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【Zork Anthology】神秘の機械との対話

   ↑  2018/04/05 (木)  カテゴリー: PCゲーム
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West of House.
You are standing in an open field west of a white house, with a boarded front door.
There is a small mailbox here.
"貴方は今、白い家の西にある野原に立っています。正面の白いドアは、打ち付けられた板で塞がれています。
ここには小さな郵便箱があります。"
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ゲーム史上に残る有名な一節。テキストアドベンチャーの代表作にして、アドベンチャーゲームの始祖のひとつである、『Zork』のオープニング。
『Zork』は全編テキストで構成されたゲーム。グラフィックなどと言う、気の利いた物は付いていない。
いや、厳密には、『Zork』にはグラフィックは存在した。
『Zork』をこの世に送り出したInfocomは、広告にこのような一文を書き添えた。
「我々のグラフィックは、陽の光の届かないところにある」
その一文の下にあるのは、人間の脳みその絵。
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『Zork』のグラフィックは、それをプレイした人々の頭の中に、確かに在った。
そのグラフィックのバリエーションは、実に豊かで、そのどれもが個性的だった。プレイヤーが100人居れば、100通りのグラフィックが存在していたのだ。
オレの場合は郵便箱の隣に「明治乳業」と書かれた木の牛乳箱がくっついていたものだ。想像力が貧困でごめんな!
『Zork』の世界は、そうやって多くのプレイヤーの想像力(その貧富の差はあれど)によって支えられてきた。
人々の想像の力は無限だ。そんな力によって彩られた地下帝国の世界は、古今東西のあらゆるゲームで表現された世界の中でも、最も豊穣なものであったかもしれない。
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なんとなくサウンドノベルやゲームブックを連想される方も居られるだろうが、しかし『Zork』や同時代のテキストアドベンチャーとサウンドノベルとは、実は根本的に成り立ちが違った。
選択肢を選びながら受動的に読み進めるサウンドノベルやゲームブックに対し、ゲーム側がが文章で提示する情報に、こちらもキーボードで言葉を紡いで対応していくテキストアドベンチャーは、対話型のゲームだ。
今でこそ仕事の道具のイメージが強いパソコンだが、当時のそれは"人工知能"の幻想をぷんぷん漂わせる神秘的なメディアだった。
そんなミステリアスな"人工知能"との対等のやり取り。テキストアドベンチャーというプリミティブなゲームの最大の魅力は、そんな疑似の人格とのコミュニケーション部分にあったんじゃないだろうか。
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やがてアドベンチャーゲームがグラフィックを実装し、視覚的な情報を備えていくにつれて、かつてアドベンチャーゲームがテキスト一色だけの頃にあった神秘的なイメージやプレイヤーのイマジネーションは、徐々に剥ぎ取られていった。
それにとどめを刺したのが、他ならぬ堀井雄二の『ポートピア殺人事件』だろう。
キーボードによる言葉の入力を廃し、あらかじめ用意されたコマンドを選択して物語を進行させていく。
この試みはアドベンチャーゲームの敷居を大きく下げたが、一方でコンピュータとの対話という、テキストアドベンチャーがかつて有していた楽しさに引導を渡した側面もあったのではないか。
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オレが『Zork』を初めてプレイしたのは、すでに『Mystery House』とそれに続くグラフィックアドベンチャーが世に溢れていた時期。
だがオレにとって『Zork』は決して"絵のないアドベンチャーゲーム"に留まるものではなかった。
英和辞典を片手にたどたどしくテキストを読み進めた亀の歩みのようなゲームプレイも、あの頃のPCゲームに満ちていた神秘性の前では、さしたる労苦ではなかった。
現在SteamやGOGなどで配信されている『Zork Anthology』は、三部作とそれに続く『Beyond Zork』『Zork Zero』が収録されたパッケージ。
多くの人々にとっては岩波文庫のなんだかよくわからない古典の旧版的な印象しかないだろうし、また無理にプレイをオススメするようなものでもなが、ただこの素っ気ないテキストの羅列が当時はそんな意味を持っていたことを、なんとなく伝えてみたかった。

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