このページの記事目次 (カテゴリー: 3DO)
- 【鉄人】マルチメディア時代のプロトFPS [2020/06/13]
- 【平田昭吾インタラクティブ絵本 シンデレラ】 [2017/12/15]
- 【三國志Ⅳ】第一次過渡期三國志 [2017/12/04]
- 【マリンツアー】マルチメディア海底地図 [2017/09/02]
- 【ピーター・フランクル パズルの塔】数学と大道芸 [2017/08/03]
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うちのカーナビは起ち上げるたびに「今日は**の日です」といちいち教えてくれるおせっかいな機能がついているのだが、そんな"何の日"版林家ペーと化しているカーナビさんによると、今日6月13日は「鉄人の日」。
まぁなんとなく見当はついたが、それでも一応調べてみると、やはり鉄人の異名をとった元広島東洋カープの衣笠祥雄選手が連続出場の世界記録を達成した日にちなんでのことらしい。
しかし野球から離れれば、それぞれのジャンルに於いて鉄人の定義はおのずと違ってくる。プロレスファンにはルー・テーズこそが鉄人だろうし、自転車好きにとってはランス・アームストロングだった(ここは過去形)であろう。
道場六三郎や陳建一あたりも鉄人であることは間違いないし、社長の超高機能スーツも直訳すれば鉄人だ。
そして3DOユーザーにとっては、鉄人と言われればこの3DO初期タイトルに他ならないのであった。

これをリリースしたシナジー幾何学は90年代に主にマルチメディアCD-ROMを中心に開発していたメーカー。
まだWindows95すら発売されていなかった時代から、当時としては先鋭的なCGアートにインタラクティブ性をもたせたソフトで異彩を放っていた。
代表作は後にプレイステーションにも移植された名作『GADGET』。
そんなシナジー幾何学とマルチメディアを旗頭とする3DOの接近は必然だったのか、3DO REAL本体発売からわずか半月後、この『鉄人』は早々と登場したのであった。

ゲームをスタートするといきなり現れるのが実写ムービーの怪優嶋田久作演じるマッドサイエンティスト。
あのいまいち明瞭でない語り口で、不細工な機械の体に変貌させられてしまった現在のシチュエーションを厳かに告げてくれる。
このシチュエーションがまたさっぱり要領を得ないのだが、まあこの曖昧模糊とした環境は、インダストリアルな音楽やビジュアルデザインと並んでシナジー幾何学のお家芸みたいなもの。少なくとも『GADGET』はそんなシチュエーションの中を彷徨うのが奇妙に心地よいソフトだった。
だがCGアートにほのかなインタラクティブ性を持たせただけの『GADGET』と違って、この『鉄人』は明確にアクションゲームとしての体裁を志向した作品。
しかしマルチメディアというある意味都合のいい言葉から離れて、より純粋なゲームに近寄れば近寄るほど、シナジー幾何学の弱点は露呈していくのであった。

まだファーストパーソンシューティングという言葉も生まれていない頃。『クライムクラッカーズ』や『キリーク・ザ・ブラッド』など、国産のプロトFPSには『DOOM』をちょっと変な形で解釈してしまったようなゲームがやたらと目立った。
むしろ3DダンジョンRPGからの影響の方が顕著だったかもしれない、『DOOM』にあった醍醐味がばっさりと欠如していたこれらの国産プロトFPS。『鉄人』もその中の一つだ。
そして元々がゲームらしいゲームを得手としていないシナジー幾何学。アクションゲームとしてのレスポンスは最悪もいいところで、画面移動は常にガクガクする始末。
これにインダストリアルな質感の迷宮を彷徨うバーチャル悪夢のような本来のコンセプトが逆シナジー効果をもたらして、終始3D酔いに悩まされ続けた。

