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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

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野球  

書籍【客は幾万 来なくとも 川崎球場一部始終】

   ↑  2011/07/01 (金)  カテゴリー: 書籍・コミック
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メディアを中心に「プロ野球人気の低下」が叫ばれるようになって久しいですけど、私のように昔からパ・リーグばかりを追いかけてきた人間にとっては、全くピンとこない言葉です。
川崎、西宮、藤井寺、大阪、日生、そして巨人戦では常に超満員となる後楽園ですら、パ・リーグの根拠地球場に、常に閑古鳥が鳴いていたあの頃から比べると、北は札幌から南は福岡まで、パ・リーグ球団主催試合が多くのお客さんで賑わう現状は、むしろプロ野球人気の向上を意味しているでしょう。
低下したのは、巨人戦のテレビ中継や、新聞のスポーツ欄を漠然と眺めて、巨人の話題をみんなが漠然としていた習慣と、それにおんぶだっこしていたセ・リーグの人気なのです。

村田が、山田が、東尾が投げ、落合が、門田が、ブーマーがそれを迎え撃つ。そんなプロ野球の醍醐味を真に伝えていたパ・リーグでしたが、それを囲むお客さんの数は、はっきり言ってまばらでした。
そんな報われない時代のパ・リーグにあって、観客数の少なさでは群を抜き、常に揶揄の対象となっていたロッテ・オリオンズと、その根拠地の川崎球場。
シーズン終盤の消化試合ともなると、観客数は4桁を下回り、時には3桁を割ることすら、しばしばありました。

その閑古鳥の定宿となった川崎球場に10年に渡って通い詰め、時には選手のボールを実際に受けたりしながら、村田、落合、水上、高沢、愛甲といった、オリオンズの錚々たるメンバーに密着した記者が居ました。
その名は前野重雄。今はスポーツグッズの専門家として、鑑定番組などに出演されている、あの流体力学の前野さんです。

前野さんが自ら取材し体験した、川崎球場とロッテ・オリオンズの一部始終を、自費出版という形でまとめた本書。
全333ページ。しかも小さめの活字が二段組みに押し込められ、その実際のボリュームは優に普通の単行本5冊分くらいあります。
そしてそこに詰め込まれたのは、選手や裏方、関係者に文字通り密着した者にしか得られない、どっぷりと濃いエピソードの数々。
冒頭の、川崎球場の駐車場をにわかレース場に仕立て上げ、改造フェアレディZやコルベットでゼロヨンレースに興じる愛甲、水上、袴田の話だけで、ロッテのオールドファンは思わず相好を崩してしまうでしょう。

もっとも水上や愛甲と改造車の取り合わせは、それほど不思議なことではなりませんが、そこにあの温厚そうな袴田さんが混じっていることには、ちょっと首をひねるかもしれません。
しかしそんな疑問も、選手の「袴田さん、さすが高校が自動車科のことだけありますねえ」の一言で氷解するはずです(袴田は静岡県自動車工業高校出身)。
そして場外でにわかドラッグレースに興じる連中の愛車目がけて、場内から打撃練習のファールボールを"わざと"命中させる落合。
落合が打撃練習中に、記者のスチールカメラに打球を直撃させる場面を目の当たりにするエピソードも登場しますが、落合は「邪魔なのでどいてくれ」と言ってもどかない記者たちのカメラに、"偶然"打球を命中させるイタズラを常習としていたらしいです。

あの球史に残る10・19決戦について、ロッテ側の立場から克明に記録されたものとしても、本書は貴重な存在です。
試合前には「近鉄が優勝したら、それはそれで仕方ない」というムードだったロッテナインが、ダブルヘッダー間の休憩時間中に緊急ミーティングを開いて、「何が何でもあいつら叩き潰すぞ」と豹変した理由とは。
それを知れば、近鉄の優勝を阻止した、ミーティング言い出しっぺによるこの超絶ファインプレーが、さらに深い意味を帯びてくるでしょう。

