このページの記事目次 (tag: ホラー の検索結果)
- 【Bramble: The Mountain King】ブランブル: ザ・マウンテンキング [2023/12/01]
- 【Dead Space】デッドスペース・リメイク [2023/11/20]
- 【Stories Untold】語られなかった物語 [2023/11/02]
- 【悪夢の妖怪村】ゲームブックのクラシック [2023/10/30]
- 【The Innsmouth Case】インスマス事件 [2023/10/28]
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むかしむかしのお話。北欧のとある国にとても仲の良い姉弟がおりました。
ある夜のこと、いつも弟を庇う活発な姉が寝床を抜け出して夜の森へ冒険に出かけてしまいます。
姉の姿がないことに気づいてその後を追う弟はプラチナブロンドの髪をしたとてもかわいいかわいい少年。
夜の森はとても幻想的で美しい世界。姉弟を最初に出迎えてくれたのは人懐っこいノームたちです。

しかし暗い森は次第にそのあやかしの本性を見せ始めます。
よしゃあいいのにとっとことっとこ先を急いだ姉ちゃんは、人食いトロルに連れ去られてしまいました。
さあ大変。食われちゃう前に姉ちゃんを助け出さなければ。
だけど世界の美しさと酷薄さは背中合わせ。さっきまで仲良くしていたノームがぽこぽこ殺される。
弱肉強食の非情な実態を露わにした森の魑魅魍魎たちは、かわいい弟にも容赦なく牙を剥くのでした。姉ちゃんを救うどころの騒ぎじゃない!

『Bramble: The Mountain King』はスカンジナビアの様々な伝承をベースにしたアクションアドベンチャー。
プレイヤーが手助けするのは非力で年端も行かない少年。その道中は自然と妖怪どもの目を逃れるステルスアクションが基本となる。
このゲームプレイの根幹部分は非常に手堅く基本に忠実に造られていて、北欧の森という肌寒いシチュエーションも相まって、プレイヤーは常に息苦しいまでの緊張感を得ることができるだろう。

少年にとっては過酷極まりないけど、でもこの森はあまりにも美しすぎる。
プレイ中、ここまでスクショボタンを頻繁に押したくなる衝動に駆られたゲームもそう他にはない。
そしてさっきも言ったように美しさは残酷と紙一重。ハッと息を呑むような光景のすぐ次には、あまりにも無常でブルータルな景色が続いている。

かつて業の深い映画マニアたちはダリオ・アルジェント監督作品の眩い美術と酷い目に遭わされる美少女の組み合わせに胸をときめかせていたが、物語が進むに連れ泥まみれ血まみれゲロまみれの散々な姿になっていく少年には、おそらくショタコン属性の人なんかは同じようなときめきを覚えるのではないだろうか。

しかし無垢な少年をこれでもかと酷い目に遭わせてはいるが、あやかしの世界にだってそれはそれで秩序と道理が存在する。
その秩序に反しているのは明らかに森に無邪気に入り込んだ姉弟の方だ。
そして物語のベースとなっているあまりにも哀しくて救いのない寓話の数々。北欧伝承に詳しければなおのことお話が身につまされるのかもしれないが、そうでなくともこの心を凍りつかせるほどまでに美しく無慈悲なビジュアルは、プレイヤーの心に深く刻まれるほどのインパクトを与えてくれるだろう。
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2023/12/01 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
宇宙に浮かぶ巨大採掘船USG石村。
ある者はそこをノストロモ号や物体Xの南極基地のような逃げ場のない地獄の空間だと言い、ある者はそこを現場猫のようにフリーキーな工具の使い方をやり放題な天国みたいな場所だと言う。
とにもかくに石村という馴染みやすい響きは、SFホラーゲームの大傑作『Dead Space』の舞台だ。
日本国内で未発売に終わったソフトで、ここまでポピュラリティを得たゲームも他にはないだろう。

その楽しくも息苦しい石村への15年ぶりの帰還。
中にはグロテスクなクリーチャー、ネクロモーフが蠢いているのは分かっているが、それも胸のときめきのうちだ。
冒頭でネクロモーフどもが登場したときなどは連中に為す術なく逃げ惑う行動を強いられながらも、内心では「いやあみんな久しぶり! 元気してた!?」

改めて問うまでもなくネクロモーフ元気元気! 相変わらず四肢を切り落とさなければ死にゃあしない。
その手足を切断するのに便利な工具、プラズマカッター!
これを手にしたときの「そうそう、これこれ!」感。15年ぶりにもかかわらず手にしっかり馴染んでいる。
こいつをゲットしてからがいよいよ『Dead Space』の真のスタートだ。すっぱんすっぱんすぱぱぱぱーん!(散乱する手足)