アクションロールプレイングムービーという自らに冠したジャンル名が、マルチメディア的なCGアートに強引に3Dシューティングを折衷したこのゲームの特異性と、結局はまとまりがつかなかったそのコンセプトを物語っているかもしれない。
そして3DOがマルチメディアを高らかに標榜して世に出た90年代中期は、実はマルチメディアの言葉のマジック自体が下り坂に入っていた時期だったのもまた事実で、シナジー幾何学は本作のリメイクである『Tetsujin RETURNS』を出した後、その役割を終えたかのように解散へと向かったのだった。
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2020/06/13 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
古くから伝えられてきた寓話は、その高い教訓性を買われ残酷や風刺的な要素を削ぎ落としながら、次々と童話にコンバートされてきた。
そのうちのいくつかは、ゲーム機が子供のいる家庭に居座る大義名分が立つことからか、ゲームソフトとして幾度もお目見えした。
中でもその数が抜きん出ていたのは3DOだ。
決して多いとはいえない3DOのソフトラインアップ総数のうち、児童向けの童話ソフトは実に9本。
いかに3DOが子供の情操教育に真摯なハードであったかを物語る数字だろう。決してその倍以上18禁エロソフトがあるだろうとかツッコんではいけない。

その童話ソフトの大半を占めるのがエルコムから発売された『平田昭吾インタラクティブ絵本』シリーズ。
平田昭吾氏は小学校の図書室なんかで幅を効かせていた、古いアニメ絵調の絵本を一手に引き受けていた人物。
3DOで展開したこのシリーズは、まあそれのマルチメディア版みたいなものだ。

シンデレラ、あるいは灰かぶり姫として知られる古い民話は、国や時代によって様々なバージョンが語り継がれてきたが、我が国でもっとも通りがいいのはシャルル・ペローの手によるバージョン。
この3DO版『シンデレラ』も、やはりペロー版を元にしている。
一部アニメーションする絵をバックに日米仏三ヶ国語の朗読が流れる"テレビで見る絵本"。この体裁はインタラクティブ絵本全作に共通したフォーマット。

今の時代なら思わず「継母withB」とツッコまずにはいられない立ち位置を崩さない義姉たちは、他のバージョンの伝承ではセルフ纏足に走ったり鳥に両目を潰されたりと、因果応報な目に遭うのだが、それを「こころやさしいシンデレラはお姉さんたちをゆるしてあげました」と丸く収めてしまうのが、庶流、あるいは正統を差し置いて、後々の世までスタンダードして語り継がれる寓話の処世というものなのであろう。
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2017/12/15 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
コーエー三國志。長きに渡る同社のドル箱で、ナンバリングタイトルは13を数える。
30年以上にも及ぶ歴史には、様々な変遷やユーザー層の入れ替わりもあった。
個人が思い入れを持つシリーズ作も、これまた様々だろうが、オレの場合は1994年に発売された『三國志Ⅳ』。
Ⅳが一番好きって言うと、たいていの場合「え、なんで?」と疑問が返ってくるのだが、しょうがねえだろ、3DOで出た三國志はこれ一本しかないんだから。

コーエー三國志はその長い歴史の中で過渡期を幾度も迎えているが、この『三國志Ⅳ』は第一次過渡期とも言える作品。
その過渡はゲーム内容だけに留まらない。これが出た1994年はコーエーにとって最大のお得意様となっていたコンシューマ市場が、大きな変遷を迎えようとしていた時期でもあった。
ゲームハードの過渡の影響もあって、『三國志Ⅳ』は旧世代機であるスーパーファミコンから、新世代機のサターンとプレイステーション。そしてその中間に位置する3DOと32Xにまでまたがってリリースされたのであった。
もちろん32X版も3DO版と同様、これが同ハードで出た唯一の三國志である。

その過渡におけるもう一つの産物が、恐らくROMカセット機との差異をつけようと思ったのか、実写ムービーの導入だ。
この要素は同時期に出た『信長の野望 覇王伝』や『ウイニングポスト』でも試みられていたが、『三國志Ⅳ』の場合はさすが中華大陸。スケールが違う。
オープニングムービーは長江に浮かぶ軍兵を満載した大船団。CGなんかではない。ガチ船にガチエキストラ。
それもそのはず。この映像の大元は中国の国営放送局が国家プロジェクトの扱いで制作した連続ドラマ「三国志演義」。
エキストラの数だけでも官渡における袁紹軍の動員を凌ぐ、世界の歴史ドラマ史上でも屈指の超大作。