そして試合に出場しなければ首位打者を確実のものとしていたのに、必勝態勢で強行出場し、他に類を見ない凄絶なプレッシャーの中、近鉄にとどめをさす一発を放って首位打者を獲得した高沢。
「球場にお客さんがいっぱい押し寄せてくる」という、他の球場では当たり前な異常事態にてんてこまいとなる球場職員。
球場内に他に食べ物はなく、飢餓化した客たちが押し寄せ一触即発の状態となる名物中華麺店など、あの10・19には、近鉄サイド以外にも様々なドラマが盛り沢山だったのです。

パ・リーグのファンならば、その審判時代の姿がお馴染みかもしれない桃井進の、ロッテ捕手時代の物語も、本書の重要な一翼を担っています。
愛甲猛がドラフト1位指名された年に、4位でロッテに入団。プロ通算成績は17試合に出場して、11打数2安打。
ロッテ選手時代のほとんどをブルペンで過ごした、この寡黙で実直な捕手。捕捉しておきますと、桃井氏は先々月に行われた統一地方選に出馬し、現在は長野県の県議として活躍されております。

表舞台に立った選手たちだけではなく、桃井氏のような縁の下の力持ちや裏方さんから、球場の職員やパート、球場ラーメンの店主に至るまで、川崎球場に関わった様々な人たちにスポットライトが当てられているのも、本書の特徴。
特に川崎市内に街宣活動に出るたびに「うるせえんだよ、このロッテは!」と罵声を浴びせられる宣伝カーの逸話は、涙(?)なしには読めませんとも。

校正が全く為されてないので、読みづらい部分も多々ありますが、あの球場に通い詰めた人間でなければ書けない、生の迫力に満ちたエピソードの数々は、他では絶対読めません。オリオンズ時代のロッテを知らない今のファンでも、その全てが目が離せないものばかりでしょう。
自費出版なので、一般書店には流通していませんが、まだアマゾンには在庫があるようです。
そしてこの川崎球場を巡る男たちの大河ドラマを締めくくる人物。、それはもちろん"完全無欠の大エース"、我らが村田兆治です。

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2011/07/01 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


もっと書きたいことがありました

どちら様は存じ上げませんが、まず第一に有難うございます。つつしんでそう申し上げたく存じます。
私はその著者,前野でございます。
ここまできちんと拙書を、隅々までお目を通して下さって、よいところ足りない部分だけでなく、強調したかった結論までを、スムースに三人称でご紹介くださった読解力と文章力には驚かされました。

おそらく、私の眺めてきたあの風景をこの管理人様が代わりにご覧くださっていたとしたら、おそらくこの拙書よりもはるかに良い本になっていたことでしょうし、またロッテにとっても幸せだったのではないかと思うのです。

ともあれ、ドキュメントというものは私たちの心に響く力作が多いものです。
ですが、登場してまな板に乗せられ、出来るだけ素材の持ち味をそのままに料理された人々が『なるほどそのとおりだ』と調理され、またそれを賞味した周囲の皆さんにも『なるほどそういう人物だったか』と何ら異議のないものだったのでしょうか。

私の場合、この作品でのノンフィクション賞受賞後にお決まりの「単行本をどうぞ」と、出版社に道を開いて頂いたのですが、その際私は猛烈に悩み、そしてせっかくのお話を辞退しました。

やはりロッテオリオンズの皆さんはあくまで戦闘状態のままにあり、それぞれが一生を賭したせめぎ合いを演ずるプロ野球界の戦時下にあって、果たしてこれをたかが私個人の出世のために、世に内情をさらして他球団の知られるところとなっていいものなのか。

