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- 【Paper Ghost Stories: 7PM】ペーパーゴーストストーリーズ 序章 [2023/04/28]
- 【Kraken Academy!!】クラーケンアカデミー [2023/03/27]
- 【フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと】What Remains of Edith Finch [2023/01/07]
- 【My Brother Rabbit】今年の干支ゲー [2023/01/03]
- 【ディ探偵】Detective Di: The Silk Rose Murders [2022/11/17]
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お盆に家の玄関先で焚く迎え火。
特に意識することなく当たり前のように毎年続けている習わしだが、ある年いつものように火を焚いていると、近所に越してきたばかりの外国人の方に奇異な目で見られたことがあった。
自棄になって自宅に放火していると思われてもなんなので、「これはこの時期に帰ってくるご先祖様の霊が迷わないように目印で火をつけてるのだ」と説明しようとしたのだけれど、よくよく考えればそれも異文化の人たちにとってみれば物凄くストレンジな風習であることは間違いない。
だいたいオレだって「そもそも自分の家だから迷うなよ!」と改めて思ったほどだから。

どの国に限らず死生に関する習わしは、異国の人々にとってはもっともエキゾチックさを感じさせる文化だ。
同じ仏教をベースにしていても、日本のお盆と中華圏の盂蘭盆会はその姿かたちがだいぶ違う。
そして中華系の人たちが多く暮らし国に溶け込んだマレーシアでも、お盆の季節にはハングリーゴーストフェスティバルという仏教と道教をハイブリッドしたような行事が開かれる。
マレーシア生まれのホラーADV『Paper Ghost Stories: 7PM』は、中華系の3人の子どもがその行事の一環である街なかの京劇舞台に足を運ぶワンカットから幕を開ける。

御札や紙銭など紙製のアイテムはマレーシア華人の文化風習と深い関わりがあるらしいが、『Paper Ghost Stories: 7PM』が紙を模したアートワークを基調としているのも、もちろんそれと繋がりがあるのだろう。
とにかくこの個性的でインパクト抜群のビジュアルが本作の最大の魅力だ。
華やかさも薄汚さも細密に書き込んだ集合住宅のビジュアルは圧巻で、何気ない日常のすぐそこに、どんな奇々怪々が潜んでいてもおかしくないような印象を与えてくれる。

子どもの目線で接する生活の傍らに存在する怪異。日常と怪奇現象のオンオフめりはりの効いた繰り返しは、プレイしていて初代プレイステーションのカルト作『夕闇通り探検隊』と共通するものを感じさせた。
ただし本作、そのボリュームはめちゃめちゃ少ない。一回のプレイ時間が20分程度の短さ。
そしてその20分は、まるで映画のプロローグ部分のごとき余韻を残してあっという間に過ぎ去る。

そう、『7PM』は『Paper Ghost Stories』の名で展開する連作ADVの、まさにプロローグ的な役割を担った小品。
キックスターター的な意味を多分に孕んだ本作を経て、今年にはいよいよ本格的な新作となる『Paper Ghost Stories: Third Eye Open』がリリース予定だ。
現状英語のみで日本語化はされていないが、同じアジア圏の作品ということもあって使われている英語は比較的平易で取っつきやすい。
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2023/04/28 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
辺り一面落書きだらけのボロボロな校舎。
ある世代ならば戸塚水産高校とかあの辺を思い浮かべるかもしれないが、しかしひとえにコミックカルチャーといってもその様式や価値観は様々だ。
少なくともこのクラーケンアカデミーは、荒れ果ててはいても「ビー・バップ・ハイスクール」的な価値観から、およそ遠いところにあることだけは間違いない。

音楽、美術、演劇、スポーツと4つの学部を擁するこの学校。
なんかひとつだけ食い合わせの悪そうな学部が混じっているが、しかしクラーケンアカデミーで浮いているのはスノッブな選民意識を丸出しにする演劇連中の方だ。ジョックスの皆さんは安心してほしい。
そんな学部間格差よりも問題なのは、この学校はわずか数日後に崩壊が運命づけられていること。
先がないにも程があるアカデミーの新入生こそいい面の皮だが、とにもかくにも主人公は学校近くの池に棲息する謎の巨大クラーケンに言われるがままに、時間を何度も遡ってこの崩壊を止めるハメになるのだった。

どこかネジの外れた変人たちが集う学園でのスラップスティックな日々。
これまたある世代なら「うる星やつら」の友引高校あたりを思い浮かべるであろう。あるいはもっとオタクを煮詰めたコンテンツならば、TRPGに端を発した「蓬莱学園」シリーズなんかがドンピシャだ。
『Kraken Academy』はそんなオタク寄り学園ものコミックカルチャーからの影響を強く感じさせるアドベンチャーゲーム。

