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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

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【Sherlock Holmes versus Jack the Ripper】ホームズ対切り裂きジャック

   ↑  2023/11/10 (金)  カテゴリー: PCゲーム
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2002年の『Sherlock Holmes: The Mystery of the Mummy』に始まり最新作のリブート版『Sherlock Holmes: The Awakened』まで。
すでに20年を超える歴史を持つにまで至ったFrogwares社のシャーロック・ホームズ推理ADVシリーズ。
その間にホームズはルパンと対決したりクトゥルフ神話と対峙したり訳アリの養女を引き取ったりと様々なシチュエーションに挑まされてきた。
そしてその中にはヴィクトリア朝期最大のミステリー、切り裂きジャックの案件も含まれるのであった。
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創作物と実在事件の違いこそあれ、ホームズと切り裂きジャックはほぼ同時代を過ごした間柄。
本家のコナン・ドイルこそスルーしたが、この両者を絡ませようとしたホームズのパスティーシュものはそれこそ枚挙に暇がない。
Frogwaresがホームズ対ジャックの物語に挑んだのは2009年。
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回を重ねるごとにケレンを増していったホームズADVシリーズだが、ゼロ年代はまだ全般的に垢抜けておらずコンソール機展開もごくごく一部に留まっていた。
『Sherlock Holmes vs. Jack the Ripper』は、そんなホームズADV第一期の総決算ともなる一作である。
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19世紀末のロンドンで貧しい街娼たちが立て続けに絞殺され死体を切り裂かれた未解決事件。
切り裂きジャックの異名を授けられた犯人は未だ正体不明のままだ。
ホームズがどんどんイケメン化しているシリーズ近作ならば、この19世紀きってのシリアルキラーとの対決も時にはアクションを交えた派手派手しいものになりそうだが、本作のそれは地道な犯罪捜査を堅持。
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実際の事件データをベースに、ワトスンをパシらせて関係者の証言を集め(貧民街や売春宿などに出向くのはもっぱらワトスンの役目)、科学実験や鍵開け、事件タイムテーブル作成などシリーズではお馴染みの推理パズルを積み重ねながら地道に事件の真相に迫る。
タンブルティやパイザーといった実在の事件容疑者も登場する、Frogwaresホームズによる切り裂きジャック事件の地味で生真面目な考察とも言えるような内容だ。
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2009年当時でもそのビジュアルはかなり前時代的な印象は否めなかったのだけど、産業革命の負の部分、どんよりとした貧しいロンドンの空気はそれなりに伝わってくる。
陰惨な事件の概要やその背景の救いのなさから、ホームズADVシリーズ中でも飛び抜けていたたまれなさを感じさせる。
そんな闇の深さからかドイルがこの事件をホームズ世界とリンクさせることを避けたのも、なんとなく分かるような気がする。

<未日本語化>

*関連記事
【Sherlock Holmes: The Devil's Daughter】シャーロック・ホームズ 悪魔の娘
【Sherlock Holmes: Crimes & Punishments】シャーロック・ホームズ 罪と罰


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2023/11/10 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【アガサ・クリスティ - エルキュール・ポアロ: 初事件】

