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【定吉七番 秀吉の黄金】太閤殿下の定吉七番

   ↑  2019/06/23 (日)  カテゴリー: PCエンジン
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坊主頭の後頭部には十円ハゲ。それを隠すは八つ接ぎのハンチング帽。身に纏うは唐桟のお仕着せに紺の足袋。懐に忍ばすは三品家内人六代目藤原有次作の業物包丁。
殺しのライセンスを持つ丁稚、安井友和。コードネームは定吉七番。
今ではすっかり歴史小説家のイメージが強くなっている東郷隆の初期代表作シリーズは、イアン・フレミング作「007」シリーズの傑作パロディ。
斜陽の大英帝国を大阪に置きかえ、凄腕のスパイならぬ凄腕の丁稚、定吉七番が、関西企業に仇をなす組織を相手に、大阪商工会議所発行の殺人許可証を行使する。
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この「定吉七番」シリーズが、ありきたりの007パロディと違うのは、井上一夫訳風の文体まで徹底したキメの細かさ。
フレミングお得意の人種ネタは、県民ネタに装いを変え、食前酒の代わりに定吉がこだわりを見せるのは、食前うどん。
「固さは楊枝の先で刺して、ちょっと固いな思うくらいがよろし。ネギは関東ネギとちゃいます。わけぎや、これを山盛り」
「定吉七番は丁稚の番号」、「ロッポンギから愛をこめて」、「角のロワイヤル」と、タイトルまで原作を丁寧になぞったこのシリーズは、80年代後半に角川文庫から(泉晴紀のカバーイラストが印象深い)登場して一世を風靡。90年代には講談社文庫で復刊された。
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しかしゲームクラスタにとって定吉七番と言えば、やはりこのPCエンジンの最初期を彩ったアドベンチャーゲーム、『定吉七番 秀吉の黄金』の名前が先に出るだろう。
原作は、単行本「太閤殿下の定吉七番」所収の同名短編。
なかなかタマが揃わなくて苦闘していたPCエンジンにとって、初のアドベンチャーゲームということもあって、注目度も高かった作品だ。
もっとも、関西企業のために他県人と戦う定吉七番の話が、関西の企業であるコナミ(当時)やカプコンからではなく、北海道に本拠を置くハドソンから登場したことには、イマイチ釈然としないものがあったが。
それよりも何よりも、いくら当時人気があったとは言え、あの頃のゲーム購買層には、それほど浸透していたわけでもない、この原作シリーズに、何故ゲーム化の白羽の矢を立てたのかが一番の不思議かもしれない。
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秀吉埋蔵金のありかを記した古文書を巡って、定吉七番と悪の関東系結社NATTOとの熾烈な闘いが、大阪、東京、長野を舞台に繰り広げられる。
かつての東西冷戦を思わせる大阪と関東の対決は、定吉七番シリーズの永遠のテーマだが(この国内版東西対立を煽る張本人の東郷氏は、ハマっ子だったりするから、ちょっとタチが悪い)、終結してしまって多くのスパイ小説家たちを慌てさせた東西冷戦と違って、こちらは終わりが見えないほど根深い対立である。
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東郷隆の原作は、フレミングの元ネタ同様に、けっこう殺伐としていたり、お色気シーンも多い大人の小説だったりするのだが、8ビット時代のゲーム業界に、そんなテイストをそのまま持ち込める筈もなく、そしてテキストも、当時のアドベンチャーゲーム特有の慇懃無礼な文体に終始し、原作の偽井上一夫調など微塵のかけらもないのが、やっぱり味気ない。
原作にあったフレミング小説の徹底したパロディ色が、このゲーム版には全く反映されていないので、単なる風変わりな設定のオーソドックスなコマンド選択アドベンチャーに留まってしまっているのが、原作経由の人間としては、かなり物足りなく感じてしまうところだ。

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