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【Bioshock】せめぎ合う父性

   ↑  2017/03/30 (木)  カテゴリー: XBOX ONE
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がぼがぼがぼ。肺が悲鳴を上げるほど水の中を喘ぎ、そして水面に出て貪るように息を深く吸い込んだ。
開始早々主人公が受けるのは洗礼の儀式。パブテスマは以降作に続くシリーズの隠れテーマ。
そして原罪を洗い流した主人公の前にそびえるのは、あの魅惑的な水中都市廃墟、ラプチャーの入り口。
アンドリュー・ライアン。家父長主義を頑なに信じる男が築き上げた夢の砦、理想の"ファミリー"の形がが在るべき場所。
厳格で信念を持った父親が、揺るぎない統率で支配する規律正しい大家族。そしてそれは保守主義者にとっての理想の国家像。
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とにもかくにもライアンはそんな世界を大西洋の底に作り上げた。そしてそれはあっという間に瓦解した。家族を信じず、家族を、そして何よりも家父長である自分を愛せない"寄生虫"どもの手によって。
だがラプチャーの社会が崩壊してもライアンは未だ問い続ける。理想の家族の在り方とは何か、家族愛とは何かを。
そしてゲームの序盤にプレイヤーを突き動かす理由は、「恐縮だが」という重要だけどさしたる意味を持たないフレーズじゃない。「妻と子供を助けたい」と繰り返すアトラスへのぼんやりとした共感である。
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潜水球に乗って海の底に赴くあの素晴らしすぎるイントロダクション。
海藻と岩の間から姿を現す荘厳のラプチャー。アンコール・ワットを再発見したアンリ・ムーオの興奮も、かの如しであったのだろう。
ぬめっとした湿気が本当にまとわりついてくるかのようなラプチャーのビジュアルは、HD版でよりいっそう生々しくなった。
かつて栄えた観光ホテル、一世を風靡したラブホ。人々の織りなした栄華が亡霊のように残留する廃墟ほど、哀れや物悲しさと共に探索する者の心を踊らせもする。
そして生臭い潮の香りを実際に覚えながら、レンチやショットガンとプラスミドを手に栄華の名残を追う主人公は"父性"というもう一つのテーマと向き合うことになる。
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絶対的家父長ライアン。主人公に共感と同調をもたらしながらも、否応なしに対峙せざるをえない、"庇護者としての父性の象徴"ビッグダディ。後半になりやがて露わになる主人公にとってのもう一つの"父"。
父性のせめぎ合いの中で唯一主人公をバックアップするのは、母性の象徴としての存在テネンバウム。
後半、主人公の大いなる支えとなったテネンバウムが、ガラス窓の向こうで影絵のように姿を現すシーンは、『Bioshock』で強く印象に残ったシークエンスの一つだ。
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そして主人公は、その行動、選択でいびつな父性に対して答えを出す。
家族愛の本当のあり方、それは与え、そして与えられること。ギブ・アンド・テイク。
エンドロールの手前、淀んだ海底から地上の空気を吸い込み、太陽を浴び、再びの受洗を経た主人公のその後。
「お前には可能性がある」。"父"が告げた言葉はある意味間違っちゃいなかった。
プレイヤーがラプチャーで過ごす濃密な時間は、この走馬灯のようにあっという間に語られた"その後の主人公の人生"の、長い長いプロローグであったのだ。

<『Bioshock The Collection』バンドル>

 

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2017/03/30 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


「恐縮だが」がトラウマになります。

SFとしても、哲学としても良く出来ています。マインドコントロールについて考えさせられます。ライアンのカリスマ性に惹かれます。Papers、Please とか日本人には考えつかない発想のゲームが面白い!

奈良の亀母 |  2017/03/31 (金) 14:29 No.1310


HD版の特典であるミュージアムや開発者のコメンタリーがかなり興味深かったです。
初期の構想だとリトルシスターがナメクジ状の生物だったり、スプライサーが非人間的なクリーチャーだったりして、これがボツになっていなかったら凡百とは言わないまでも、80点レベルのゲームに留まってたんじゃないかと思いました。

与一 |  2017/04/01 (土) 23:51 No.1312

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