   ↑  2023/11/08 (水)  カテゴリー: Switch
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NHKでも放映されたTVドラマシリーズや近年ではケネス・ブラナーの映画版などで、いまでも多くの人々に愛され続けている”灰色の脳細胞”の名探偵エルキュール・ポアロ。
彼がこの世に登場したのは生みの親であるアガサ・クリスティにとっても処女作となる1920年の「スタイルズ荘の怪事件」。
しかしそれがポアロにとっての最初の犯罪捜査案件ではない。
同書の中で彼はイギリスに来る以前は母国ベルギーで数々の難事件を解決した優秀な警察官であったと記されている。
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エルキュール・ポアロを主人公に据えたゲームは原作に準拠した『Agatha Christie - The ABC Murders』などがあったが、2021年の意欲作『殺人ミステリーマシーン: 犯罪推理捜査の館』で推理ADV界に一石を投じたBlazing Griffin Gamesがチョイスしたのは、原作では語られなかったベルギー警察時代。
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プロローグとなるのは彼がベルギーの田舎に飛ばされてきた(あの性格だからして、さぞや官僚機構の中では煙たがられることだろう)巡査時代。
そこでとある名家の盗難事件を担当するくだりはゲームのチュートリアルも兼ねている。
そして時は流れポアロが中央に戻り刑事として名を馳せている頃、プロローグに登場した名家の令嬢から脅迫事件の捜査を個人的に依頼され、再び田舎町を訪れるのが本編の始まりだ。
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令嬢の婚約披露パーティーに集まった招待客は、ジャーナリストに労働組合のリーダー、酔いどれな新郎の実兄など、どれも一癖も二癖もある人物ばかり(彼らは皆、脅迫の疑いをかけられている人物でもある)。
そして大雪で外部との連絡が閉ざされる中で起こる殺人事件。
関係者はいずれも動機はたっぷりある。しかしそれぞれの証言によって誰もが確たるアリバイもある。
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推理ADVでは今や老舗であるFrogwareの一連のシャーロック・ホームズものは、システムが煩雑でやや頭でっかちな欠点があるが、対してこの『エルキュール・ポアロ: 初事件』のシステムは非常にシンプルだ。
屋敷内という限定された空間の中で証拠や証言を集め、それにポアロの考察を加えたパーツをマインドマップと呼ばれる灰色の脳細胞をイメージ化した画面で繋ぎ合わせ、それによって新たな考察やフラグを展開して推理を進めていく。
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このシンプルながらもミステリとしてのストーリーラインが明快な基本システムに加えて、ポアロやその他の人物たちの言動や立ち回りがいかにもアガサ・クリスティらしい世界観に準拠しているところも本作のセールスポイント。
関係者一同を集めての大見得切っての推理披露もたっぷり二回。
タイトルではポアロなのにゲーム内字幕ではポワロとなる表記の揺れはちょっとばかり気になるところだけど、この件は突き詰めていくと早川書房に矛先が向かったりするので、この二重表記はポアロポワロ問題にもにょる人たちに対しての配慮ということにしておこう。

*関連記事
【Agatha Christie - The ABC Murders】ABC殺人事件

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2023/11/08 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【The Innsmouth Case】インスマス事件

   ↑  2023/10/28 (土)  カテゴリー: XBOX Series X|S
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秘書を雇う余裕もない素寒貧の私立探偵。
その散らかった事務所を訪ねてきたのは疲れ果てた表情の寡婦。依頼の内容は行方不明になった娘の捜索。
ハードボイルド小説にはよくある導入だが、ちょっと事情が違うのは探偵が調査に向かう先がインスマスなことだ。
かのラヴクラフトの小説の舞台となったマサチューセッツ州にある港町。パルプ雑誌探偵とクトゥルフ神話の合体がここにも一つ。
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しかしちょっと様子が違うのがデジタルゲームブックの体裁で進む物語の展開やその筆致が、おどろおどろしいクトゥルフのそれと違って妙に浮ついていること。
そう、この『The Innsmouth Case』はラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話のパロディ……、というのもちょっと違うな。軽薄な二次創作のようなゲームなのである。
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舞台こそ深きものたちの影が見え隠れする潮臭くて陰鬱としたインスマスの町だが、そこでゲームブックスタイル準拠の分岐によって巡り合うシチュエーションの多くはコミカルな展開。
それだけならまだしも老人姦や異種姦などのあんまりありがたくないオチが混じっているから始末に悪い。
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挿絵的に挿入される軽妙なグラフィックアートは、このクトゥルフゲームの珍作の中では数少ないセールスポイントの一つ。
開発元のRobotPumpkin Gamesは、やはり同様のアートワークを擁した『Plan B from Outer Space: A Bavarian Odyssey』というゲームブックスタイルADVをリリースしている。

<未日本語化>

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2023/10/28 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【Call of Cthulhu】コール・オブ・クトゥルフ