また沈黙のままこちらがウラをとって初めて認めた・・・みたいな実話を本にする場合、どうしても相手側が自ら話した会話調などに委ねるわけです。
すると、その金色の沈黙を守り続けている方が、いかにも手柄や内情について自ら口外するような「おしゃべり野郎」と、曲解されてしまうのがなによりも男として申し訳なかったのです。
球界はそうした軽口な性格を徹底的に嫌う防諜体質があり、チームスタッフの必須要項としてそうした性格は検討段階で排除です。そうして球界に生きる彼らにとりマイナスに働くことをまずは心配して待ちました。
結局は彼らひとりひとりと他球団へ去り、引退を待つまで出版は控えよう・・・遠慮していたものが、今度は『別球団の指導者』として再就職ウンヌンという配慮が新たに首をもたげ(笑)、また先送りにしているうちに球界の水位低下・・・活字文化の敗退・・・と、『野球関係の出版などお断り』と、いつの間にかゲートを閉ざされてしまうハメとなりました(とほほ)。

綴ってあるロッテの選手の中には名前も思い起こされぬまま、このまま記憶の海の底に置いてきてしまう方々もあり、これで良いわけはない「自費で出す」しかないのか、『(なら先立つものは?)』良心の呵責の狭間で悩んでいたその時に、天の助け。
競馬『「安田記念」の三連単』を仕留めてしまい、結局その払戻金が印刷屋への支払いとなって発刊の運びとなったというのが真相なのです。笑っちゃうでしょ。

10・19も、あの『第一試合最終回、鈴木選手と中西コーチ涙の抱擁』という有名な感動劇がなかったら、すんなり近鉄の勝利で優勝決定となっていたにちがいありません。
10・19がもっぱら『近鉄サイドだけ』の視点が事実として語られ、そもそもあの一戦(二戦)をプロの取材がなされたうえでの著述がないという現実なんて、どうみても不公平であると切歯扼腕の毎日だったので、本を送り出すと同時に、胸のつかえもデトックスできたようです。
ともあれ、あの晩に起きていたとする『ロマンあふるる真実』はあっても、肝心の『事実』については未だに球界全体が知らないまま。
事実(?)は拙書をお読みくださった方々のみぞ知る・・・というのって、ちょっと痛快じゃあありませんか(笑)
この少ない人数からポタンポタンと漏れ出た真水が、氷河全体を海へと追いやってゆくのだなあと思うと、内心ウヒヒであります。

これでようやく本のプレミア価値が出てくれたのかなと、ついほクソ笑んでしまいます。

それにしても管理人様、身に余るご高評を賜りまして誠にありがとうございました。

『客は幾万 来なくとも 川崎球場ロッテ一部始終』番外編了 著者 前野 重雄 拝

前野 重雄 |  2012/06/23 (土) 17:07 [ 編集 ] No.222


こちらこそ恐縮です。管理人です。
貴著の中で高畠コーチが「タイトルというのは一番じゃなけりゃ価値がない」と仰っていましたが、当時のファンにとってもロッテ選手のタイトル獲得は、唯一心躍る話題でした。
それだけに、あの10.19の緊急中継で、当たり前のように出場している高沢選手の姿をみたときには、思わずびっくりしました。
翌日の学校では、クラスで唯一のロッテファンであった私は、ずいぶん肩身の狭い思いをしましたし、私自身も「有藤のアレはないんじゃないかなあ」と、ちょっと釈然としない部分もあったのですが、ロッテサイドから見た10.19の真実と、近鉄ドラマのまるで付け合わせみたいな扱いをずっと受けてきた高沢選手の快挙の舞台裏を知ることができて、長い間の胸のつかえが、ついに下りたようです。

これだけボリュームのある本を、一気呵成に読み通したのは、本当に久しぶりのことです。
書ききれなかったことが、おありになるそうですが、これはやはり神様による三連単の思し召しに、もう一度期待しなければならないのでしょうか。
刊行に至った安田記念な理由は、この本に収められた様々なエピソードに負けないくらい、衝撃の事実です(笑)。

与一 |  2012/06/24 (日) 15:52 No.223

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