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ボンクラ360魂クロスカルチャーゲームブログ 

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書籍【ゲーム業界奇譚】

   ↑  2013/06/02 (日)  カテゴリー: 書籍・コミック
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「新耳袋」シリーズの成功以後、ゼロ年代の中頃には、柳の下のドジョウを狙って似たような実話怪談本が続々と登場しました。
ゲームサイド(旧ユーゲー」)の版元として、ゲーオタにはお馴染みのマイクロマガジン社も、この流れに乗ったクチで、「現代畸聞録 怪異百物語」というシリーズを刊行して、トレンドにちゃっかり便乗しちゃっています。
そしてその流れなのかどうかは知りませんが、そのゲーム業界限定バージョンとでも言うような不思議な単行本が、ユーゲーから唐突に登場したことがあったのです。

しかし「新耳袋」と、その後追い群たちとの間には、一つの大きな違いがありました。それはアレンジメント能力の決定的な差です。
巷にある個人の心霊体験談は、基本的はどれも恐ろしく類型的で面白みに欠けるものがほとんどです。
知人を集めて怪談大会を開いても、その手の陳腐な話で占められるのが常。たまに少ない確率で、エンタメ系先天的嘘つきが紛れ込んで、集いが奇跡的に盛り上がったりすることもありますが、その手の人材がそうそうそこらに転がっているわけではありません。

市井の個人一人一人が持つ怪異譚が原曲だとしたら、それをエンターテイメントにまで昇華させるのに必要なのは、優秀な編曲者の存在です。
「新耳袋」の編者二人は、その点に於いてずば抜けておりました。ありがちな怪異譚をまるでステロイドをぶち込んだかのように膨らまし、もっともらしいディティールや因果をふんだんに付け加え、強烈なオチをつけて完成品に仕上げる。

だが後追い便乗組は、このアレンジメント能力が欠如しているものがほとんどでした。
そして出来上がるのは、「変な人影が立っていた」、「金縛りにあって何かがのしかかっていた」、「聞こえないはずの声が耳元で聞こえた」程度で完結する話ばかりが収められた、怖くもなんともない実話怪談本の一丁上がり。
そしてこのユーゲー発ゲーム業界版実話怪談本、「ゲーム業界奇譚」も、その轍を踏んでしまったパターンです。
ネタの収録先を限定してしまったがために、原話のクオリティも一般の実話怪談本も低め。
ここから必要なのは、その貧弱な原話を膨らみに膨らますアレンジ能力ですが、ユーゲーの編集部にそれを望むのは酷というものでしょう。

そんなわけで、この本の八割は、「モニターに何かが映りこんだ」、「人影が見えた」、「風もないのにフィギュアが倒れた」程度で完結してしまう話ばかり。
そしてその長々と続く前座話のあとに、138ページ目にしてようやく登場する真打ちが、お待ちかねエンタメ系嘘つき、がっぷ獅子丸氏です。
韓国旅行に行った際、ホテルの部屋で幽霊に遭遇し、ヘイトスピーチをかましたら物凄い勢いで首を絞められ、慌てて「韓国バンザイ! 韓国サイコー!」を連呼したら、首にかかっていた力がふっと抜けたなんてエピソードを始めとする、彼の一連の怪談話を読んでいると、思わず島田洋七の与太話を聞かされるビートたけしみたいに、「そんなわけあるか、この野郎!」と、笑顔で首を絞めたくなってきます。

『ジ・アンソルブド』の取材話も盛り込むなど(「エリア51の上をセスナで飛んでいたら、横を巨大な円柱状の物体が並んで飛んでいた」「そんなわけあるか、この野郎!」)、本の企画にしっかりと配慮するがっぷ獅子丸氏に、辛うじて救われた感もある一冊ですが、しかしこちらが真に読みたいゲーム業界怪談は、実は心霊絡みの話ではなく、「納期直前にスタッフが逃げた」、「手形が落ちない」、「会社が飛んだ」、「この業界もうダメだ!」などの、生臭い系他人事恐怖譚なんですよねえ。



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2013/06/02 | Comment (4) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |

Comment


実話怪談は『新耳袋』と『超怖い話』が引っ張ってきたのでは?

🐼パンダロウ |  2013/06/03 (月) 14:09 No.441


「超」怖い話については、次の記事で触れる予定です。

与一 |  2013/06/03 (月) 16:39 No.442


はじめまして。
実話怪談本の感想を探しているうちに貴ブログに出会いました。

僕も『ゲーム業界奇譚』を読みました。ゲーム業界の怪談というテーマにワクワクして読んだけど、大沢さんが言うように怖くも何ともない話が多くてガッカリしました。ガッカリしたからブックオフに売っちゃったなぁ。
他がイマイチなので、がっぷ獅子丸さんが思いっきり目だっていたのは覚えている。UFOを題材としたゲームを製作していたら行方不明者がでたという話は面白かった。

パンダロウ |  2013/06/04 (火) 00:25 [ 編集 ] No.445


がっぷ獅子丸氏が関わったオカルトゲームにまつわる怪談話、この本以外でも不思議ナックルズとかにも掲載されていたような記憶がありますが、そのゲームもまた飛鳥昭雄やUFOやXファイルやカルト教団ネタを土鍋でホルモンと一緒に煮込んだような怪作だったので、それを遊んでいると例の怪談にも妙に説得力がありました。

与一 |  2013/06/04 (火) 15:38 No.446

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