ナルシストのイケメン、オカルトマニア女子、筋肉バカ、陰謀論オタクなどなど、学園スラップスティックに欠かせないネジの外れたキャラクターも選り取り見取り。
そして一番性格的にマトモそうな女子生徒はブロッコリーだが、そこで「なぜ!?」と疑問を抱いていはいけない。
そもそもクラーケンが仕切っていたような学園だ。何が起こっても不思議ではない。

この奇天烈な学園で問題解決のために奔走する手段はタイムリープ。
クラーケンから授かった時間を遡る能力で、いつでも入手アイテムをキープしたまま崩壊を迎える3日前の朝に戻ることができる。
メインストーリーはもちろんのこと、取りこぼしたサイドクエストなんかもこれを駆使すればいつでも回収可能だ。

だけど時間は錯綜していてもクエストのフラグ立てなんかはそれほど入り組んでいない。
詰まることなく物語やキャラクターとのやり取りをさくさく進められるのは、どことなくライトノベルのような感覚。
ボリュームもほどほどで架け橋ゲームズによるローカライズもツボにはまって遊びやすいドイツ生まれのカジュアルでノリの良いドタバタ学園ADV。
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2023/03/27 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
いわゆる家族主義が旧弊とされるようになった昨今だが、しかし実家に帰省したり親戚一同が顔を合わせたりする機会が多くなるこの年末年始は、前時代的に思えるその価値観がまだまだ現役であることを改めて確認させられる季節である。
家譜や系図というものは、それを受け継がざるをえない人間にとっては重苦しいものだ。
よくテレビで著名人のルーツを辿る番組をやっていたりするが、あれは功成り名遂げた人だからこそエンタメとして成立するのであって、そうでない人間にとっては誇らしくあっても重くのしかかるものである。

ましてやフィンチ家の血脈は早逝の呪いに縛られている。
実家を離れていても逃れられない家譜の重圧に、一家の数少ない生き残りであるエディスは否応なしに向き合うこととなる。
呪われた系図を辿る探索行。『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』は、誰もが気の乗らないこの陰鬱なテーマをど極上のエンターテイメントに仕立て上げたアドベンチャーゲームだ。

実在のウィンチェスターハウスを例に出すまでもなく、増築に増築を重ねた建物は見るからに禍々しい気配を湛えている。
それは家に住まう歴代の因業を、まるで賽の河原のように積み上げた風情だからだ。
エディスが訪れるフィンチ家の屋敷はまさにそんな建物。
高祖のオーディンが1937年にこの地に移住してから、屋敷は家族の数ごとに部屋の封印と増築を繰り返し、年月と共にその外観は奇天烈さを増していった。

エディスは早逝した親族たちの儚い歴史が詰まったそれぞれの部屋を回り、フィンチ家の奇怪な家譜を辿ってゆく。
主人公が実家を訪れて家にまつわる記憶を再構成する。2013年の傑作『Gone Home』が確立した様式だが、『フィンチ家』はそこからさらにストーリーテリングのイマジネーションを押し広げた。
時にはコミック風、時には3Dプラットフォーマー風、時にはテキストアドベンチャー風と、過去の家族にまつわる話はそのパートごとに大胆にスタイルを変え、そしてそれらは奇妙極まりない家譜の中に破綻することなく収まっている。

この多種多様な語り口の変化があるからこそ、『フィンチ家』はともすればウォーキングシミュレーターと呼ばれる諸作につきまとう単調さとは無縁のまま、プレイヤーをストーリーにどっぷりと没入させてくれる。
そして生じてくるのは、プレイヤー自身にとっては本来無縁である筈のフィンチ家の人間に対する親族のような親愛の念だ。

次々と早死にを重ねる呪われた系図を辿る短くも濃密なひととき。
家譜。それは当事者にとっても他人にとっても重苦しく時には持て余す存在だ。
そんなファミリーヒストリーを風変わりで芳醇な追体験へと昇華させた傑作は、こよないインタラクティブエクスペリエンスと引き換えに、人はやはり家族の因縁から囚われて離れられない事実を突きつけてくる。
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2023/01/07 | Comment (0) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
あけましておめでとうございます。やってきましたうさぎ年。
イノシシだのヘビだのと、およそ干支ってのは色気のない生き物のオンパレードなんですが、その中にあって卯年は珍しく癒やしの年。
Instagramやら何やらで推しアイドルのうさぎコス姿が溢れかえる様子に、干支の存在を珍しくありがたく感じてしまいますね。