プラズマカッターを始めとする工具を自在に使いこなすオレの名はアイザック・アシモフ。
優秀な兵士でも特殊工作員でもない一介の機械エンジニアだ。誰が呼んだか世界で一番華のないゲーム主人公。
オリジナル版当時、国産ゲームのビューティーカメラで盛りまくったようなキャラクターデザインに慣れた人々にとってはインパクト大であったろう実用第一で不細工なスーツも、工具と共に石村を歩んでいくうちにカッコよく見えてくるのもお約束だ。
このリメイク版の恩恵は多々あるが、アイザックさんのスーツのディティールが細部まで緻密になったのは、その大きな一つだろう。

サバイバルホラーではゾンビやクリーチャー相手の戦闘の他にコンピュータや機械類を制御させられるパートが付き物だが、アイザックさんは元々それが本職だから、その手の作業めいたことにもお使い感がない。そもそもこの仕事をやるために石村に来たんだし。
しかしなんと言っても楽しいのは、その商売道具をうねうねと迫るネクロモーフどもに向けるときだ。
ああ、工具ってなんて頼もしい。いささかイレギュラーな使い方ではあるかもしれないが……。

そしてこれはリメイク版による再訪だからではない、オリジナル版のときから強く感じていたのだけど、アイザックがもう察しているにもかかわらず「相手」のことを信じて一貫した行動を取るシナリオの素晴らしさ。
アイザック自身の心象と「マーカー」による影響。この二つを絡ませてアイザックを操作するプレイヤーに、内心もやっとする何かを与えながらもエンディングまで導く巧みなストーリーラインは『Dead Space』の隠れた魅力だ。
リメイク版ではアイザックが肉声で喋るようになり、この部分に多少の瑕疵を与えてしまったような気もするが、これは評価が分かれる部分であろう。

四肢切断ばかりが強調されるきらいはあるが、『Dead Space』はこのシナリオも含めて、あらゆる部分が常道を外さず手堅くハイクオリティに造られた実はかなり優等生なゲーム。
石村、そこはただの工業採掘船。内部にも主人公にも華やかな部分は何一つない。
でも一皮むけばその中は緻密に磨き上げられた完成度の高い小世界。
そして『Dead Space Remake』は磨き上げた宝石のようなオリジナルを、美しさを損なうことなくさらに豪華に仕立て直したこれまた優等生のようなリメイク版だ。
*関連記事
【Dead Space】工具は最強兵器
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2023/11/20 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
ゲーム愛好家として歳を重ねていくと、これから遊ぼうとするゲームを「これはこういう内容のゲームであろう」と、ついついその枠組を定めて臨んでしまいがちだ。
実際のところ、その見立てがまったく間違っていない、揺るぎないジャンル傾向の作品が多かったりするのだけれど、だからこそこちらの思い込みを良い意味で裏切ってくれるゲームは、そのインパクトが抜群だったりする。

『Stories Untold』は、古株のコンピュータゲーマーならば、誰もがいにしえのテキスト入力アドベンチャーにモダンな視覚効果を加えてお色直ししたゲームだと思うことだろう。
そして「トワイライトゾーン」や「アウターリミッツ」といった1話完結式のSFテレビドラマ(本作の場合はその80年代リバイバル)をモチーフにした設定も同様だ。

忌避していた実家を久方ぶりに訪れて、自分の部屋のホビーパソコンでいにしえのテキストADVをプレイする第一話などは、こちらの見立てをまったく裏切らない。
しかしその途中から予定調和的な思い込みは、まさにじわじわという感じで崩れてゆく。
何かが変だ、何かがおかしい。居心地の悪い不安感が徐々に増してゆく中、第一話はなし崩し的に終了し、連続SFテレビドラマの例に倣って、またタイトルバックから第二話が始まる。

第二話の医療機器、第三話のラジオとブラウン管モニターに接続されたパソコン。古めかしいガジェットに何かを入力する作業によって物語は一見淡々と進行する。
しかしその影でプレイヤーは明快なアドベンチャーゲームにも分かりやすいSFホラードラマにもまったく収まっていない、得体のしれない何かが入力の裏で蠢くのを感じる、真綿で首を締めつけられるような不安に包み込まれているだろう。