それがどんな縁があってコーエーゲームに流用されることになったのかは知らないが、とにかくOPムービーに留まらず、ゲーム中の主要歴史イベントや、さらには飢饉や反乱、謀略などの小イベント時の小窓ムービーにまで細切れで登場(そのドラマに準じたわけではないだろうが、ゲーム中で諸葛亮の能力がチート化しちゃってるのは、ちょっとアレだが…)。
しかしそんなせっかくのサービスが、ユーザーに好意を持って迎えられたかというと逆で、その挿入によるテンポの悪さがむしろ鬱陶しがられ、実写へのアプローチはこの時期の作品だけで打ち止めとなるのであった。

もう一つ印象深かったのは副将システムの導入。
これによって武力に偏重した武将を知力系の武将で補うことが可能となり、筋肉バカに軍勢を任せるときのモヤッとした心持ちを、システム的にも気分的にも解消してくれることになった。
おい、沮授、沮授。文醜からぜったい目を離すなよ。あいつとにかくそそっかしいから。なんかあったときはむしろお前の方が頼りだからな。よし、曹操の首獲ってこい!
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2017/12/04 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
その手の一連のソフトにどんな正式名称がついていたのか定かではないが、とりあえずそれらはマルチメディアCD-ROMなんて呼ばれていた。
今から約20年前。まだWindows95が出るか出ないかの頃、新時代のメディアなんて一瞬だけ持て囃されたソフトジャンルのことだ。
早い話がゲームでも実用ソフトでもない、様々なジャンルの情報をCD-ROMに収めたデータベースソフト。
今の感覚だと「そんなCD-ROMをいちいち閲覧するより、ネットにアクセスした方が手っ取り早いじゃないですか」となるのだろうが、当時の一般的なネット環境では、動画はおろか画像すらもやり取りさせるのは一苦労だったのだ。
動画や画像など、様々な情報を詰め込めるマルチメディアCD-ROMは、そんなインターネット普及前夜の情報伝達の担い手になる……、筈だった。
しかしWin95以降のインターネットの爆発的な発展を前に、こんな悠長なメディアの旬は瞬く間に過ぎ去ってしまった。

CD-ROMドライブ搭載が標準となった次世代ゲーム機にも、自然とこのマルチメディアCD-ROMの波は押し寄せてきたのだが、中でもその波をもろに受け止めてしまったのは、案の定3DOだった。
これはゲーム機ではなくマルチメディア端末を自称する手前、その手のソフトを正面切って受け入れなければならない立場的な問題もあったのだろう。
さらにサターンやプレイステーションは3DOより後発であるため、マルチメディアCD-ROMが馬脚を現すのを見極められて、その分深みにはまらず済んだのかもしれない。
とにもかくにも、この手のノンゲームソフトが群れを成した3DO。この傾向は日本よりもむしろ北米の3DO市場の方が強く、カタログのタイトルだけを頼りに北米版3DOソフトを数本取り寄せたら、その半数以上がノンゲームのマルチメディアCD-ROMだったので愕然とした思い出がある。

その3DOマルチメディアタイトルの一つ『マリンツアー』は、"ダイビング・スポット・ガイド"のサブタイトルが示すように、ダイバーの為のデータベースソフト。
同内容のソフトは、やはり3DOで『オーシャンズ・ビロウ』という作品がリリースされている。
決して多くはない3DOの全ソフト数の中で、ダイビングガイドなんてやたらとニッチなジャンルが二つも被ってしまったが、いかにも3DOらしい不器用さと言えるだろう。