で、年賀代わりの干支にちなんだゲームですが、どうせそんなお前のことだからバニーガールとかそれっぽいギャルが出てくる作品でお茶を濁すつもりなんだろうと思われていそうですが、あまり人の品格を低く見積もってもらっては困ります(古すぎて現行のパソコンでは動作しなかった『Space Bunnies Must Die!』のパッケージを背中に隠しながら)。
卯年にふさわしい今年の干支ゲーはうさぎが主人公の一作『My Brother Rabbit』。

Artifex Mundiと言えば探しものゲームの大量生産でお馴染みですが、この『My Brother Rabbit』も例に漏れずベースとなるのはヒドゥンオブジェクトのスタイル。
しかし「これを見つけたところで果たして話の筋にどう関与するのだ?」の疑念が常につきまとう
Artifex Mundi系探しものゲームと違い、本作はその運用や応用にポイント&クリック式アドベンチャーの様式を加味したひとひねりがあるのがその特徴です。

そしてもうひとつのセールスポイントは、やはり他のArtifex Mundi系ゲームとは趣きがちょっと違うファンタジックなアートスタイル。
このストレンジだけど温かみのあるビジュアルが、こちらのアプローチに対してアクティブに反応する様子は、これまた印象的な音楽の後押しを受けてとても魅力的に展開します。

全年齢向けのゲームだけあって謎解きやパズルもかなり平易な難度。
難病にかかった妹を助けるために、妹が可愛がっているうさぎのぬいぐるみに身をやつしたお兄ちゃんが空想世界で冒険する絵本のようなストーリー。
手堅いながらもシステムからアートワークまですべてが高水準でまとまったうさぎゲーム。
バニーガールとかうさごコスとか、いつまでもそんなものに浮かれてるんじゃないという自戒を込めて、この優等生な一作を今年の干支ゲーに推す所存でございます。
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ディー判事ことディー・レンチェは中国の唐代に実在した行政官。
その業績や才知から後世の人々によって彼を主人公とした物語が語り継がれた流れは、雑な例えになるかもしれないが我が国の大岡越前なんかをイメージすればわかりやすいだろう。

彼の名を広く世界に知らしめたのは日本などで大使を務めたロバート・ファン・フーリックというオランダ人外交官。
東アジアの歴史や文化に造詣が深い彼はディー判事を主人公とした推理小説を1950年代から60年代にかけて次々と上梓し、そのエキゾチックな香り満載の歴史ミステリは大きな人気を博した。

日本でもそのシリーズは過去に数社から翻訳版が出版されていたが、現在では比較的発行の近いハヤカワポケットミステリ版が入手しやすいだろう。
2010年代にはアンディ・ラウやマーク・チャオらを主演に映画作品が立て続けに作られているが、こちらはガイ・リッチー版「シャーロック・ホームズ」みたいなスペクタクルアクション巨編。
本格ミステリであるフーリックの諸作とはかけ離れた内容だが、それでもツイ・ハーク監督による「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」などはなかなか見応えのある一作だ。

『ディ探偵』と翻訳マシン直通な邦題が据えられた本作も、そのディー判事が主役となるゲーム。
最初にこのタイトルをストアで眼にしたときは、まさかディー判事の関連作だとは思わず危うくスルーするところであった。
日本語タイトルはアバウトだが、その中身は洗練されたピクセルドットのビジュアルと本格的なミステリのプロットを擁し、フーリックが描いた唐代推理小説の雰囲気をしっかりと伝えてくるポイント&クリックADVの力作である。

時は中国最初の女帝、則天武后の世。司法省にあたる大理寺を掌握するディー判事は、韓国大使の殺害に始まる一連の事件に挑むこととなる。
それぞれの事件はチャプターで区切られて独立しているが、一見無関係に思われるそれぞれの事件がやがてひとつに纏まっていく流れははフーリックの原作でもお馴染みのプロット。
そして権力を必要悪と割り切る玉虫色の人物である則天武后と謹厳実直なディーの、愛憎と忠誠の入り混じった複雑な関係性は一連の映画版でお馴染みのテーマだ。

ゲーム自体は極めてオーソドックスなポイント&クリック式のアドベンチャーゲーム。
一定のフラグを立てたら推理パートに移行し、選択式の解答で事件を再現できたらチャプタークリア。
調べるポイントはかなり限定的で手の込んだフラグやアイテムの組み合わせもそれほど多くはなく、同趣向のADVとしてはそれほど難易度は高くない。

ただし日本語化はされていないので、かなりの量にのぼる英語テキストには覚悟が必要だ(個人的には中国人名の英語表記は区別がつけ辛くて厄介だった)。
もうひとつ残念なのはフーリックの原作でディーを補佐するチャオ・タイやホン・ガンといった魅力的なキャラクターの部下たちが登場しないところ。
唯一マー・ロンだけが出てくるが、彼もモブすれすれの薄味な脇役に留まってしまってる。
<未日本語化>
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