   ↑  2023/10/26 (木)  カテゴリー: XBOX Series X|S
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ローリングトゥエンティーズ。アメリカの経済が風に舞う木の葉のように翻弄されている1920年代に人々の大きな娯楽となったのがパルプ雑誌だ。
粗悪なパルプ紙に印刷された安っぽい仕上がりの雑誌だが、そこから後の大衆文学に多大な影響を与える潮流が二つ飛び出してくる。
一つは伝記小説系のパルプマガジンから生まれたH.P.ラヴクラフトによる一連のクトゥルフ神話もの。そしてもう一つはブラックマスクなどの犯罪小説系雑誌による、いわゆるハードボイルド小説である。
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だから酒浸り私立探偵のもとにクトゥルフ絡みのオカルト案件が持ち込まれてくるのも必然なことなのだろう。
エドワード・ピアースはボストンに事務所を構える流行らない探偵。第一次世界大戦の退役軍人で、その塹壕体験からか閉所恐怖症持ちだ。
この設定だけで狭いところに押し込められて大変なことになりそうな予感。ああ、わかってるよ、SAN値ってやつだろ!?
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そんな彼に持ち込まれてきたのはダークウォーターという島で一家事故死の真相を探る依頼。
ボストンの沖合いにあるかつては捕鯨で栄えた漁村だが、鯨がいなくなったいまでは見る影もない。
『Call of Cthulhu』のビジュアルは決してリッチではないのだけど、その質感や表現はよく練り込まれていて、プレイヤーは島に降りるなり零落した漁村のどんよりとした気配と、ねっとりまとわりつくような空気をしっかりと感じることができるだろう。
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島に来てからの序盤はオーソドックスな推理ADVのスタイルで進行する。
よそ者を疎ましく思う島民たち、首を突っ込んできた探偵を快く思わない現地警察。街を離れて一風変わった舞台のハードボイルド。
しかし捜査を進めるうちに街を覆う不穏な雰囲気が次第に露わになり、そしてその不気味な何かはピアースの身の回りも侵食してゆく。
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この守旧的なミステリADVが少しずつねっとりじっとりとクトゥルフ神話のホラーの絡め取られていく過程が実に迫真に満ちていて、町の古い伝承や女流画家が残した美術品にまつわるあれやこれやなどの様々な物語上のフックも実に効果的に機能している。
逆に完全にホラーにスイッチしてしまう終盤が多少テンションが落ち気味かもしれない。このゲームはやはり共にパルプ雑誌を祖とするミステリとホラーの折衷部分にその大きな魅力がある。
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そして舞台造形からキャラクターのモデリングに至るまで、何もかもがねっとりとして嫌な雰囲気を湛えているところ。
ゲームから直接的に臭気や湿気を感じることはない。しかしこの生暖かくむわっとした生臭さに満ちたダークウォーター島の陰鬱なムードは、プレイヤーをしっかりと包み込むことだろう。
そして大都会ボストンからやって来たアル中の私立探偵が、もうここから後戻りできないことも。

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2023/10/26 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

【Tangle Tower】タングルタワー

   ↑  2023/08/24 (木)  カテゴリー: XBOX Series X|S
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タングルタワーは奇妙な色をした湖の畔に建つ曰く有りげな屋敷。
二つの塔から真ん中を分けて親戚同士の二家族が住んでいるそのシチュエーションは、ロジャー・スカーレットの「エンジェル家の殺人」をどことなく想起させる。
我が国においては江戸川乱歩が「三角館の恐怖」のタイトルで翻案したミステリの古典だ。
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そんなシチュエーションだからして案の定起こる殺人。
捜査のためにやって来たのはどっかで見覚えのある二人組探偵コンビ。
むさ苦しいグリモアとその相棒の皮肉屋サリー。ミステリADVの佳作『Detective Grimoire』に登場したコンビだ。
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『Tangle Tower』は『Detective Grimoire』から5年を経て登場した正規の続編タイトル。
その根幹となるシステムも前作のそれをそのまま継承。舞台となる館を調査して証拠品や当事者たちの証言を集め、要所要所の推理パートでは疑問点を整理して、そこから生じた矛盾を追求して新たな証言を得ていく。
ロジックの積み重ねを巧みに昇華させたシステムが光る本格的推理ADVとして申し分のない一作である。
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そしてこのシリーズのもうひとつの魅力となっているのが、その個性的なアートワークと登場人物の軽妙でありながらも本格ミステリの風格も備えたセリフのやり取り。
特にビジュアル関連は前作から大幅に洗練されたものとなっている。グリモアも多少は小綺麗な外見となり、サリーに至ってはもうほぼ別人みたいな変わりようだ。
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PCとモバイルだけに留まった前作は英語版のみだったが、Apple AracadeからSwitchにまでまたがる多機種展開となった本作はめでたく日本語化も成された。
すっかりミステリADV界となったグリモアとサリーのコンビ。制作のSFB Gamesは早くもさらなる続編の登場を示唆している。

*関連記事
【Detective Grimoire】タイトな推理ADVの佳作

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2023/08/24 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
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