水中動画をふんだんに盛り込んだ『オーシャンズ・ビロウ』に対して、この『マリンツアー』のウリはCGで作成された立体地形図の数々。
バリ、紅海、グレートバリアリーフ、伊豆など、世界各国の様々なダイビングスポットの海底地形を沈船の位置までしっかりおさえて再現。
さらには魚の分布図や一年通しての気温の変動。現地までの所要時間や通貨レート。そして各地のダイビング業者の案内など。
実用性の面では『オーシャンズ・ビロウ』を遥かに凌駕する内容だ。

もっともただでさえ限られた3DOユーザーの母数から、さらに海外までダイビングをバリバリやりに行く者を対象にするなど、そりゃもうニッチにも程があるわけで、市場に放たれた『マリンツアー』の中で本来の目的にキチンと有効利用されたものが、果たして何本あったことだろうか。
一番たまらなかったのは、こういうソフトも義理で入荷しなければならなかったパナソニックのお店の人たちだ。

このソフトの一番の見所は、実はパッケージの裏側。
この裏ジャケット部分は、本来ならスクリーンショットなどと共に、内容の簡単な解説などが書かれているのが普通だが、この『マリンツアー』のそれは、例の不気味な海底地形図の画像が、なんの説明もなしに整然と並べられているだけの、あまりにもシュールなシロモノ。
何の予備知識もなしに店頭でこれを手に取った人は、どんなソフトなのかさっぱり理解できなかったことだろう。
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「す、数学できんのがなんで悪いとやぁぁぁ!」
石井聰互の監督デビュー作「高校大パニック】で、主人公がそう叫びながら猟銃をぶっ放したとき、思わず席を立って「そうだ、そうだ!」と同調したくなったオレにとって、数学者ってのは変態以外の何ものでもない。
ピーター・フランクルといえば、一時期フランソワーズ・モレシャンと対でちょくちょくNHKに出てた人の印象が強いが、その本業は数学者。
ただの数学者ではない。もう一つの顔は大道芸人。その兼業のきっかけは、アメリカにおける数学の師が、出会うなりいきなりジャグリングをおっ始めたのを目の当たりにして、「これからの数学者はこういうこともデキなきゃダメだ!」と啓示を受けたからだという。やっぱり数学者はみんな変態だ。

そのピーター・フランクルの二つの顔、数学者と大道芸人を併せ一本でこしらえたソフトが、この『ピーター・フランクル パズルの塔』。
ピーターさんが出題する数学パズルを解きつつ、パズルの塔を目指すという名付けて数学パズルアドベンチャーだ。
問題クリアのご褒美となるのは、ピーターさんがジャグラーとしての顔を活かしてブッキングしてきた怪しげな大道芸人たちの演技ムービー。

オレもいい年こいた人間だから、「モンダイヲトケバァ、ユカイナダイドウゲイニンタチガァミナサンニPerformanceヲヒロウシテクレマスヨォーウ」というピーターさんの前口上に、「いや、別にそんなギトギト画質のムービー見たくないっす」なんて本音を押し隠して、とりあえず表面的には付き合う大人の対応はできる。
しかし、それに続いて出題される問題。これがさっぱり理解できない。
これはオレの低学歴低偏差値な反数学脳にも問題があるのだが、ピーターさんの訛りがキツい日本語による口述の出題にも、大いに問題があるのではないだろうか。
すいません、ピーターさん。ちょっと何言ってるのかよく分からないんですけど。お願いだから字幕くらい付けて下さい。

「2ツノゥCupヲツカッテーエ、Wineノタルゥカラ600mlダケヲBottleイレテェクダサァイ」
集中し耳を傾けてなんとか出題を聞き取り、悪戦苦闘しながら何とか問題を解いて、そのご褒美で拝めるのは、全身タイツ男のジャグリングだの、フランスのマギー司郎みたいなおっさんの手品だのなんてシロモノばかり。
ピーターさんに代表される数学脳の持ち主以外には、その食い合わせがさっぱり理解できない数学と大道芸のローテーションを前に、こちらもつい「おい、猟銃一丁と、あと人質用の浅野温子を連れてこい!」と、「高校大パニック」の衝動に舞い戻ってしまうのであった。
この記事に含まれるtag : タレントゲー
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2017/08/03 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |