろんアイドルとしての生命を完全に絶たれたのも同然。このま仕事を干され、芸能界から姿を消してしまいます。

そんな小沢なつきがヘアヌードという起死回生の手段で芸能界にカムバックしてきたのは、それから約4年後のこと。
しかし、いくら復帰したとは言っても、そのような前歴を持つ小沢なつきに華々しい舞台が用意される筈はなく、自然とその仕事はVシネマを中心とした、いささかやさぐれたフィールドに限られてしまうのでした。
だが、20才にもならないうちに「全てを捨てて駆け落ちしようとしたら、待ち合わせ場所に相手が来なかった」という、凄まじい修羅の道を経験してしまった小沢なつき。
Vシネマ仕事でスクリーンに晒される彼女を姿からは、演技を超えた女の修羅が、常に垣間見えていたのでした。
その修羅の淵からこの人を救い出したい。しかし、うっかり手を差しのばせば、間違いなく自分もその修羅の中に引き摺り込まれてしまうだろう。
観る者にそんな妄想を抱かせる危うさ、痛々しさ、業の深さ、そして何とも言えない場末の雰囲気。
それらを振りまくこの時期の小沢なつきからは、そのアイドル時代からは想像もつかない、安っぽい妖しさに満ち溢れていたのです。

篠原とおるのコミックを原作に持つVシネマ、ゼロウーマンは、'90年代の後半にカルトな人気を誇ったシリーズ。
このシリーズの特徴は、少し前にちょっぴり名の売れたアイドルに、主演と引き替えに脱ぎやハードな絡みを課すという、いささか残酷なものでした。
第1作の飯島直子を皮切りに(ただしこの1作目は、それほどハードな絡みシーンは無い)、武田久美子、大野幹代(元CoCo)、立原麻衣、白鳥智恵子といった面々がこのシリーズに出演してきました。
篠原とおるのやさぐれたテイストを根底に持つこのシリーズと、”修羅の女”小沢なつき。両者の邂逅は必然であったと言えましょう。
小沢なつきが出演したのは、飯島直子編に続くシリーズ第2弾。そして、ゼロウーマンシリーズ中、最高傑作は、紛れもなくこの小沢なつき編でしょう。
他のゼロウーマン主演女優勢には太刀打ちできないほどの、小沢なつきの凄絶な修羅は、それくらい篠原とおる世界と見事にシンクロしているのです。

暴力団、汚職刑事、中国人のチンピラたちが三つ巴で奪い合う株券争奪戦に、小沢演じる警視庁ゼロ課刑事が挑み、男に惹かれ、抱かれ、裏切られ、痛めつけられ、最後は男の股間を撃ち抜き因業な死を与えるという、篠原節溢れる世界ですが、三陣営それぞれにキャストがいい味を出して、このB級ジャパニーズノワールの世界にどす黒い花を添えています。。
暴力団組長役の団時朗は双眼鏡マニアというキッチュな設定。汚職刑事役の菊地孝典は、藤岡弘から脂を抜いてさっぱりさせたような印象。
そして中国人チンピラコンビを演じるのは、ケイン・コスギと、山崎邦生の元相方である軌保博光。
後先考えず青竜刀を振り回し、最後は文字通り自ら墓穴を掘る軌保博光が、、実に生き生きして躍動感に溢れています。
そして物語の終盤では、ケインとユキオ・ヤマト(代表作は『ZIPANG』)の素手での一騎打ちというドリームカードも実現。
ユキオ・ヤマトを圧倒するケインの体技は、さすが見応えがあります。

そのケインと並んで小沢なつきがアクションを披露するという、ある意味とても残酷なシーンもあったりしますが、まぁこれはケインにだけ注目して小沢さんの姿はなるべく観ないようにしてあげましょう。
そんなあらゆる意味で体当たりな小沢なつきの熱演が報われ(鼻からお薬を吸引するシーンのはまりっぷりは、半端ではない)、ゼロウーマンシリーズ屈指の、そして第2期小沢なつきの集大成とも言える作品に仕上がった本作。
しかし、そんな奮闘も虚しく、次作『アタシはジュース』を最後に、小沢は再び業界からフェイドアウトして行きます。
そして数年後、彼女は思いもよらぬ形で表舞台に再び姿を現し、さらなる修羅の道を突き進んで行くことになるのですが、その話についてはここでは触れないでおきますね。
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2010/09/09 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
狂わんばかりの暑さも少しずつなりを潜め、居座り続けていた夏がようやく去らんとしている。
そんな少しばかり遅い夏の終わりと共にオレも『Test Drive Unlimited』のオアフ島を離れて、またあの『FUEL』のだだっ広い不毛な荒野に轍を刻む場所を移す。
オアフ島の開放感溢れるオープンワールドと比べると、この『FUEL』の荒野のどこまでも果てが無い広さに押し潰されそうな息苦しさは、また独特の味わいだ。

既にフリーライドで620マイルを走行すると解除される、"大旅行家"の実績を解除して久しいというのに、オレはまだこの広大な大地の半分もアンロックしていない。
オレがあの地平線の遙か彼方に辿り着くのは、果たして何年越しの事業になるのだろうか。
そんなペース、そんなスタンスで付き合うゲームが、一つくらいあってもいい。そして『FUEL』はまさにそんなゲームなのだ。
そんなオレの孤独なドライブ中に、カスタムサントラから鳴り響くのは、JAGATARAの"岬で待つわ"だ。
現実世界でも極上のドライブミュージックとなるJAGATARA。彼らのご機嫌なお茶漬けファンクをバックに走ると、首都高速が、第三京浜が、いつもと違う景色、いつもと違う道程になる。
それはこのFUELの荒野でも同様だ。

どこまでも続く乾いた大地。どこまでも続く荒れ果てた谷間。
どこまでも、どこまでも、この風景は延々と続くのではないかという不安を、江戸アケミは「どこまで行っても同じ事。どこまで行っても出口知らず」と、さらに煽り立てる。
そんな不安と孤独に押し潰されそうになりながらも、右手はなおもアクセルを開き続ける。
この孤独な大地にねじ伏せられそうな心を奮い立てるには、ただ闇雲に走り続けるしかないのだ。

♪ スピード さらにスピード もっとゆっくり急げ
スピード もっとスピード さらにゆっくり急げ
痛みきったタイヤが、ぼろぼろに崩れたアスファルトの上で乾いた音を立てる中、江戸アケミは「ゆっくり急げ」と、まるで狂人の交通標語のように矛盾した言葉を歌い上げる。
だけど『FUEL』の気が狂わんばかりに広大な荒野に身を委ねる者にとっては、それが矛盾ではないことを知っている。
この果てを知らない大地の上では、内燃機関が叩き出すスピードなど児戯に等しい。いくら意気込んでアクセルを踏み込み、最短距離を突っ走ろうが、そんな行いは象に噛みつく虱のようなものなのだ。
この広い大地にも必ず果てはある。焦らずにいれば、いつかはそこに辿り着くことができる。
だから「ゆっくり急げ」。刹那的なスピードは、いつかは萎える。この魂の耐久レースに必要なのは、JAGATARAのグルーブ感のような「ゆっくり急ぐ」スピードなのだ。
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