そして古いガジェットやSFホラードラマの様式、プレイヤーが続けてきた入力作業の意味はやがて露わになってゆく。
レトロで分かりやすいゲームの様式を借りた。と言うよりは巧みに利用した、ジャンプスケアな演出とも超常現象とも一切無縁でいて、その上で極上な「ホラー」ストーリー。
精緻に練り込まれたその構成は、古株を自認するゲーマーの薄っぺらい見立てすらも掌の上で弄ぶのであった。
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2023/11/02 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
ホッピーと呼ばれるいまでも大衆酒場で愛されているお酒の割り物がある。
元々はビールが高価だった時代に代用品として広まったものらしいが、オレにとってゲームブックは始まりの頃のホッピーみたいな存在だった。
ファミリーコンピュータがすでに世に出ていた時代であったが、オレが遊びたいのはもっと大人の香りのするゲーム。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームといったジャンルなのであった。

しかしその手のゲームがプレイできるパーソナルコンピュータは、その頃のガキにとっては高価なんて表現を超える手の届かないシロモノだ。
そんな時に現れたのが近所の書店でお小遣いの範疇で買えるゲームブックだった。
書籍という体裁をとってはいるが、パラグラフ選択式で時にはダイスを駆使して進めるその感覚は紛うことなきゲーム。

ゲームブックはたちまちのうちに人気を博し、海外産国産様々なタイトルが本屋の棚を賑わせたが、そのブームの終息も早かった。
マンネリ化や粗製乱造も原因の一つだが、何よりも家庭用ゲーム機にADVやRPGのタイトルが加わってきたのが大きな理由だったのだろう。

「悪夢の妖怪村」はブームの絶頂期に登場したゲームブック国産タイトルのクラシック。
作者の鳥井加南子氏は伝奇ミステリ「天女の末裔」で江戸川乱歩賞を受賞した生粋の小説家。
その作品遍歴には3作のゲームブックタイトルもあるが、いずれも最近のゲームブックリバイバルの波に乗って電書化されている。

電子書籍とゲームブック。一見相性の良さそうな組み合わせに思えるが、一般的な電子書籍リーダーだとレスポンスに難があってページをあちこち行ったり来たりするゲームブックのシステムと案外馴染まない。
比較的快適なのはタブレットなどと電子書籍アプリの組み合わせだが、それよりも今の時代に気が利いているのはビデオゲームにコンバートされたゲームブックだ。

2011年のDSi版に続く「悪夢の妖怪村」二度目のビデオゲーム化の舞台はSwitch。
ハードの制限でレイアウト的に読み辛かったDSi版に対して、このSwitch版はページが程よく画面内に収まり、スティックでさくさくとページ送り軽快さも紙の書籍での読書体験を良い感じでバーチャル化している。

刷新された挿絵ビジュアルも雰囲気満点で、音楽や効果音も出しゃばらない程度にこの紙上の冒険を盛り上げてくれる。
かつてのビデオゲームの代用品が、今では立場を逆転してデジタル版の方が書籍の代用となっているのは奇妙と言えば奇妙かもしれないが、全体的に丁寧に作られたその仕上がりはゲームブックにあった手軽な楽しさをしっかりとコンバートしている。二重の意味での好移植版だ。
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2023/10/30 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
秘書を雇う余裕もない素寒貧の私立探偵。
その散らかった事務所を訪ねてきたのは疲れ果てた表情の寡婦。依頼の内容は行方不明になった娘の捜索。
ハードボイルド小説にはよくある導入だが、ちょっと事情が違うのは探偵が調査に向かう先がインスマスなことだ。
かのラヴクラフトの小説の舞台となったマサチューセッツ州にある港町。パルプ雑誌探偵とクトゥルフ神話の合体がここにも一つ。

しかしちょっと様子が違うのがデジタルゲームブックの体裁で進む物語の展開やその筆致が、おどろおどろしいクトゥルフのそれと違って妙に浮ついていること。
そう、この『The Innsmouth Case』はラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話のパロディ……、というのもちょっと違うな。軽薄な二次創作のようなゲームなのである。

舞台こそ深きものたちの影が見え隠れする潮臭くて陰鬱としたインスマスの町だが、そこでゲームブックスタイル準拠の分岐によって巡り合うシチュエーションの多くはコミカルな展開。
それだけならまだしも老人姦や異種姦などのあんまりありがたくないオチが混じっているから始末に悪い。

挿絵的に挿入される軽妙なグラフィックアートは、このクトゥルフゲームの珍作の中では数少ないセールスポイントの一つ。
開発元のRobotPumpkin Gamesは、やはり同様のアートワークを擁した『Plan B from Outer Space: A Bavarian Odyssey』というゲームブックスタイルADVをリリースしている。
<未日本語化>
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2023/10/28 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |